研究課題/領域番号 |
19H01119
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
中内 茂樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00252320)
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研究分担者 |
伊村 知子 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (00552423)
松井 淑恵 豊橋技術科学大学, 次世代半導体・センサ科学研究所, 教授 (10510034)
白井 述 立教大学, 現代心理学部, 教授 (50554367)
Shehata Mohammad 豊橋技術科学大学, 次世代半導体・センサ科学研究所, 准教授 (60444197)
日根 恭子 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70625459)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2020年度: 16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2019年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
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キーワード | 選好 / 普遍性 / 多様性 / 統計的レギュラリティ / 発達 / 社交性 / 反応バイアス / テンポ / 選考 |
研究開始時の研究の概要 |
事物等に対してヒトが感じる選好を「経験・学習によって獲得された、感覚刺激の統計的レギュラリティに対する潜在的認知バイアス」と捉え、選好における普遍性および多様性を統一的に説明することを目的とする。発達を認知バイアスの形成過程として、熟達を専門的トレーニングによる認知バイアスの変容として捉え、一般成人および幼児・小学生や専門家を対象とした視聴覚実験を通して発達・熟達が選好に与える影響を分析するとともに、文化要因を排除したうえで選好の進化要因を探るため、チンパンジーを対象とした視聴覚実験を実施する。さらに、好まれる絵画・楽曲等に共通した普遍特徴(統計的レギュラリティ)を機械学習を用いて同定する。
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研究実績の概要 |
選好に関する認知特性について、以下に示す内容を実施した。1) 絵画配色に対する選好に関し、大規模オンライン実験から得られた選好データと絵画の色彩統計量との関係、および自然風景の色彩統計量の関係について、重回帰分析を実施し、特定の色彩統計量が選好に関与していることを明らかにした。2) 音楽のテンポ選好に関し、心理物理実験を実施し、得られたデータについて分析を行い、テンポ選好の個人差における記憶の関与を検討し、選好の個人差の要因として記憶が関与している可能性を示した。3) 複数のピッチが同時に聞こえる重唱歌唱において、被験者の歌唱ピッチと、それ以外の音のピッチの音程によって、歌唱者の発声のピッチにどのように影響が生じるかを確認する実験を実施するとともに、個人差に対して、楽曲に含まれる特徴が系統的に与える影響を調査した結果、聴覚におけるオクターブ伸長現象の影響により、オクターブの音程条件で特に歌唱者のピッチが下がる傾向がみられた。4) ヒトの視覚的不快感の発達とその進化的基盤を明らかにするため、昨年度に引き続き、ハスの花托や蜂の巣といった穴の集合体に対する不快感、すなわち集合体恐怖に影響を及ぼす要因ついて検討した。成人および4-9歳児を対象に、オンライン実験をおこない、集合体に対する嫌悪感や、集合体構成要素の数・大きさ・重畳が、集合体に対する不快感に及ぼす影響にについて調べた結果、4, 5歳頃から集合体画像に対する不快感が生じることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1) 絵画配色に対する普遍的な選好は、絵画特有の色彩統計量に基づいており、それらは自然風景に似ているというmatching-to-nature仮説とは反するものであることが分かった。2) 音楽のテンポ選好と同様に、音楽の記憶にも同様の個人差が認められ、選好の個人差を生み出す要因の一つとして記憶が関与している可能性を明らかにした。3) 歌唱者に特定のピッチを歌唱させる間、異なるピッチを聞かせることによって、2つのピッチによるハーモニーが発生する設定で歌唱者のピッチの変動を測定した。その結果、歌唱経験を積んでいない被験者はターゲットピッチに発声を合わせることが難しいために個人差が大きく現れた。ターゲットピッチに合わせる時間を設けるなど、個人差を低減する方法で実験を進めたところ、1オクターブである+12半音の音程条件でとくに歌唱者のピッチが下がる傾向があることが確認できた。聴覚におけるオクターブ伸長現象が関係していると考えられる。4) 集合体画像への評価反応をオンライン実験により調べたところ、4,5歳頃から集合体画像に対する不快感が生じることが確かめられた。さらに、成人と4-9歳児を対象に、集合体の構成要素の個数や重なりが嫌悪感に及ぼす影響についてオンライン実験により検討調べたところ、6歳以降になると、成人と同様に、集合体の要素の個数や重なりの増加に伴い、嫌悪感が増加することが明らかになった。チンパンジーを対象に集合体画像と中性画像に対する注視反応を計測し、解析をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
1) 絵画の配色選好に関して、色相回転による相対評価から個別の絵画に対する絶対的な評価へ対応していく。2) 音楽聴取時の身体の役割を検討するため、生理指標も取得する心理物理実験を実施する。3)歌唱実験は歌唱者の経験によって大きく結果が変動すること、また、1オクターブの音程ではとくに歌唱者のピッチが変化することが明らかになった。この実験結果の原因をより詳しく調査し、歌唱という自発的な行為が聴覚刺激によってどのように変動させられるかという観点から、より一般的な議論を行いたい。また、コロナウイルスの感染状況が落ち着けば、プロの歌手を対象に同様の実験を行い、同様にプロの歌手を対象とした先行研究の比較を行う。4) 集合体恐怖の発達については、得られた結果を論文にまとめて投稿する予定である。また、集合体画像に対する回避反応の種を越えた普遍性を探るため、チンパンジーを対象とした実験を継続する。
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