研究課題/領域番号 |
19H00903
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
正岡 重行 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20404048)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
45,500千円 (直接経費: 35,000千円、間接経費: 10,500千円)
2022年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2021年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2020年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2019年度: 14,820千円 (直接経費: 11,400千円、間接経費: 3,420千円)
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キーワード | 多核クラスター錯体 / 電気化学 / 多電子酸化還元 / 錯体化学 / 多核金属錯体 / 電子移動反応 / 小分子変換 |
研究開始時の研究の概要 |
「多電子移動能」と「結合組み換え能」を併せ持つ多核クラスター錯体を研究開発の中心に据え,小分子の多電子酸化還元を促す革新的な触媒の創出を目指した触媒開発基礎研究を推進します。そのために,金属イオンの種類・数ならびに配位子の電子構造が異なる種々の多核金属錯体を開発し,得られた錯体の多電子酸化還元能を網羅的に評価します。加えて,触媒反応中に生成する反応中間体の構造ならびに電子状態についても精密に解析することで触媒反応機構を詳細に理解します。これらの研究を通じ,小分子の多電子酸化還元を自在に操るための学理を創出することが本研究の最終目標です。
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研究実績の概要 |
本研究では、生体酵素の活性中心の構造ならびに申請者のこれまでの研究から得た着想に従い、小分子の多電子酸化還元を促す革新的な触媒の創出を目指した触媒開発基礎研究を推進している。具体的には、「多電子移動能」と「結合組み換え能」を有する新規多核クラスター錯体を複数種合成し、その構造、電子状態ならびに酸化還元能の解析を行うとともに、合成した多核クラスター錯体の小分子変換反応に対する触媒能の評価を行っている。2021年度は特に「多核クラスター錯体の小分子変換反応に対する触媒能の評価」の遂行に注力した。具体的な研究成果の1つとして、コバルト五核クラスター錯体と光増感剤であるイリジウム錯体から構成される触媒系の構築が挙げられる。本反応系では、ギ酸の存在下、常温・常圧条件で可視光を照射し、反応終了後の気相をガスクロマトグラフィーにより解析したところ、水素ガスの生成が確認された。多数の対照実験ならびに分光学測定・電気化学測定に基づき、触媒反応の機構解析を行ったところ、コバルト五核クラスター錯体が光化学的にギ酸を脱水素化し、水素ガスを生成していることが明らかとなった。また、この反応系の触媒回転頻度は既存の関連する触媒系と比較して世界最高値であることも判明した。申請者の以前の研究により、コバルト五核クラスター錯体は二酸化炭素を還元してギ酸を製造する反応の触媒として機能することが見出されているため、本触媒系は、二酸化炭素還元反応とギ酸脱水素化反応による持続可能な水素生成サイクルを達成した世界で初めての例とみなすことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、「多電子移動能」と「結合組み換え能」を有する新規多核クラスター錯体を複数種合成し、それを用いた小分子変換反応系の創出にも成功している。また、得られた成果のうちいくつかは、国際的な学術雑誌に掲載されている。以上より、研究は順調に進捗していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに得られた成果により、「多電子移動能」と「結合組み換え能」を有する新規多核クラスター錯体を有効に利活用することで、水や二酸化炭素などを基質とする小分子変換反応系の構築が可能であることが見出された。次年度は、この戦略に基づき新たな多核クラスター錯体の構築ならびに触媒機能評価を引き続き推進し、我々の提唱する多核クラスター錯体触媒の開発戦略の汎用性を拡張する試みを実施する。
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