研究課題/領域番号 |
19H01079
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20186993)
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研究分担者 |
安田 周祐 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10643398)
堀中 真野 (友杉 真野 / 堀中真野) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80512037)
鈴木 孝禎 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (90372838)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
2023年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2022年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2020年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2019年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | 先制医療 / テーラーメイドがん予防 / がん体質診断 / リ・フラウメニ症候群 / 家族性大腸腺腫症 |
研究開始時の研究の概要 |
昨今の分子生物学的研究の進歩により、発がんの原因を標的とした抗がん剤を用いた治療法に関しては、長足の進歩をとげることができた。しかしながら、治療薬が極めて高額であることから、国家財政が大きく圧迫されている。一方、種々の疾患の発症リスクが遺伝子診断により容易に判明できるようになったものの、それらの発症を予防する、いわゆる「先制医療」の研究は国際的にも極めて遅れている。今回の研究では、私達が四半世紀にわたり行ってきた、がん体質の方々に対する先制医療の研究の集大成として、実践的ながんの個別予防法(テーラーメイド予防法)の確立に向けた基礎的研究を完成させたい。
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研究実績の概要 |
近年、個別に疾患のリスクを遺伝子診断し、個々が発症する前に予防介入を行う「先制医療」が、国策としても極めて重要であることが叫ばれ始めた。研究代表者らは、約25年も前から、がんのハイリスク集団に対するテーラーメイド予防研究を行ってきた。本研究課題では、「家族性大腸腺腫症」と「リ・フラウメニ症候群」の未発症変異保有者の発がんリスクの軽減を目標に、今までの実績を基に、その集大成として、実際にがんの先制医療を可能とする基礎的研究を完成させたい。 まず、発がん抑制に重要ながん抑制遺伝子であるRBに着目し、RB活性化作用、抗炎症作用を有する食品成分の文献調査を行った。遺伝的にがん抑制遺伝子APCが失活している「家族性大腸腺腫症」の未発症変異保有者に対する先制医療研究として、文献調査で選定してきた食品成分、すなわち「がん予防カクテル候補成分」を、APC遺伝子に変異を有するヒト大腸がん細胞株SW480に投与し、細胞の増殖抑制効果を測定し、その情報を収集してきた。 新たな「がん予防カクテル候補成分」の細胞増殖抑制効果を継続して検証しつつ、MEK阻害剤トラメチニブと、これら候補成分の併用効果の検証試験を行った。トラメチニブは、がん細胞の異常増殖に寄与するMEKの機能を阻害することで、がん細胞内の増殖シグナルを強力に抑制することができる画期的分子標的薬であり、本研究課題の研究代表者が製薬企業との共同研究により見出し、上市に至った薬剤である。トラメチニブ単剤投与に対し、上記「がん予防カクテル候補成分」とトラメチニブとの組み合わせによる相乗効果について検証を行った。その結果、トラメチニブの併用時に細胞周期停止増強効果、アポトーシス誘導増強効果を有する複数の化合物を見出した。これらの化合物とトラメチニブとの併用効果において重要な働きを有する分子の探索を行い、複数の候補分子を見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『がん予防カクテル』の候補成分から、MEK阻害剤トラメチニブとの併用により相乗的にヒト大腸がん細胞SW480の増殖抑制効果を示す複数の化合物を見出すことができた。現在、トラメチニブとこれらの化合物の併用により認められる細胞周期停止増強効果の機序について解析を進めており、いくつかの候補分子が見つかっている。また、トラメチニブとこれらの化合物の併用による細胞死増強効果に関する知見も明らかにしつつあるが、全体的には当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
APC失活ヒト大腸がん細胞SW480を用いて、MEK阻害剤トラメチニブと、スクリーニングで得られた『がん予防カクテル』候補成分との併用効果に関して、がん細胞増殖抑制能、細胞周期停止能、細胞死誘導能、抗炎症能等の評価やその機序について明らかにしていく。SW480以外のAPC失活ヒト大腸がん細胞に対する併用効果についても調査を進める。機序が明らかになれば、家族性大腸腺腫症モデルマウスであるAPCminマウスを用いて腸腫瘍の発生抑制効果を検討する。さらに、正常細胞との比較試験によるがん細胞特異的作用も検証する。 次に、遺伝的にがん抑制遺伝子p53が失活している「リ・フラウメニ症候群」の未発症変異保有者に対する先制医療研究として、p53失活がん細胞を用いて、p53の機能を代償する遺伝子群の発現を上昇させる食品成分の組み合わせの検証を行う。経口摂取可能なHDAC特異的阻害剤であるボリノスタットに加えて、上述のスクリーニングの結果より得られた『がん予防カクテル』との併用を検証する。得られた候補カクテルに関しては、正常細胞との比較試験によるがん細胞特異的作用の有無を検証する。並行して経口摂取可能な新規のHDAC特異的阻害剤の創製研究も行う。
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