研究課題
基盤研究(A)
破骨細胞の定義は「骨を壊す細胞」である。教科書的には、この細胞には「良い働き」と「悪い働き」があり、良い働きとしては、これが古い骨を吸収することで骨芽細胞による骨新生を促し、恒常的なリモデリングが維持されることが挙げられ、一方で関節リウマチなどではこの細胞が働きすぎることで骨が破壊されるという悪い働きがあるとされてきた。しかし、本研究者は両者が顕著に異なることに気がつき、より本質的に異なるものではないかという仮説を立てた。本研究ではこの仮説の下に、「悪玉」破骨細胞のみを特異的に同定し、これを徹底的に抑制する新しい治療法開発を行う。
正常の骨代謝ではなく、関節炎などでの病的骨破壊を担う、炎症性「悪玉」破骨細胞(inflammatory osteoclast: iOC)とその前駆細胞(iOCP)の同定を目指す本研究では、当該年度においてiOCPの標識リポーターの作成や、それをin vivo内で観察するためにiOCPの分化誘導のためのニッチ環境のリポーター系の作出を行ってきた。またiOCPの分化誘導を制御する分子機構の解明についてもシングルセル解析をはじめとした解析に向けて準備を進めてきた。これらについてはいずれもまだ着手したばかりの段階であり,様々なツールの準備や予備的解析が得られた段階であり、まだ公表できる段階の確固とした成果としては得られていないが、いずれの成果も本研究提案をさらに発展させた形として遂行を計画している、基盤研究Sに速やかに移行されている。一方で、本計画段階からすでに予備的に見出していたiOCPの細胞実体,およびその分化制御に重要な役割を担う転写因子FoxM1の機能については、当該研究期間に追加の解析を行うことにより、学術論文として採択されることになった。本研究成果は今後のFoxM1などのiOCP特異的分子を標的とした新たな創薬研究に向けての重要な基礎的知見となっている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nat Immunol.
巻: 20 号: 12 ページ: 1631-1643
10.1038/s41590-019-0526-7
http://www.icb.med.osaka-u.ac.jp/index.html