研究課題/領域番号 |
19H00695
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
西山 正吾 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20377948)
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研究分担者 |
Lozi Julien 国立天文台, ハワイ観測所, RCUH職員 (20806658)
高橋 真聡 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30242895)
孝森 洋介 和歌山工業高等専門学校, 総合教育科, 准教授 (30613153)
美濃和 陽典 国立天文台, ハワイ観測所, 准教授 (60450194)
斉田 浩見 大同大学, 教養部, 教授 (80367648)
Guyon Olivier 国立天文台, ハワイ観測所, RCUH職員 (90399288)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
46,930千円 (直接経費: 36,100千円、間接経費: 10,830千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2019年度: 30,160千円 (直接経費: 23,200千円、間接経費: 6,960千円)
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キーワード | 天文学 / 赤外線 / ブラックホール / 相対性理論 / 補償光学 / 観測天文学 / 赤外線分光 / 一般相対性理論 / 銀河系 / 波面センサー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、銀河系の巨大ブラックホールを周回する星の観測を通した、ブラックホール重力場での一般相対論の検証である。そのためにまず、すばる望遠鏡の補償光学装置に装備する赤外線波面センサーを開発する。赤外線波面センサーの導入により、ブラックホールに近い、明るい赤外線星を補償光学のガイド星として観測することができるようになる。これにより一般相対論の検証に適した晩期型の星の観測が可能となる。 この開発が終わり次第、ブラックホールを周回する星の観測を開始する。年数回のモニター観測を継続し、その視線速度の変化から、ブラックホールがつくりだす重力場を測定し、一般相対論の予想との整合性を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、すばる望遠鏡の補償光学装置で使用する赤外波面センサーの開発である。装置の開発、導入は終了し、2023年5月3日に試験観測を行った。様々な明るさの天体に対して、複数の波長帯(Y, J, H)の光を赤外波面センサーに導入し、補償光学による星像を取得した。その結果、明るい星(X Boo)に対してHバンドで約65%、Kバンドで約75%のストレール比を得ることができた。それ以外の星も観測し、ガイド星の明るさに対するストレール比の変化や、観測波長に対するストレール比の変化を測定することができた。またS24の観測で使用する銀河系中心の星IRS7を使った試験観測も行い、星像が改善されることを確認できた(Lozi, et al. 2023, Adaptive Optics for Extremely Large Telescopes )。これらの結果を受けて、2023年7月にacceptance reviewが開かれた。ここでの審査を通過し、2024年2月から始まるすばる望遠鏡の共同利用観測への供与も決定した。 すばる望遠鏡での観測ができていないため、Keck望遠鏡の観測を申請し、2023年8月にKeck望遠鏡を使って2晩の観測を行い、S24のデータを取得することができた。現在データ解析中である。 同時に、前年度から取り掛かっていたS0-6の論文を出版した(Nishiyama et al. 2024, Proceedings of the Japan Academy, Series B)。巨大ブラックホールSgr A*のすぐ近くにある古い星S0-6のスペクトルを解析し、その年齢や金属量を測定した。その結果、この星は銀河系の外で生まれた可能性が高いことを示した。論文は日本学士院会員のすすめにより日本学士院紀要で発表した。またプレスリリースを行い、多くの新聞雑誌に取り上げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来のターゲットであるS24の観測には至っていない。その理由は二つあり、新レーザーガイド星システム開発の遅延、及び赤外波面センサー開発の遅延である。どちらも新型コロナウィルス感染拡大の影響による遅れである。また新レーザーガイド星システムを使うためには、航空機を自動検出するTBADというシステムが稼働しなければならない。このシステムのテストのために使用予定だった航空機が使用できなくなり、TBADシステムの導入が遅れている。これらが、本来の予定から遅れている理由である。 その一方、赤外波面センサーの開発は、研究提案段階の予定からは遅れているものの、着実に進んでいる。装置の開発、導入は終了し、試験観測も終了した。またそれにより、2024年2月から、すばる望遠鏡の共同利用観測装置として、他のユーザーも使える状況になった。現在は想定通りに稼働している。また2024年6月に観測時間を確保しており、S24のデータを取得できる予定である。これらのことから、提案段階の予定からはやや遅れているものの、感染拡大時期を除けば、順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年2月から、赤外波面センサーを使った観測が可能になった。これを受けて、望遠鏡時間を確保し、観測を進めていく。2024年には、すばる望遠鏡とKeck望遠鏡を含めて3回の観測機会(5月、6月、7月)を確保した。天候に恵まれれば、これらの機会にS24のスペクトルを取得できるはずである。 観測とその後のデータ解析に向けて、S24の予想モデルスペクトルを使った観測計画立案、及びデータ解析シミュレーションを行っている。S24の温度情報はすでに得られているため、金属量等の不定性はあるものの、モデルスペクトルを作ることはできる。またこれまでの観測データから、2024年の観測時の予想視線速度も計算できる。これらの情報を使って、観測に最も適した波長帯などを決定し、詳細な観測準備を行なっている。また同様のモデルスペクトルを使用し、スペクトルから星のパラメータを推定する方法も検討中である。S24は早期K型の巨星であるため、吸収線は若干浅くなる。この中でより明確に測定できそうな吸収線を特定し、金属量や年齢などのパラメータをどのように決定すべきか、議論している。これらを進めてデータを取得し、S24の性質を明らかにする研究を進める。
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