研究課題/領域番号 |
19H00655
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
林 好一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20283632)
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研究分担者 |
奥 隆之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, リーダー (10301748)
松下 智裕 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10373523)
木村 耕治 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20772875)
八方 直久 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (30285431)
大山 研司 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (60241569)
秋光 純 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任教授 (80013522)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,500千円 (直接経費: 35,000千円、間接経費: 10,500千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2020年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2019年度: 17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
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キーワード | 中性子ホログラフィー / 局所構造 / 磁気構造 / 水素 / 軽金属 / 軽元素 / 磁気散乱 / 3D原子イメージング / 磁性材料 |
研究開始時の研究の概要 |
多波長中性子ホログラフィーは、ドーパントなどの特定元素周辺の三次元局所構造を正確に再生できる画期的な手法である。本手法は、中性子散乱を利用しているため、水素のなどの超軽元素や磁気構造をイメージングすることが原理的に可能である。本研究では、これらを実現するための技術高度化を行い、エネルギー材料や磁性物質に対して適用するとともに、三次元原子像から超軽元素ドーパントや不純物周辺の磁気構造などの振る舞いを観測する。
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研究実績の概要 |
磁気中性子散乱ホログラフィーの実験については、引き続き、Fe0.08Co0.92単結晶を用いて研究を進めた。これまでの実験でアップ及びダウンの入射偏極中性子線によるホログラム測定で差を観測できなかったため、2021年度の研究では、より基本的な部分について検証を行った。本来は、中性子の偏極子として用いられる単結晶であるために、スピンの方位に対する大きな応答が期待されるが、本実験においては、結晶内の脱分極を避けるために磁化を飽和させる必要がある。そこで我々はシミュレーションを行って設計した約0.4 Tの磁場を印加できるデバイスについて、Type AとType Bの二種類作製した。これらデバイスの効果を確かめるために、位置敏感検出器を用いて、Fe0.08Co0.92からの200反射の測定を行った。Type Aを用いた実験では、200反射強度の偏光依存性は見られず、試料の磁化が完全に解消されていることが示され、恐らく、印加される磁場の大きさが不十分なことが確認された。一方、Type Bの実験では200反射強度に40%程度の偏極依存性が見られた。これにより、反転比(flipping ratio)1.7が得られ、試料の分極率が28%であることが分かった。 なお、本試料については、蛍光X線ホログラフィーの実験も実施され、データ整理もある程度完了している。Fe及びCoのホログラムを100K及び300Kで測定したが、基本的に、Fe周辺の原子像から格子歪みは観測されず、冷却することによって原子の熱振動が抑えられることが分かった。また、Co周辺の原子像からは格子歪みが想定され、その格子歪みの傾向が冷却により更に鮮明になった。従って、試料全体として格子が歪んでいることが考えられる。但し、このような構造状況は磁気散乱中性子ホログラフィーに影響を与えるほどでは無い。本結果は、今後、論文として纏めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁気デバイスの作製などで苦労しているが、改良する事項がクリアになったという点では、予定通り進行していると思われる。Bドープ6H-SiCについては、中性子ホログラムから得られた原子像を解析することにより、置換サイトの定量化を行うことができた。その結果を元に論文化を進めている。同様に、Fe0.08Co0.92の蛍光X線ホログラフィーの結果において構造的な特徴を抽出できたため、こちらも論文執筆に取り組んでいる。このため、一定の成果は上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
作製した磁気デバイスに、依然として、脱分極が試料内外で発生していることが判明しているが、このデバイスを用いて、磁気散乱中性子ホログラムの実験を続けることとする。多数の検出器を配置することにより、試料から放出されるγ線の統計精度を上げて、仮に十分な反転比が得られなくても、ホログラムの偏光依存性観測に挑戦する。なお、試料の磁化率を向上させるためには、理想的な方位と形状をもった円柱状のFe0.08Co0.92単結晶が必要であることも分かってきた。このため、従来は、東北大学金属材料研究所に依頼してきたが、今後は、我々の研究室の電気炉を用いて結晶の育成を試みる。複数の結晶の中から理想的な形状に切り出し、最適なものを実験に用いる。水素の局所観測を目的とした中性子ホログラフィーの実験では、純粋なPd単結晶についても計測を行い、その上で、水素吸蔵したPdHについての計測を行う。
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