研究課題/領域番号 |
19H01093
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
本田 学 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 部長 (40321608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2021年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2020年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2019年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | 脳・神経 / 神経科学 / 情報科学 / 精神・神経疾患 / 健康増進 / 生活習慣病 / 糖尿病 / 超高周波音 / ストレス / 耐糖能 / 依存症 |
研究開始時の研究の概要 |
脳は化学物質によって作動する臓器の一つであり、その情報処理過程も化学反応であることから、脳では「情報と物質の等価性」の原理が成り立つ。こうした認識のもと、研究代表者らは物質的側面から脳病態にアプローチする従来医療を補完する新しい健康・医療戦略として、情報処理の側面から脳の健康にアプローチする〈情報医療〉を提唱し、その方法論の確立と有効性の検証を進めてきた。本研究は、情報環境エンリッチメントがもたらす生体への効果と作用機序を、齧歯類を用いた基礎研究と、健常者および精神・神経疾患を対象とする臨床研究とを統合した実証研究によって明らかにすることを通して、〈情報医療〉の体系化を目指す。
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研究実績の概要 |
自然環境音に含まれる人間の耳に聴こえない超高周波が、内受容感覚や自律神経系と密接な関係のある耐糖能におよぼす影響を、糖尿病の標準的な検査法である経口ブドウ糖負荷試験をもちいて検討した。糖尿病の治療を受けていない健康な研究参加者25名を対象として、以下の3つの異なる音条件のもとで経口ブドウ糖負荷試験を実施した。1.超高周波を豊富に含む自然環境音(Full-range sound; FRS)、2.同じ自然環境音から20kHz以上の超高周波を除外した音(High-cut sound; HCS)、3.暗騒音のみ(No sound; NS)。標準的な経口ブドウ糖負荷試験の手順に従って、75グラムのブドウ糖を含む溶液を飲んだ後、15分ごとに2時間血糖値を計測し、音条件の違いによってブドウ糖負荷後の血糖値上昇がどのように変化するかを調べた。 その結果、超高周波を豊富に含む自然環境音(FRS)を聴いている時には、全く同じ音から超高周波だけを取り除いた自然環境音(HCS)を聴いている時や、暗騒音のみの時(NS、通常の検査環境)と比較して、ブドウ糖を摂取した後の血糖値の上昇が顕著に抑えられることが明らかになった(反復測定分散分析による音条件主効果P = 0.000012, FRSとHCSの比較 P = 0.000012, FRSとNSの比較 P = 0.0018)。加えて、超高周波を含む音による血糖値上昇の抑制効果は、年齢の高い人やHbA1cの高い人(日常的に血糖値が高めの人)など、糖尿病のリスクが高い人でより顕著に認められた。 今回の発見は、音や光といった感覚情報が脳神経系を介して治療効果や予防効果をもたらす〈情報医療〉を切り拓くものであり、物質医療ではアプローチすることが難しい領域の治療を補完することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験室実験については、おおむね順調に進展しているが、認知症行動・心理症状を対象とした臨床研究は、コロナ禍の影響を受けて、当初実施を予定していた施設での研究ができなくなったため、新たに研究協力機関を探すところから再開しており、1年間の遅れが見られたため、繰越申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
・健常者を対象とした情報環境エンリッチメントの作用機序の解明 自然環境音の超高周波成分が自律神経系に及ぼす影響を、心拍変動、皮膚温、皮膚伝導度、呼吸などのマルチモーダル計測を用いて明らかにする。 ・精神・神経疾患を対象とした情報環境エンリッチメントの臨床効果の検証 前年度に実施した自然環境音の超高周波成分が健常者の耐糖能に及ぼす影響の検討に加えて、長期間のエンリッチメントが糖尿病患者、高血圧症患者、高脂血症患者の疾患の病勢に及ぼす影響を明らかにする。加えて、民間の認知症ケアハウスの協力を得て、認知症行動・心理症状に対する情報エンリッチメントの影響を明らかにするための臨床研究を継続実施する。
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