研究課題/領域番号 |
19H00818
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
溝口 照康 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70422334)
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研究分担者 |
池野 豪一 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30584833)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2020年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2019年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
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キーワード | 電子エネルギー損失分光 / 格子振動 / 理論計算 / 透過型電子顕微鏡 / 機械学習 / 振動 / フォノン / 第一原理計算 / シミュレーション / STEM / EELS / 分子振動 / ELNES / XANES / 材料開発 / 電子線エネルギー損失分光 |
研究開始時の研究の概要 |
最新の計測法でも未だ明らかにできない情報が存在している.それが固体・液体・気体を構成する原子や分子の局所的な“振動”に関する情報である.これまでに申請グループは走査透過型電子顕微鏡(STEM)により測定される電子分光(EELS)と高度なスペクトル計算を融合することで,固体,液体,気体を構成する原子・分子の振動を検出する手法を報告してきた.本研究は,高いレベルにあるSTEM-EELS計測,高精度EELS計算,さらに高速界面・表面モデリングを高度に融合することで局所的な振動を計測する手法を確立し,材料開発に活用する.
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研究実績の概要 |
物質を構成する原子や分子の局所的な“振動”は,熱などの外場からのエネルギーによる原子の変位現象であり,相転移や熱伝導,さらに様々な機能発現にかかわる重要な現象である.これまでに申請グループは走査透過型電子顕微鏡(STEM)により測定される電子分光(EELS)と高度なスペクトル計算を融合することで,物質を構成する原子・分子の振動を検出する手法を報告してきた.本研究は,高いレベルにあるSTEM-EELS計測,高精度EELS計算,さらに高速界面・表面モデリングを高度に融合することで局所的な振動を計測する手法を確立し,材料開発に活用することを目的としている. 2021年度においては,界面におけるシミュレーションと計測による格子振動(熱)の影響を調べた.まず,界面モデリングを行い,各種結晶界面における熱振動をシミュレーションにより調べた.その結果,界面における原子振動と界面相転移との相関性を明らかにすることができた.界面エネルギーと,構造転移のための活性化エネルギーからその実験的検証の可能性を調べた.さらに,FIB加工した界面試料に関してSTEM-EELSを用いた実験的な計測も実施した. EELSのプラズモンを用いることで,界面の熱膨張を直接計測することに成功した.さらに,同手法により界面における局所的な熱振動が,界面構造と相関していることを明らかにすることができた. また,EELSスペクトルの高精度計算に向けて,2021においては多電子計算により励起状態における原子変位の定量計算を行う手法の検討を進めた.クラスターモデルを第一原理モデルポテンシャルに埋め込んで計算を行うことで,励起状態におけるエネルギー曲面を描くことが可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度においては,実際に局所的な振動特性を調べるための手法開発を進めた.その研究を通し,界面における構造と振動との相関性を明らかにすることができた.特に,界面構造のシミュレーションにおいては,種々の界面構造を作製し,熱振動と構造との相関性を調べた.さらに,構造とスペクトル形状との相関性も調べてきた.例えば,仮想的に構造をひずませたモデルを多数構築し,スペクトル形状との相関性も調べた.結果的に,教師無学習で使用される樹形図からその相関性を明らかにすることができ,振動情報抽出において有効な解析手法を開発することができた.1粒子計算に加えて多電子計算においても解析を進めた.その結果,励起状態に置けるエネルギー局面を描くことが可能になった.これらの成果はすでにいくつかの論文としてPublishされている. さらに,2021年の成果として特筆すべき点は,実験的に界面の熱振動をナノレベルの高い空間分解能で直接計測することに成功した点である.本申請研究で導入した各種計測装置と計算機をもちいて計測と理論計算を実施し,界面の局所的な振動にかかわる物性(熱膨張)を決定することに成功した.さらに,界面の熱膨張を決定する構造因子を特定することができた.つまり,本申請研究の目的である「高い空間分解能での振動計測」と「振動制御のための指針確立」という目的をおおむね達成することができた.同成果は,ハイインパクトなJournalに掲載され,プレスリリースも行った.以上から,「順調に進展している」と十分に言える成果が出ている.
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今後の研究の推進方策 |
前述のように,本申請研究の目標をおおむね達成できたといえる.そこで2022年度は引き続き振動や原子変位を加味したスペクトル計算を推進するとともに,その抽出法の開発も続けるなど,基礎的な知見の獲得を目指す. 具体的には,EELSスペクトルの多電子計算については,振動の効果を取り入れた計算手法の開発を進める.励起状態における原子変位を得るための振動モードを求め,その固有モードの方向に原子変位を与えることで,多電子のエネルギー曲面を求める.この研究を通して,原子振動がEELSスペクトルに与える影響を明らかにする. さらに,一粒子計算においても様々な振動・ひずみモデルにおけるスペクトル計算を実施するとともに,格子欠陥のモデルも構築し,そのスペクトルへの影響や温度による影響も調べる.そのようなスペクトルデータベースの構築により,実験計測の際にスペクトルの解釈が容易になることが期待できる.
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