研究課題/領域番号 |
19H00707
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠羽 康正 東北大学, 理学研究科, 教授 (10295529)
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研究分担者 |
中川 広務 東北大学, 理学研究科, 助教 (30463772)
佐川 英夫 京都産業大学, 理学部, 教授 (40526034)
黒田 剛史 東北大学, 理学研究科, 助教 (40613394)
青木 翔平 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (60773629)
寺田 直樹 東北大学, 理学研究科, 教授 (70470060)
岩渕 弘信 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80358754)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2022年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2021年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2020年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2019年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | 火星 / 現在の大気環境の変動 / 過去の大気環境再現 / 探査機・望遠鏡観測 / 大気数値モデル / 現在大気環境の変動 / 過去大気環境の再現 / 現在の大気環境変動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、TGO探査機が実現する火星周回軌道初の火星大気鉛直構造とその変動の高精度観測を足がかりとして、火星環境変化の決定要因「大気と水の流出」の現在を掌握し(目標1)、その過去の再現へと活かす(目標2)。 [目標1] 現火星で、表層と結合する下層大気から宇宙へと開かれた上層大気へ至る物質・エネルギーの鉛直輸送機構を、平常時と大規模擾乱時の比較によって掌握する。 [目標2] 目標1で得られた知見によって、過去火星の大気環境とその変動の支配プロセスを評価し、数値モデルによる過去火星の大気環境とその変動・進化の再現を目指す。
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研究実績の概要 |
(A) リム観測による対流圏・中間圏大気の鉛直構造観測: リトリーバルツール開発を進捗させ、氷・ダスト粒子の高度分布導出に漕ぎ着けた(口頭発表: 小暮+ 2021. 笠羽+ 2021など)。またExoMars TGOで水蒸気変動と類似するHClの高度分布変動を発見した(論文:Aoki+ 2021)。CO2吸収を用いた地表気圧導出にも挑戦を始めた(口頭発表: 風間+ 2021など)。 (B) 米MAVEN等による熱圏・外圏大気の鉛直構造観測: 金星でCO・CO2の高度分布差から上方物質輸送の鍵となる渦拡散係数導出に成功(論文:Mahieux+ 2021)。同手法を粒子計測器NGIMSによる大気微量成分の季節・緯度変動を初報告した(論文:Yoshida+ 2021; 口頭発表: 中川+ 2021 など)。 (C) 地上・航空機望遠鏡による全球水平構造観測: ハレアカラT60観測で2018ダストストーム時の火星上層大気速度場擾乱を論文公表した(論文: Miyamoto+ 2021)。この観測で安定性が問題となったヘテロダイン観測装置へ、真空ポンプ更新等の発展作業を行った。 A/B/Cは、2024年打上へ作業が進む日本の火星圏探査機MMXの赤外分光撮像器MIRS(論文:Berucci+ 2021)などによる火星観測(論文:Ogohara+ 2021; 口頭発表:堺+ 2021など)、および米・カナダと検討途上のIce Mapper計画へ発展する。 (D) 対流圏-中間圏・熱圏-外圏鉛直結合モデル: 引き続き現環境の数値モデル開発を継続し、太陽高エネルギー粒子による化学変化予測(Nakamura+ 2022)などを実現した。また、河川による太古の地形変化再現が可能なモデル(論文:Kamada+ 2021など)、古代の大気組成変化を追跡するモデル(Koyama+ 2021)といった新古環境モデルも構築した。さらに古表層水環境の痕跡をRSLが集中するCAP領域をレーダーデータで初めて探索した(口頭発表: Oura+ 2021)。関連して、RSLに起因する大気微量成分変化がTGO等で観測にかかりうるか評価を行った(Kurokawa+ 2022)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
引き続きCOVID-19の影響で、特に出張や現地作業を要する項目を中核として2020年度の以下の活動が2021年度にずれこむ形で進行した。(1)欧ExoMars TGOデータ校正と同期するリトリーバルツール開発、(2)米と連携する米MAVEN探査機熱圏-中間圏データ解析、(3)東北大ハレアカラ望遠鏡等の整備・観測。「物品費」はこれらに要する電子機器・消耗品等、「旅費」は国内での成果公表、「人件費・謝金」はリトリーバルツール開発・モデル研究・解析にあたる要員、「その他」は国内での成果公表および論文出版に要する経費に当てた。 年度末に至り、比較的コロナ禍による影響を受けにくかったモデル研究を中心に作業は進捗し、凸凹があるものの、概ね全体としては順調に進展といってよい状態に回復しつつある。引き続き残期間での研究遂行を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
2019-21年度の成果を論文として公表し、また新開発ツールを成果創出へ徐々に援用し、以下諸活動の継続・発展を行っていく。 (A) 探査機による対流圏・中間圏大気の鉛直構造観測: 2021年度にエアロゾル密度分布導出まで至った新リトリーバルツールを更に改良し、エアロゾル・H2O・CO等を跨いだ鉛直構造の導出へ向けて作業を進める。またCO2吸収を用いた地表気圧導出の挑戦を継続発展させる。 (B) 探査機による熱圏・外圏大気の鉛直構造観測: 米MAVEN等による中間圏-熱圏粒子の柱密度・高高度散乱光観測 (IUVS)および熱圏粒子の密度観測 (NGIMS)の活用を主軸とし、(A)を併せて熱圏大気の加熱、均質圏界面高度、高高度エアロゾル分布等の評価を進める。 (C) 地上・航空機望遠鏡による全球水平構造観測: 最もコロナ禍の影響を受けるが、2022年冬季の観測好適期を活用してproposal-baseの観測を実施していく。ハレアカラT60は一旦観測装置を持ち帰っており、ファイバー化・冷凍機化など諸問題を解決し、可能であれば再展開して観測に漕ぎつける。 (D) 対流圏-中間圏および熱圏-外圏鉛直結合モデルによる現大気環境の変動機構と古環境の再現。表層・化学プロセスの導入・改善および古環境再現を目指すモデル開発を継続実施する。また、過去環境の痕跡につながりうるRSL(水漏出を思わせる地形)集中域の地下探査研究を論文公表を予定する。 これらの成果は、2024年打上へ作業が進む日本の火星圏探査機MMXおよび米・カナダと検討途上のIce Mapper計画へ流し込んでいく想定である。
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