研究課題/領域番号 |
19H01053
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧島 秀樹 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40402127)
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研究分担者 |
村松 秀城 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (00572570)
前田 高宏 九州大学, 医学研究院, 教授 (00791972)
宮崎 泰司 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (40304943)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2020年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2019年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 骨髄不全症候群 / 再生不良性貧血 / 発作性夜間血色素尿症 / 骨髄異形成症候群 / ゲノム解析 / 胚細胞性変異 / 体細胞性変異 / クローン性造血 / 急性骨髄性白血病 / 胚細胞変異 / 体細胞変異 / 悪性リンパ腫 / HAVCR2 / DDX41 |
研究開始時の研究の概要 |
骨髄不全症は、骨髄幹細胞の低形成に起因し、輸血や造血幹細胞移植を必要とする難治性疾患である。われわれは、後天性の遺伝子異常のみならず(Yoshizato et al. N Engl J Med. 2015)、先天性の胚細胞変異が、予想以上に高頻度に高齢発症の骨髄異形成症候群において陽性であることを明らかにした(Polprasert et al. Cancer Cell. 2015)。そこで、骨髄不全症においても常識をくつがえす胚細胞異常が認められる可能性を考え、関連する体細胞変異を来す原因を明らかにし、骨髄不全症の生涯発症リスクの推定、および予測モデルの構築を可能とし、予防の可能性を提案する。
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研究実績の概要 |
骨髄不全症のうち急性骨髄性白血病への進展を最も効率に起こす予後不良な疾患は骨髄異形成症候群である。研究代表者は分担者と共同で骨髄異形成症候群における胚細胞変異および体細胞変異を網羅的に解析することにより、様々な遺伝子変異のうち、DDX41変異が最も高頻度に認められることを明らかにした。2万例以上の遺伝的背景を一致させた我が国のバイオバンク登録の健常者の解析と併せることにより、これまで不明であった先天性のリスクについて正確に定量することが可能となった。それにより、我が国における先天性の骨髄異形成症候群の原因のアレルが明らかとなり、さらにはそのキャリアーにおける将来の骨髄腫瘍発症リスク(浸透率)を世界で初めて算出した。DDX41胚細胞変異が陽性の骨髄異形成症候群は血球減少や骨髄不全症が特徴であるが、一方で変異陰性例に比較して有意に白血病進展頻度が高い傾向にあった。しかも、ナンセンスとフレームシフトのアレルは白血病化に関連していたが、ミスセンスアレルはその傾向を示さないことも解明された。さらには、セカンドヒットの体細胞変異は半数以上の症例で認めたが、そのほかにCUX1やGNASなどの体細胞変異が選択されていたが、これまで白血病化に関連し予後不良因子であるFLT3やNRASの変異をDDX41変異例に認めず、よってDDX41変異例は白血病化を起こしやすいにも関わらず予後が良好であることも明らかとなった。DDX41変異例は脱メチル化薬を投与されると予後良好な傾向を認めており、その傾向は造血幹細胞移植を受けた症例においても同様に認められた。以上から、本研究により、骨髄不全症のもっとも予後不良な病型である骨髄異形成症候群における最大の先天性リスクについてこれまで不明であった遺伝学的背景や病理学的・臨床的所見を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
骨髄不全症における胚細胞変異および体細胞変異の病態への関与を明らかにするため、これまで構築した国際ネットワークを通じて多くの検体および臨床情報を収集した。特に、再生不良性貧血から進展することもある骨髄異形成症候群は、骨髄不全症のうち最も高頻度に急性骨髄性白血病への進展をひき起こす予後不良な病型である。そこで骨髄異形成症候群における胚細胞変異に基づく先天性リスクを網羅的に解析することにより、様々な遺伝子のうち、DDX41の胚細胞変異が最も高頻度に認められることを明らかにした。そこで、それぞれのDDX41変異について、2万例以上の遺伝的背景を一致させた我が国のバイオバンク登録の健常者の解析結果と比較することにより、DDX41変異のリスクはおよそ10倍であると算出した。以上から、我が国における先天性の骨髄異形成症候群のリスクアレルが初めて明らかとなり、さらにはそのキャリアーにおける将来の骨髄腫瘍発症リスク(浸透率)を計算したところ、90歳までにおよそ半数の方が発症することが明らかとなった。これは家族にDDX41変異陽性患者が発生した場合に偶発的に変異が陽性と診断される健常者にとって極めて重要な情報である。また、病理学的にDDX41胚細胞変異陽性の骨髄異形成症候群は血球減少や骨髄不全症が特徴であること、一方で変異陰性例に比較して有意に白血病進展頻度が高いことも解明した。遺伝学的には、セカンドヒットのDDX41体細胞変異が半数以上の症例で認められるほか、CUX1やGNASなどほかの症例ではまれな体細胞変異が選択され、これまで白血病化に関連し予後不良因子である変異はDDX41変異例にはきわめてまれであった。DDX41変異例は白血病化を起こしやすいにも関わらず予後が良好であることと、これら遺伝学的な特徴との関連が示唆された。また、臨床的にDDX41変異例には脱メチル化薬が有効であった。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄不全症における胚細胞変異および体細胞変異の病態への関与を明らかにするため、これまで構築してきた国際共同研究ネットワークを通じて9000例以上の検体および臨床情報を収集してきた。このコホートでは広く全エキソンシーケンスおよび標的シーケンス解析が行われ、上記進捗状況に記載した通り、これまで課題であった予後不良な骨髄不全症である骨髄異形成症候群において原因責任遺伝子異常と正確な発症リスクおよび臨床経過との関連を明らかにしてきた。そのなかで課題となったのは遺伝子異常の機能的な解明および臨床的な意義であり今後以下に関して明らかにしていく。 昨年度までの研究成果を踏まえ、骨髄不全症の発症・病型・予後などに関わる胚細胞性変異および体細胞性変異の検索・検証を引き続いて行う。特に、機能的な側面から胚細胞性変異に引き続いて獲得される体細胞性変異のパターンに関して、小児および成人における症例を網羅的に解析する。具体的には、標的シーケンス・全エクソームシーケンス・全ゲノムシーケンスにより、これまで重要とされているドライバー変異に合併する遺伝子異常を明らかにするのみならず、新規に合併するドライバー遺伝子の検索を行う。当初より計画したごとく、すでにマウスモデルを用いた解析、エピゲノム解析、機械学習を駆使した統合的な解析を行って、骨髄不全症に関する未知の発症メカニズム解明および新規治療法開発につながる成果が得られており、DDX41などのゲノム異常から派生する下流の病的異常についても引き続き機能解析を行う。以上により、骨髄不全症の原因・治療効果・生存期間などに関わるバイオマーカーの候補を胚細胞性変異・体細胞変異およびそれらの組み合わせの中から抽出しその意義を検証する。
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