研究課題/領域番号 |
19H00895
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
依光 英樹 京都大学, 理学研究科, 教授 (00372566)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
45,890千円 (直接経費: 35,300千円、間接経費: 10,590千円)
2022年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2021年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2020年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2019年度: 20,540千円 (直接経費: 15,800千円、間接経費: 4,740千円)
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キーワード | 芳香環破壊 / 還元 / 求核置換 / リチオ化 |
研究開始時の研究の概要 |
頑丈で安定なヘテロ芳香環を還元的に破壊・開裂する新手法を開発し、芳香環の骨格そのものを改変する斬新な有機合成手法を創出する。具体的には、「高反応性求核剤の付加」や「金属リチウムからの電子移動」を鍵素反応として、「ヘテロ芳香環内への原子挿入」や「ヘテロ芳香環内原子の置換」を達成する。これらの革新的手法に基づき、窒素、ケイ素、ホウ素、リンなどを環内鍵元素とする未知の機能を秘めた新規エキゾチックヘテロ芳香族分子群を続々と生み出す。こうして、化学・医農薬・エレクトロニクス産業にまで波及する新しい芳香族化学を切り拓く。
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研究実績の概要 |
ピロールの還元的切断について研究を進めた。その結果、ピロール環外の炭素-窒素結合を還元的に切断できることを明らかにした。すなわち、N-アリールピロールに対して単体リチウムを作用させると、対応するアリールリチウム種が発生することを見つけた。さらに、生物活性物質中によく見られるスルホンアミドをN-スルホニルピロールに変換する簡便な手法を開発し、これをフォトレドックス触媒からの電子注入を鍵とするスルフェナートアニオン発生法に展開した。また、その途上で、強固な炭素-酸素結合の切断も偶然発見し、容易に合成可能なプロパルギルエーテルから炭素-酸素結合の切断を伴ってアレニルリチウム種が効率よく発生することも明らかにした。いずれも新たなカルボアニオン発生法として世界的な注目を集めている。 置換型芳香環骨格変換法として、ジベンゾチオフェンジオキシドを出発物質とする環拡大反応を発見した。当該ジオキシドに対してN-ベンジルベンズアルデヒドイミンと2当量のカリウムヘキサメチルジシラジドを作用させると、芳香族求核置換反応が二度進行し、七員環構造を有する5H-ジベンゾ[c,e]アゼピンが得られた。この骨格変換はN-ベンジルイミンの窒素原子に隣接する二つの炭素原子で生じるα-アミノベンジルアニオンが分子間および分子内芳香族求核置換反応を連続的に起こすことにより進行する。初の5員環から7員環への芳香環メタモルフォシスとして大変意義深い。 こうした成果を論文として報告することで、芳香環の還元的破壊に基づく有機合成に関する研究が認められつつあり、国内外の学会でオンラインではあるが招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピロール環の芳香族性は高く、その破壊にはまだ成功していない。一方で、ピロール環外の炭素-窒素結合を還元的に切断できることを偶然見つけ、その有機合成的な重要性を明確にした。さらには、プロパルギルエーテルの強固な炭素-酸素結合を切断してカルボアニオンを出すことにも成功している。 また、置換型芳香環メタモルフォシスにおいて、2原子環拡大芳香環メタモルフォシスを発見し、芳香環の骨格再構築反応としては初の7員環構築を成し遂げ、ランドマークを打ち立てた。 研究は計画通りに進んでいるとはいえないものの、それに匹敵する成果をあげており、概ね研究は順調であると言って良い。
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今後の研究の推進方策 |
以下の二つのテーマを並行して進める。 1) 有機金属種を用いた炭素導入法開発:炭素求核剤の付加-脱離による環開裂を活用して、インドールからキノリンへの変換を検討する。窒素上の置換基効果が特に重要と考えられるため、トルエンスルホニル基やtert-ブトキシカルボニル基などの電子求引性置換基の他に、ピリジル基やPEG基などの配向基についても精査する。テトラメチルエチレンジアミンなどの多座配位性添加剤を用いて炭素求核剤の会合状態を制御し、反応の効率を高める。生物活性キノリン類のターゲット指向型合成についても挑戦する。さらには、インドールの他にピロールを基質とするより高難易度の反応も目指す。 2) チオフェンの還元的ジリチオ化を経る脱硫黄型原子置換:昨年度までに確立した還元的ジリチオ化をもとに、より穏和な還元条件を使った還元的ジメタル化を創出する。具体的には、リチウムなどのアルカリ金属で還元することで発生する低原子価チタンやジルコニウムを活用する還元的ジメタル化を重点的に検討する。チタンやジルコニウム上の配位子の選択は重要であり、シクロペンタジエニル配位子のようなπ配位型配位子だけでなく、アミドやアルコキシドのような強力な電子ドナー型配位子も利用する。昨年度に開発した手法よりも一層扱いやすくユーザーフレンドリーな還元的ジメタル化法を開発することで、多くの研究者が有するチオフェンからシロールやボロールなどの難合成エキゾチックヘテロ環への一段階変換を行う。
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