研究課題/領域番号 |
19H00785
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 素之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00304494)
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研究分担者 |
田口 岳志 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (00452839)
楮原 京子 山口大学, 教育学部, 准教授 (10510232)
川島 尚宗 広島大学, 総合博物館, 准教授 (10650674)
長井 正彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20401309)
赤松 良久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30448584)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
33,930千円 (直接経費: 26,100千円、間接経費: 7,830千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2020年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2019年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
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キーワード | 土砂・洪水氾濫 / 年代測定 / 豪雨 / 災害史 / リスク / 土石流 / 発生頻度 / リスク評価 / 歴史資料 / 遺跡 / リモートセンシング / 災害履歴 / 土砂洪水氾濫 / サンプリング / 地盤履歴 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、西日本豪雨でみられた大量の土砂を含んだ洪水流「土砂・洪水氾濫」による堆積物を、地層の走向・傾斜が判定可能なジオスライサーを用いて発見し、地中の炭化物に対する年代測定を実施して、その発生頻度・状況、影響範囲、土砂堆積速度などを100~1000年の時間スケールで解明する。また、歴史アーカイブから発掘した豪雨災害イベントと年代値の比較により、『土砂・洪水氾濫発生年表』を作成する。さらに、その危険性のある箇所を見出し、ハザードマップに反映させる。地盤履歴と災害伝承を融合した研究アプローチにより、千年に一度の低頻度で発生するミレニアム豪雨の被災リスクを判定し、防災面での応用策を提案する。
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研究実績の概要 |
当該年度は、山口県防府市富海地区、広島県東広島市黒瀬町、秋田県大仙市雄物川流域の刈和野・九升田地区で、現地調査、露頭観察・サンプリング、ジオスライサーによる地層剥ぎ取り、放射性炭素年代測定、土粒子の密度試験、土の粒度試験、文献調査等を実施した。その結果、過去の土石流堆積物層や洪水履歴を示す層状の痕跡を認めることができた。得られたデータは各地の土石流および洪水発生年表に追加・整理し、近世の古文書など歴史アーカイブの災害記述と照合した。また、既往の調査結果も踏まえて、異なる地質帯による土石流発生頻度の違い等について総合的に考察した。 また、これまでに蓄積した山口県内におけるDEMデータや地形解析事例に基づき、地形量と地質との関係や平成21年7月山口・九州北部豪雨で土砂・洪水氾濫が発生した防府市佐波川流域および平成30年7月豪雨で表層崩壊が多発した周南市島田川流域の地形条件を整理し、谷密度等の地形指標による稀な豪雨に伴う土砂・洪水氾濫の発生可能性のあるメッシュを抽出するフローを試案した。 さらに、考古学分野では津波・地震・噴火による被害事例の調査研究は進んでいるものの、土砂災害に関しては研究事例がまだ少ないため、当該年度は先史社会、特に縄文時代の土砂災害の事例について資料収集を進めた。また、防府市の中世の遺跡分布と土砂災害危険箇所との位置関係については、防災学、歴史学、考古学的の視点から地形解析結果を考察・とりまとめ、論文発表した。その他に、山口県内の土石流複合災害ポテンシャルを把握するために土石流氾濫解析および衛星リモートセンシング解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土砂・洪水氾濫発生年表の作成に関しては、山口、広島、秋田の各県の調査エリアで、土石流および洪水堆積物の状況調査と年代測定を行い、土石流および洪水発生年表のデータが積み上げられ、土砂・洪水氾濫発生年表の作成に用いるデータが出揃いつつある。今後はポイントを絞って調査分析を実施することを考えている。また、長野県木曽郡南木曽町などの各地で取得した全データを総合的に分析した結果、花崗岩類、変成岩類、流紋岩類、第四紀火山岩類の地質ごとの土石流発生間隔の範囲に見当をつけることができた。ただし、同じ地質帯でも渓流の形状や勾配、流域等によって土砂堆積の様相が異なることから、地形的要因のさらなる検討が必要であることもわかった。土砂・洪水氾濫危険箇所マップの作成に関しては、過去の豪雨で表層崩壊・土石流が多発した防府市佐波川流域と周南市島田川流域の2つのエリアに対して10mDEMを用いて地形解析を行った結果、大規模土石流やそれに繋がる崩壊が発生しやすい範囲を抽出するのに、谷密度および起伏量・傾斜を指標とした評価が一次的なスクリーニングになる可能性がみえてきた。また、各地形量はハザードマップとして活用できるよう、1kmメッシュ毎のGISデータとして整備した。発掘調査報告書などの資料調査に関しては、縄文時代遺跡の範囲内における土砂移動の事例が散見される。これが縄文時代集落に直接的な被害をもたらしたかどうか、また、居住パターンにどのような影響を与えたかについては、検討中である。その他に、山口県内の282か所の土石流の危険箇所を対象とした土石流シミュレーションを実施し、土石流を起因とする複合災害発生ポテンシャルについて検討した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は最終年度に当たり、当初の研究の目標が達成されるよう、以下の項目を実施する。 土砂・洪水氾濫発生年表と同発生危険箇所マップの作成:山口、広島、秋田の各調査エリアでの補充調査を実施する。秋田における調査では雄物川上流域および中流域に焦点を絞り、洪水履歴はもとより、土砂崩壊履歴との関連性にも着目して調査を継続する。取得した土石流および洪水の発生データは年表に追加・整理し、土砂・洪水氾濫発生年表として取りまとめる。また、土砂・洪水氾濫の可能性のある箇所を抽出するスクリーニング方法が他の地域にも適用可能かどうかの検証を、基盤地図情報として提供される10mDEMを用いて行い、その結果として土砂・洪水氾濫リスクがある箇所を地図上に示し、既存の情報閲覧システムに取り込み可能な形式の電子データを作成するプロセスについて検討する。さらに、災害伝承に関するアンケート調査、地誌・古文書・発掘調査報告書等の資料を総合的に調査して、過去の土砂災害事例の蓄積を進め、土砂・洪水氾濫発生年表に盛り込むことを検討する。 土石流・洪水氾濫解析:山口県内の282か所の土石流の危険箇所を対象とした土石流シミュレーションの結果を用いて、地形情報等から土石流の発生の有無やその規模を予測する統計モデルの開発を進める。 人工衛星/UAVによるリモートセンシング解析:衛星データ、空中写真等を用いて土石流扇状地、氾濫原の地形を判読・検出し、谷出口と河川との距離等を解析し、氾濫開始点の位置、土砂到達範囲等の結果を図面上で整理するフローについて検討する。
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