研究課題/領域番号 |
19H00677
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高田 昌広 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (40374889)
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研究分担者 |
宮武 広直 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (20784937)
西道 啓博 京都産業大学, 理学部, 准教授 (60795417)
正木 彰伍 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (80826280)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,770千円 (直接経費: 32,900千円、間接経費: 9,870千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2020年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2019年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | ダークマター / ダークエネルギー / 背景重力波 |
研究開始時の研究の概要 |
すばる望遠鏡の広天域銀河サーベイは、日本が主導して行う初めての宇宙論サーベイである。このすばる宇宙論データから、ダークマター、ダークエネルギー、背景重力波などの初期宇宙物理を究明することが本研究の目的である。本研究課題期間中には、(1)大規模数値宇宙論データをデータベース化し、宇宙の構造形成の宇宙論観測量を高速かつ高精度で計算できるエミュレータを開発する。(2)すばるデータの宇宙論観測量から上述の物理量をローバストに測定するための物理解析手法を開発する。このとき、素粒子実験の分野では浸透している、ブラインド解析の手法を宇宙論解析に導入する。
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研究実績の概要 |
すばる望遠鏡の広天域銀河サーベイは、日本が主導して行う初めての宇宙論サーベイである。このすばる宇宙論データから、ダークマター、ダークエネルギー、ニュートリノの質量、また背景重力波などの物理を究明することが本研究の目的である。本研究課題期間中には、(1)大規模数値宇宙論データをデータベース化し、宇宙の構造形成の宇宙論観測量を高速かつ正確に計算できるエミュレータを開発する。(2)すばるデータの宇宙論観測量から上述の物理量をロバストに測定するための物理解析手法を開発する。このとき、素粒子実験の分野では浸透している、ブラインド解析の手法を宇宙論解析に導入する。 2022年度の主な成果は以下のものである。(1) 長波長スケールの潮汐力場は銀河の形状に特徴的な歪みを引き起こす。実際の銀河データから、この銀河の固有形状歪みの3次元パワースペクトルを測定する手法を世界で初めて開発した(Kurita & Takada 2022)。(2) 機械学習に基づき、赤方偏移空間の銀河クラスタリング統計量の理論予言を計算するエミュレータをSDSSデータの測定量と比較し、宇宙論パラメータを測定した。特にsigma8と呼ばれる現宇宙の構造の進化度合いを特徴付ける物理パラメータを約5%の精度で測定した(Kobayashi et al. 2022)。(3) プリンストン高等研究所の研究者らと協力して、銀河サーベイから宇宙論パラメータをより高精度に測定できる手法を開発した (Ivanov et al. 2022)。(4) インフレーションの物理に迫る物理量でもある、宇宙の曲率が引き起こす構造形成への影響を定量的に調べ、宇宙の曲率の効果を含む質量パワースペクトルを予言する手法を開発した(Terasawa et al. 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
宇宙論的シミュレーションの大規模データベースを用い、機械学習も組み合わせ、赤方偏移空間の銀河クラスタリング統計量を正確に計算するエミュレータを開発し、実際のSDSS銀河サーベイに適用し、宇宙論パラメータを精密に測定することに成功した。特に、現宇宙の構造形成の進行度合いを特徴づけるsigma8物理量を約5%の精度で測定することに成功した。また、長波長スケールの潮汐力場が作る銀河形状への歪みのパワースペクトルを測定する手法を世界で初めて開発した。背景重力はも銀河固有の形状に歪み効果を引き起こす。また、宇宙背景放射の偏光ゆらぎのように、銀河形状の歪み場はスピン2のテンソル場であり、観測的に銀河形状のEモード、Bモードの情報を測定することができる。これは通常のスカラー場である密度揺らぎ鳩は異なる。このため、銀河形状のBモードを観測から探査することにより、背景重力波、あるいは例えば宇宙初期のアクシオン場が誘発するパリティ対称性の破れなど、初期宇宙の物理を探る新たな観測手法となる。さらに、まだ査読雑誌の査読中であるが、開発した手法を実際のSDSS観測データに適用し、銀河形状のパワースペクトルを測定することに世界で初めて成功した(Kurita & Takada, arXiv:2302.02925)。これらの研究成果は注目もされており、既に多くの引用がある。このように、研究は計画以上に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、前年度までに開発した、銀河固有形状の歪みのパワースペクトルをSDSS実データから測定し、インフレーションの物理を探査する鍵となる非等方原始非ガウス性を制限する。また、すばるHyper Suprime-Camの重力レンズ効果の測定とSDSSの赤方偏移空間銀河クラスタリングの統計量を組み合わせ、宇宙論パラメータを測定する。特に、現在注目されている宇宙の大規模構造の測定と宇宙背景放射の測定によるS8の測定値のあいだの不一致問題、すなわちS8不一致問題の真偽を解明することを目指す。
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