研究課題/領域番号 |
19H00984
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
樋口 芳樹 兵庫県立大学, 理学研究科, 特任教授 (90183574)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,370千円 (直接経費: 34,900千円、間接経費: 10,470千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2021年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2020年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2019年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
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キーワード | ヒドロゲナーゼ / プロトン経路 / X線結晶解析 / 中性子結晶解析 / 酸素耐性機構 / ラマン分光法 / 酵素活性定量法 / 酸素耐性酵素 / 活性測定法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,下記の研究を行う. (1)標準的[NiFe]ヒドロゲナーゼの中性子結晶解析で得られる核密度分布より,Ni-Fe活性部位における触媒反応のヒドリド結合中間体構造とプロトン経路を完全同定し,反応機構とそれを高効率化しているタンパク質内のプロトン機能「場」の役割を明らかにする. (2)種々の酸素耐性ヒドロゲナーゼの高精度X線結晶解析を基に,酸素耐性機構の一般則を提案する. (3)ラマン分光法による新規の触媒活性定量法を開発し,ヒドロゲナーゼ等ガス状分子を基質とするタンパク質機能の本質に迫る.
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研究実績の概要 |
(1)ヒドロゲナーゼの中性子結晶構造解析:2020年度末に試料調製のための嫌気グローブボックスが故障したが,コロナ禍の影響で部品調達が遅れ,修理が2021年度の夏に完了した.日本原子力開発研究機構・大強度陽子加速器施設(J-PARC)における中性子結晶回折実験のビームタイムの日程に結晶調製を合わすことができず,今年度の回折実験は実施できなかった.一方,昨年見出した「酸化型酵素結晶中のNi-Fe活性部位の構造が歪んでいる分子」について高分解能X線結晶解析による精密化を進展させた.得られたX線構造解析結果は中性子結晶構造解析結果とも矛盾しないことを確認し,現在論文発表準備中である. (2)ヒドロゲナーゼの酸素耐性機構・一般則の確立(分子内の水分子の役割解明): 新規の酸素耐性酵素である,Citrobacter由来[NiFe]ヒドロゲナーゼに競争阻害剤である一酸化炭素(CO)を結合させてX線結晶構造解析を実施した.本結晶解析の結果,酸素耐性とCO耐性には正の相関があることを初めて明らかにして国際結晶学連合の学術誌に発表した. NAD+還元ヒドロゲナーゼは,Ni-Fe活性部位自体が酸素による修飾を防御する分子機構を備えている.このNAD+還元ヒドロゲナーゼの酸化型結晶についてFT-IRによる構造解析を進展させた. (3)ラマン分光法による触媒活性定量法の開発: 昨年までの研究により,酵素と基質(気体水素)の反応は,主に酵素溶液相と気相との界面で起こっていることを見出していた.そこで,本年度は,酵素溶液をエアロゾルにして気相中に浮遊させて酵素触媒反応が測定可能であることを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き,コロナ禍の影響で水素還元型[NiFe]ヒドロゲナーゼの中性子結晶構造解析は進展していないが,酸化型酵素の結晶中に見出した「Ni-Fe活性部位の構造が歪んでいる分子」の精密構造を高分解能X線結晶解析で明らかにすることに成功し,またその結果が中性子結晶解析結果と矛盾しないことを確認した.現在,得られた結果を論文発表準備中である. また,Citrobacter由来[NiFe]ヒドロゲナーゼについて,水素の競争阻害剤である一酸化炭素(CO)を結合させてX線結晶構造解析することに成功し,酸素耐性とCO耐性に正の相関があることを見出した. ラマン分光法による触媒活性定量法の開発では,酵素溶液をエアロゾルにしても触媒活性が測定可能であることを初めて実証した.
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今後の研究の推進方策 |
(1)[NiFe]ヒドロゲナーゼの高分解能中性子結晶構造化学 酵素分子のプロトン経路をH+(またはD+)でラベルした結晶について,高分解能の中性子回折全データの取得を試みる.中性子回折データの取得に成功した場合,同じ結晶からSPring-8にて超高分解能のX線回折データを収集し,中性子およびX線回折データの両方を用いて構造精密化を行い,最終的にプロトン経路を同定する. (2)ヒドロゲナーゼの酸素耐性機構・一般則の確立(分子内の水分子の役割解明) COが活性阻害を起こす場合,Ni-Fe活性部位最近傍の[4Fe-4S]-4Cysの構造変化に対する影響をさらに詳細に検証する.また,酸素感受性の高い標準的酵素に酸素耐性を付与した変異体や酸素耐性酵素からその機能を削除した変異体酵素を調製するための発現系の構築を進める.一方,NAD+還元ヒドロゲナーゼは,Ni-Fe活性部位自体が酸素による修飾を防御する機構や活性酸素種の生成を抑える分子機構を備えている.このNAD+還元ヒドロゲナーゼについて,2021年度に引き続き結晶FT-IRの測定を続ける. (3)ラマン分光法による触媒活性定量法の開発 再現性の高いラマン散乱データを得るために改良した酵素反応セルを用いて本測定方法を確立するとともに,酵素溶液をエアロゾルにした試料を用いて酵素活性を高精度に定量できるか調査する.
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