研究課題/領域番号 |
19H00996
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
林 茂生 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (60183092)
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研究分担者 |
柴田 達夫 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (10359888)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2020年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2019年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | アクチン / 管腔形成 / ショウジョウバエ / ライブイメージング / シミュレーション / ミオシン / DAAM / Zasp / 管形成 / 気管 / 管状上皮 / Rhoシグナル / 細胞極性 / 上皮 / 形態形成 / シグナル / ゆらぎ / ロバストネス / メカノバイオロジー / ERKシグナル / EGF受容体 / 上皮形態形成 / 力学 / 数理科学 |
研究開始時の研究の概要 |
動物組織は細胞が平面上に密に連結して作られる上皮シートを単位として作られている。上皮シートが柔軟に折りたたまれて可塑的に形態を変換させるしくみの理解を目指してキイロショウジョウバエ胚のシート状および管状の上皮組織を対象に研究をおこなう。定量的ライブイメージングと、数理モデル解析を組み合わせることで安定した上皮組織が可塑的にかたちを変えるしくみの背景にある生物学的ゆらぎの役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
発生中の上皮組織は細胞の形態、収縮、運動の状態が細胞自律的な要因でばらつくゆらぎ(ノイズ)の高い状態にある。形態形成が進行するためには細胞のゆらぎ 状態が組織中で統御され、一貫した運動に収束させる必要がある。本研究ではショウジョウバエ胚上皮においてゆらぎを統御する二つのしくみ、分子シグナル と 力学シグナル、について検討する。2022年度は管状上皮の気管におけるアクチンの小集合体(アクチンナノクラスター)が周長方向に等間隔に整列したケーブルに配列する仕組みをの分子機構を追求した。アクチ ンナノクラスターは100nm程度の楕円形の形状で管腔面に接するアピカル細胞膜上で高度に揺らいだ分布を示し、高速で集合離散していた。定量解析の結果、アクチンナノクラスターの極性は管組織の極性化状態を検知して異方的に配向すること、そしてその極性を決める分子(アクチン重合因子、クロスリンカー)を同定した。さらにアクチンナノクラスター同士の融合と安定性にも異方性が検出された。これらの結果はアクチンナノクラスターを最小単位とするアクチンケーブルの編成機構が、高次のアクチンネットワーク形成がボトムアップ的な、創発的な機構で構築されることを示している。これらの知見をもとにしてアクチン分子の動態を再現する分子ダイナミクスシミュレーションを構築した。パラメーターの検討を重ねて現実的なアクチン動態を再現するモデルの構築に成功した。このモデルを利用してアクチン重合因子、クロスリンカーなどの貢献を検討することで各分子の物理的な貢献をあきらかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではアクチンマーカーの高速ライブイメージングデータを取得し、その動態を定量化する様々な手法を開発した。その結果、楕円形を示すアクチンナノクラスターの方向(極性)に偏りがあり、アクチンケーブルの方向と対応していることが分かった。さらにこの極性化にはアクチンケーブル形成に関わる重合因子DAAMと、クロスリンカーZasp51が必要とされることが判明し、アクチンナノクラスター自体が組織の極性を検知し、それに沿って配列する最小のユニットであることが判明した。従来の考え方は管の縦方向と周長方向に配列する細胞境界に作用する力には管の形状を反映して違いがあり、この違いが細胞境界付近の極性シグナル(Rhoシグナル)を活性化することで細胞全体に極性情報を伝播させるトップダウンの考え方である。これに対して我々の新しいモデル(ボトムアップ)は細胞境界の存在を前提とせず、1細胞レベルの極成果にも対応できるより幅広い可能性を持つモデルとして汎用性が広いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
アクチンナノクラスター集合と配列の分子シミュレーションの改善を目指す。これまでの研究でナノクラスター集合と異方的な配向に関して現実的なシミュレー ションを行う事に成功した。我々はアクチン重合因子、アクチンクロスリンカー、モーター分子、などを欠損する変異体においてアクチンの集合状態が散在、迷 路型、繊維の配向が縦から横へ変化、など様々なパターンに変動する事を見出している。実際のアクチンの動態を正常組織とアクチンナノクラスターの挙動異常をきたす各種変異体において定量比較し、各分子の貢献がシミュレーションパラメーターのどの部分に及ぼすのかを検討する。これによりシミュレーションをより現実に近いものへ改善を図ることができる。以上のデータを合わせて研究を強化する。
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