研究課題/領域番号 |
19H00603
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮島 英昭 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60182028)
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研究分担者 |
久保 克行 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (20323892)
鈴木 一功 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (40338653)
蟻川 靖浩 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 准教授 (90308156)
大湾 秀雄 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60433702)
牛島 辰男 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (80365014)
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,850千円 (直接経費: 34,500千円、間接経費: 10,350千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2020年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2019年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | 企業統治改革と資本効率 / リスクテイク / エンゲージメント / アライメント / 権限配分 / 企業統治 / 企業金融 / 組織内権限配分 / 自社株買い / アクティビスト |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近年の企業統治改革のインパクトに注目して、日本の企業統治を包括的に解明する。 ①アクティビスト、モノ言う長期投資家のエンゲージメント、自社株買い、取締役会改革の実態、本社と事業単位の権限配分の分析を通じて、近年の企業統治構造の進化を解明する。 ②従業員持株会の機能、ストックオプションとの補完関係、機関投資家の雇用調整に対する影響の分析を通じて、統治制度と雇用システムの関係を解明する。 ③株式所有構造や企業統治制度の財務政策への影響、グループ経営体における内部資本市場の機能、リスクの高い投資の決定要因の分析を通じて、統治構造の資本効率、リスクテイクに対する効果を解明する。
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研究実績の概要 |
2013年から本格的に始まった企業統治改革は、銀行危機以降徐々に変容していた日本の企業システムに大きなインパクトを与えた。企業統治改革は世界金融危機後の国際的動向でもあったが、日本においてユニークな点は、英米圏では強すぎるガバナンスが近視眼的な経営や過度のリスクテイクをもたらしたという認識から株主主権が再検討されたのに対して、逆に弱すぎるガバナンスが保守的な経営や低い資本効率をもたらしたという認識から株主権の強化が図られたことである。しかも、企業統治改革はこの一周遅れの課題に地球的問題の解決、社会の持続的発展への貢献という現代的な課題が加わり、後者の重要性はCOVID-19の発生以降さらに高まった。本研究の課題は、2010年代半ばから続く企業統治改革は、日本の企業統治をどの程度変化させたのか、さらに、資本効率を引き上げ、リスクテイクを促し、また、企業のESG活動を促進したのかを解明する点にある。 この点を解明するために、本研究は、(1)企業統治構造の進化、(2)統治構造と雇用システム、(3)資本効率とリスクテイクの3チ-ムを組織し、海外研究者との共同研究を通じて、所有構造の変化、事業法人・内外機関投資家の経営への関与(エンゲージメント)、取締役会や報酬制度が実物投資、R&D投資、M&A、ESG投資等の企業行動や最終的な企業業績に与える影響の包括的な分析を進めた。本年度は、分析の基礎となるデータベースの構築、機関投資家からの内部資料の利用の許諾等、研究遂行のベースを確保する一方、それらを基礎に、自社株買い、政策保有株の売却の決定要因、中小型株における海外機関投資家の役割、機関投資家のESG活動に対するエンゲージメント、経営者報酬改革の実態、内部資本市場の役割等について成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年の企業統治構造の進化の把握に関しては、特に、株式所有構造についてパッシブ・アクティブファンド、アクティビストファンド、事業法人ブロック保有と少額の持ち合い株の部分等保有主体別のデータべ-スの構築に取り組んだ。このデータを前提に、鈴木が宮島、べヒト(ブリュッセル自由大学)、フランクス(LBS)と共にエンゲージメント代行機関とフォーカスファンドの色彩の強い国内のアセットマネジメントの比較分析を進めた。さらに、このチームはインデックスファンドによる企業のESG活動に対するエンゲージメントの効果に関して“ Does Paying Passive Managers to Engage Improve ESG Performance”を作成した。また、自社株買いの分析では、宮島がメイヤー(オックスフォード大学)等と共に金庫株処分(売出し)の実態を分析し、RIETIの DPとして公刊し、さらに、この分析の政策的含みを日本経済新聞「経済教室」等の媒体を通じて公表した。 企業統治構造と雇用システムでは、久保が「経営者報酬ガバナンス改革の方向性」(企業会計)等一連の論文を執筆した。また、大湾の従業員のインセンティブ設計に関する分析は、Management Scienceに掲載予定である。 企業統治と資本効率に関しては、蟻川が宮島、河西(熊本県立大学)と共に事業法人のブロック保有のパフォーマンス効果を分析した。また、宮島は齋藤と共に企業統治改革の政策保有株の売却に関する分析を進め、Asian Journal of Political Scienceに掲載された。 さらに、2022年11月には、RIETI、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センターの協力を得て、機関投資家の役割についてのシンポジウム(「新しい資本主義」の下での企業経営権とESG)を開催し、本研究の成果の一部を公表する機会を得た。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度の本年度の課題は、これまでの研究成果の取り纏めを進める一方、今後の研究の方向を明確にする点にある。 企業統治構造の進化の分析では、蟻川・宮島が事業法人のブロック保有と単なる相互持ち合いとの比較分析を完成させる一方、伝統的機関投資家、アクティビストファンド、事業法人、創業者家族等の多様な形をとるフロックホルダーに注目し、こうしたブロック所有の決定要因とその効果に関する分析を進める。さらに、経営権市場の特性について、Franks et al. (2023)で強調した外部経営権市場と区別される内部経営権市場の特質を国際比較の観点から解明する。 機関投資家のエンゲージメントの実態に関する分析は、本年度中にDPに公刊し、11月のPRIのコンファランスにおける報告後に投稿する。また、前年度SMBC日興証券の協力のもとに進めた政策保有株売却の決定要因とその効果の分析を完成させ、DPとして公刊後、英文誌へ投稿する。さらに、齋藤・篠と共同して進め、前年度ほぼ分析を終えた中・小型企業に対する海外機関投資家の役割に関する分析は、DPとして公刊後、英文誌への投稿を目指す。 市場ベースの企業統治の拡大が雇用システムに与えた影響の分析について、久保が経営者報酬、持株会の生産性効果に焦点を合わせて分析を進める。内部組織構造に関しては、牛島が本社の規模と内部資本市場の機能に関する分析を進める。 研究代表者は本年度中に齋藤と共にこれまでの企業統治改革の分析、取締役会改革の機能、機関投資家の役割の分析をベースに、さらに、グループ・ガバナンス等の論点を追加して、単行本の出版を目指す。また、現在交渉中の日本の企業統治に関する英文論文集の準備を継続し、本年度中の刊行を目指す。11月には、RIETIの協力を得て開催される「日本企業の経営陣」コンファランスで、経営の質とガバナンス、経営者報酬について成果を報告する。
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