研究課題/領域番号 |
19H00956
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
外丸 裕司 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (10416042)
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研究分担者 |
三木 健 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (00815508)
山口 晴生 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (10432816)
本郷 悠貴 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 研究員 (20737316)
羽野 健志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (30621057)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2020年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2019年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 珪藻 / ウイルス / ゲノム / ssDNA / ssRNA / 連続培養 / ブルーム / 増殖速度 / 半連続培養 / 代謝産物 / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
珪藻は植物プランクトンの一種であり,その膨大な生産力は豊かな海洋生態系を支える原動力となっている。珪藻は,自身を殺すウイルスが存在しても長期の大増殖を維持することが可能である。その仕組みは未だ謎であるが,一つの仮説として珪藻はウイルス感染に抵抗する術を持ちつつも,分裂不調な細胞をウイルスで速やかに殺し,栄養塩として再利用する可能性が示唆されている。本課題では,海洋珪藻の全く新しい生態戦略「ウイルス感染死を介した珪藻のブルーム維持戦略」を提唱することを最終目的とする。
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研究実績の概要 |
過年度の研究成果により、増殖モデルの計算から培養個体群に占めるウイルス感染率の推定を行う事に成功した。今年度はさらに、培養個体群に占めるウイルス感染細胞の割合を直接的に検出する手法の構築に着手した。ウイルスを接種された珪藻個体群の培養からセルソーターを用いて1細胞ずつ分離し、それら細胞のウイルス感染有無をqPCR法またはPCR法を基に評価した。その結果、培養液から1細胞を分離し、細胞の存在を検出できることが明らかになった。また、プライマーの調整など検出手法に関する技術的検討は残るものの、ウイルス感染したと思われる細胞の検出にも成功した。Chaetoceros tenuissimusの培養実験の結果からは、当該種が様々な形態の有機物をリン源として増殖に利用できる可能性が示され、各種分解系酵素を有しているものと推察された。また、RNAウイルスの感染速度の測定を実施した。RNAウイルスは、感染して殺せる宿主には吸着していく様子が理解できたが、感染して殺せない相手には吸着している事が確認できなかった。これは、RNAウイルスの感染条件として、先ず同種の珪藻であっても株によって吸着の可否が存在することを示唆している。本成果は今後の珪藻・ウイルス関係を考えていく上でも貴重な成果となった。また、連続培養装置についても新規構築を図った。さらにメタボローム解析を用いた実験では、珪藻の細胞培養が定常期に入ると、細胞の糖/アミノ酸比率が劇的に上昇する現象を見出し、その成果を論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
珪藻の半連続培養実験により当初予定していた珪藻の増殖速度とウイルス感染率の関係は、既に増殖・数理モデルによってその関係性が示され論文化された。さらに、ウイルス感染率測定のための直接的手法の開発も実施し、着実に成果を上げつつある。また連続培養の実験装置構築にも着手し、その高度化を試みている段階にある。各種オミックス解析や酵素関連の研究も進行中で近く解析結果をまとめる予定である。さらに、珪藻の代謝産物に関する研究成果は論文として出版された。以上から、本課題は概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
過年度までに進展した研究成果をさらに追求していくための実験を行う。珪藻個体群に占めるウイルス感染率の直接的測定手法の構築においては、技術の高度化を図るためプライマーやプローブの再設計について検討を行う。珪藻のウイルス感染試験においては、感染のごく初期段階における遺伝子発現や生理代謝産物の解析を試みる。また栄養制限時の珪藻とウイルス関係について検討を行う。連続培養系については過年度に構築した装置を無菌状態で稼働させるための改良ならびに操作性の向上を図る。さらに、現場調査を行い既存の様々な珪藻Chaetoceros tenuissimus株に感染するウイルスの分離を試みる。最終的に、本課題を通して得られた実験データを総合し、珪藻とウイルスの生態学的関係性の取りまとめを行う。
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