研究課題/領域番号 |
19H00725
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 (2020-2023) 九州大学 (2019) |
研究代表者 |
野口 高明 京都大学, 理学研究科, 教授 (40222195)
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研究分担者 |
藤谷 渉 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (20755615)
薮田 ひかる 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (30530844)
上塚 貴史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30613509)
大坪 貴文 国立天文台, 天文データセンター, 特任研究員 (50377925)
山口 亮 国立極地研究所, 先端研究推進系, 准教授 (70321560)
臼井 文彦 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (30720669)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2020年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2019年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
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キーワード | 宇宙塵 / 小惑星 / 彗星 / 物質分析 / 分光観測 / はやぶさ2 / 小惑星リュウグウ / 宇宙風化 / 鉱物 / 有機物 / 中間赤外 / TEM / nanoSIMS / STXM-XANES / リュウグウ / 岩石鉱物学的特徴 / 透過電子顕微鏡 / NanoSIMS / 中間赤外分光 / 顕微拡散反射スペクトル / 南極微隕石 |
研究開始時の研究の概要 |
地球外から地表にやって来る微小な粒子を宇宙塵といいます。宇宙塵は小惑星や彗星が放出した微粒子です。最近,天文学的な観測にもとづいて,今まで彗星が放出した塵とされてきた宇宙塵がある種の小惑星由来ではないかといわれています。本研究では,まず,今まで彗星起源の宇宙塵とされてきた物質がどのような鉱物や有機物でできているかを調べます。また,本研究では,小惑星や彗星がどのような鉱物でできているかを天文学的にも測定します。分析と天文観測を比較して,どういう宇宙塵がどの種の小惑星や彗星起源であるかを対応付けます。最終的には,太陽系初期に惑星や小天体の軌道が大きく変化したかどうか解明したいと考えています。
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研究実績の概要 |
2021年6月に開始された,小惑星リュウグウからの回収試料の分析においては,「砂の物質班」の班長として研究代表者は研究を遂行した。当班にはごく少量の試料しか配布されず,大きなな制約があるなかで一昨年度Science誌に研究代表者がトップオーサーの論文を投稿したがリジェクトされた。そこで,小惑星リュウグウの宇宙風化に特化して論文を根本的に書き直し,本年度,Nature Astronomy誌に再投稿した。そして,この論文は2022年12月にウェブ上に掲載された。他の班員も,それぞれ,トップオーサー(山口:Nature Astronomy誌,薮田:Science誌)や共著者(藤谷:Science誌)論文が掲載された。藤谷トップオーサーの論文は現在Nature Geoscience誌で査読中である。当初計画では,小惑星リュウグウの研究は3年目の研究課題だったが,実際は2年間にわたる長丁場となり,科研費4年目も分析担当の班員の研究時間の多くがはやぶさ2回収試料の研究と論文執筆に費やされたが,一流国際誌に掲載できた。 それでも,宇宙塵の凍結乾燥による試料回収方法の改善を試みた。蛍光X線顕微鏡と低加速電圧・低電流の走査電子顕微鏡(SEM-EDS)観察という2通りの方法で,雪を凍結乾燥したテフロンシート上から宇宙塵を探索するという方法を行った。しかし,どちらの方法でも宇宙塵を探し出すことはできなかった。このため,まだ実体鏡下でマイクロマニピュレータを使ってテフロンシートから微粒子を取り出しSEM-EDSで宇宙塵を探索する方法を変更できていない。 小惑星や彗星の中間赤外分光は,本年度も観測を行うことはできなかったが,過去に得たデータの解析を行うことで,短周期彗星表面に粘土鉱物が存在する可能性を示すことができた。また,TAO望遠鏡の開発は2024年のファーストライトに向けて順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でふれたように,はやぶさ2試料の分析と論文作成に科研費の3および4年度を使ってしまったが,Science誌やNature Astronomy誌にいくつもトップオーサー論文を掲載することができたので,この点は当初計画以上の成果が得られたと言えるだろう。しかし,凍結乾燥法で回収する宇宙塵の回収効率の改善は進んでおらず,科研費2年度末までの方法から変更できずにいる。ただ,宇宙塵の同定は従来法でも効率は悪いができている。また,小惑星や彗星の中間赤外分光も引き続きコロナのため4年度も行うことができなかったが,過去のデータ解析によって新たな論文を出版することができた。これらを考慮すると,全体としては,概ね順調に進展しているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,シリコンウェーハ上で雪の凍結乾燥を行い,ウェーハをSEM-EDSで観察し,宇宙塵の同定を行う。テストの凍結乾燥とSEM-EDSは5-6月の間に行い,良好な結果が得られれば,宇宙塵の探索はこの方法に切り替える。 また,今年度後半には今までに同定した宇宙塵を使って,放射光の中間赤外分光実験をSPring-8で行う予定である。実験の申請については,すでにSPring-8の研究者と相談済である。中間赤外スペクトルを解析して,からかんらん石,輝石,非晶質珪酸塩の比率を定量的に求めることを目標とする。本実験がうまくいけば,宇宙塵1個全体に含まれるこれら3者の比率をもとめることができるため,本科研費2年度まで行っていた,各宇宙塵の超薄切片に含まれるかんらん石と輝石の数を数えるという方法よりもより正確な比率が得られるものと期待できる。 宇宙塵の中間赤外分光後には,従来通り宇宙塵の超薄切片を作成し,2年度目まで行っていたのと同様な分析(STEM, NanoSIMS, STXM-XANES等)を行い,今までの試料回収方法の場合と宇宙塵の分析値に違いがあるかどうかを明らかにする。 小惑星や彗星の中間赤外分光についても,本年度はすばる望遠鏡の中間赤外分光器COMICSが稼働する予定であるため,実際の分光測定ができると予想される。
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