研究課題/領域番号 |
19H00999
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小島 茂明 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20242175)
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研究分担者 |
藤尾 伸三 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (00242173)
大越 和加 東北大学, 農学研究科, 教授 (20233083)
狩野 泰則 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20381056)
下村 通誉 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (30359476)
藤田 敏彦 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 部長 (70222263)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2021年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2020年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2019年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
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キーワード | 海溝 / 海山沈み込み / 底生生物 / 遺伝的分化 / 種分化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、深海底において生物進化を支配する主要な要因は何かを3つの時空間スケールで解明することである。日本海溝と千島海溝の深海域および超深海域で小型底生動物優占種の深度勾配に沿った個体群の遺伝的分化を解析し、分化をもたらす主要な環境要因を特定すること、海山の沈み込みにより分断されたこれら二つの海溝間における生物の分化過程を明らかにすること、および北西太平洋の他の海溝との間の交流、分断、分化の歴史を明らかにすることを行う研究である。
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研究実績の概要 |
東京大学大気海洋研究所や国立科学博物館に保管されている過去の航海の底生生物標本から、日本海溝・千島海溝および周辺海域の標本を選別・整理し、情報をデータベース化する作業を継続し、新種記載をおこなった。 令和4年9月30日から10月17日に学術研究船「白鳳丸」の研究航海を実施し、千島海溝周辺の6測点と日本海溝周辺の7測点で底生生物を採集した。また、日本海溝と千島海溝を隔てている襟裳海山の日本列島側およびその反対側の斜面および相対する海溝斜面の水深5000m台の海底計4か所に令和2年度に襟裳海山周辺に設置した超音波流速計(RCM11およびAquadopp)、MicroCAT(CTD)をとりつけた係留系4基を回収し、約2年間の海洋環境データの取得に成功した。周辺海域でCTD-RMS、LADCPおよび乱流計による海洋環境観測と採水をおこなった。 令和5年3月に大学院生1名をハンブルグ大学のAngelika Brandt教授の研究室に派遣し、ドイツの研究船「SONNE」によるアリューシャン海溝航海で採集された標本を用いた共同研究をおこなうとともに、次年度の白鳳丸航海の準備をおこなった。 ロシアのウクライナ侵攻に伴う油価高騰のために延期された「白鳳丸」の研究航海の後半を令和5年9月12日から10月2日に実施し、南部千島海溝10測点および日本海溝の最北部18測点と中央部1測点で4mビームトロール、3m Agassiz 型ビームトロール、深海用そりネットによる底生生物採集をおこなった。また、9測点でCTDおよびLADCPによる物理環境測定をおこなった。深海堆積物中の微生物およびタービダイト分布を調査するため、4測点でマルチプルコアラー採泥器による堆積物の採集をおこなった。 両航海で得られたデータおよびサンプルの解析が乗船研究者および陸上協力者により進められており、成果が順次公表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年に予定されていた「白鳳丸」の40日間の研究航海のうち、20日分が令和5年に延期されたが、無事に実施でき、両航海を合わせて当初計画された全ての調査や生物採集をおこなうことができた。個体数の多い自由生活性線形動物や水深5000mより浅い測点の軟体動物を除いてサンプルリストが完成しており、その件数(同じ測点で採集された同じ種またはそれに準ずる分類単位に同定された個体をまとめて1件と数える)は海綿動物門9件、刺胞動物門178件、紐形動物門56件、扁形動物門17件、輪形動物門1件、軟体動物門536件(単板綱3件、溝腹綱1件、尾腔綱31件、掘足綱28、二枚貝綱286件、腹足綱179件、頭足綱8件)、環形動物門(旧ユムシ動物門、星口動物門を含む)595件、線形動物門158件、動吻動物門13件、鰓曳動物門3件、節足動物門1534件(ウミグモ綱16件、カイアシ亜綱6件、等脚目409件、アミ目2件、クーマ目193件、タナイス目162件、端脚目693件、ワラジムシ目13件、蔓脚下綱1件、十脚目39件)、棘皮動物門467件(ウミユリ綱6件、ウニ綱33件、ナマコ綱259件、ヒトデ綱61件、クモヒトデ綱108件)、半索動物門4件、脊索動物44件にのぼる。研究協力者と本研究課題で雇用された特任研究員による小型甲殻類であるカイアシ類の新種記載論文1編が既に受理されているほか、乗船研究者および陸上協力者による系統分類研究が進められており、成果が順次公表される予定である。令和4年の「白鳳丸」航海で深海係留系4基を無事に回収することができ、約2年間の深海流の計測データを取得する事に成功し、解析が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、日本周辺の深海域および超深海域で採集され、国立科学博物館、東京大学大気海洋研究所を始めとする多くの研究機関に保管されている標本の情報を整理し、必要に応じて分類学研究者と協力して分類学的再検討をおこなう。特に三陸沖の深海域で採集された底生生物について、研究代表者の未発表データと標本を整理して情報をデータベース化して公開する。学術研究船「白鳳丸」研究航海で日本海溝・千島海溝周辺海域で採集された多様な動物群の深海底生生物標本の形態観察および分子系統学・系統地理学的解析をおこない、小型底生動物優占種の深度勾配に沿った個体群の遺伝的分化を解析して、分化をもたらす主要な環境要因を特定する。また、両海溝域間の種組成や近縁種および同種集団の遺伝的分化の有無を解析し、分化が見られたものについて分布水深から海山の沈み込みにより分断された年代を算定し、分子進化速度を推定する。超深海産深海底生生物の進化における海山の沈み込みの役割について考察する。必要に応じて分類学研究者と協力して分類学的再検討をおこない、未記載種について新種記載を進める。Senckenberg Museum(ドイツ)研究部長のBrandt博士との共同研究により北西太平洋の他の海溝域に分布する深海底生生物との比較により、本海域における深海生物の分散と進化の過程を明らかにする。研究航海で得られた深海流および環境データや海洋環境計測結果を総合し、日本海溝と千島海溝の間の海流を定量化し、深海底生生物の浮遊幼生の海溝間の分散を推定する。北西太平洋の深海底生生物の地理分布、系統進化および種内の遺伝的分化について、得られた結果をとりまとめ10th International Crustacean Congress、国内学会、シンポジウムなどで発表を行うとともに学術論文を投稿する。
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