研究課題/領域番号 |
19H01157
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
綿貫 豊 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (40192819)
|
研究分担者 |
依田 憲 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10378606)
石塚 真由美 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (50332474)
力石 嘉人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50455490)
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2021年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2020年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2019年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
|
キーワード | 海洋環境 / 海洋重要海域 / バイオロギング / 安定同位体比 / 残留性有機汚染物質 / 海洋汚染 / 水銀 / POPs / 栄養段階 / ストレス指標 / 残留性汚染物質 / 海洋生態系 / 生体影響 / 生態影響 / 安定同位体 / 環境化学 / 海洋生態系変動 / ストレス / リスクマップ / 汚染リスク |
研究開始時の研究の概要 |
大気・海流により拡散する汚染物質は深刻な問題である。しかし,従来の手法による広範囲の汚染物質測定は現実的ではない。海鳥は生物学的ホットスポットで採食し,食物連鎖により汚染物質を体組織に濃縮して繁殖地に戻る。本研究は,海鳥の多数個体の移動を通年追跡し、その体組織の汚染物質濃度を個体の利用場所に関連づけることで生物多様性・資源保全に資する,広域スケールの汚染マップを作る。
|
研究実績の概要 |
本研究は、バイオロギングで海鳥多数個体を通年追跡し、集中利用場所(生物学的ホットスポット)を求め、各個体の集中利用場所に追跡した個体の体組織中の栄養段階で標準化した汚染物質濃度をひも付けて汚染マップを作成することが狙いである。本年度は、新潟県粟島で、昨年度再捕獲できなかった35個体と昨年度新規装着の100個体のうち、79個体を再捕獲し、ロガーのデータと組織標本を得た。羽根の水銀濃度、安定同位体比(綿貫)、一部の尾羽根のコルチコステロン濃度(石塚)、アミノ酸別安定同位体比(力石)の測定を行なうとともに、尾脂腺ワックスのPOPsの分析(高田)、繁殖期の本種の追跡と血液のストレスホルモンの分析を行った(依田)。その結果、まず、1)育雛期の血球とその時伸長中だった体幹部の羽根の水銀濃度の測定や各羽根の全水銀濃度を測定結果から、本種でも羽根の水銀濃度はその羽が伸びているときの血中水銀濃度と平衡していること、メスは産卵によりより多く水銀を排出する可能性があること、水銀取り込みと排出が尾羽伸長期にはおよそ釣り合っていることがわかった。次に、2)より多くのサンプルを加えることで、尾羽根の水銀濃度は南シナ海越冬個体で高い傾向がはっきりした。アミノ酸別安定同位体比からは3つの越冬海域でオオミズナギドリの栄養段階には差がないことが明らかとなり、南シナ海越冬個体の水銀濃度が高いのは環境中の水銀濃度が高いことが原因であることがわかった。また、尾脂腺ワックスのDDTsについて、南シナ海越冬個体が北ニューギニア越冬個体よりも有意に高濃度であった。尾羽根のコルチコステロン濃度、尾羽根の傷から見たストレス指標、繁殖成績は越冬海域の異なる個体の間に差はなく、またこれらと水銀濃度との関係も明瞭ではなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジオロケーター装着回収及び組織サンプル取得は予定通り進んでいる。この種のこの越冬海域の結果については、栄養段階による標準化の必要性は予想したよりは大きくはないことから、水銀汚染の地図化は比較的容易であろうと思われる。当初の計画にはなかったが、2年連続追跡した個体のデータから、同じ越冬海域を繰り返し使うこと、同一個体であっても、越冬海域から戻ってすぐ後の5月に捕獲した年は、繁殖期終了間近のの9月に再捕獲したに年比べ、全ての個体で、その個体の尾腺ワックス中POPs濃度が減少していたなど、新しい発見もあった。
|
今後の研究の推進方策 |
追加の野外調査を行うとともに、研究取りまとめを進め、成果発表を行う。昨年度の野外調査でも再捕獲できなかった個体からジオロケーターを回収し、羽根や尾脂腺ワックスなどを採取し、その追加の化学分析を実施する。まず第1に、こうして得た多数個体のデータから、羽の水銀濃度と尾脂腺分泌油脂成分(ワックス)のPOPsの関係や連続して2年分のデータが得られた個体の汚染物質濃度の年間の関係などを分析し、海鳥を使った広域汚染マップ作成における、これまで明らかになっていなかった留意点を探る。次に、全個体について着水記録から越冬期における換羽場所を推定できないか試みる。3番目として、各個体の越冬場所に尾羽の水銀濃度を紐付け、水銀汚染のマップを完成させる。これまでの本研究により、尾羽のバルク窒素安定同位体比はその水銀濃度と弱い正の相関があることがわかっているので、さらに、尾羽のバルク窒素安定同位体比を仮の栄養段階指標として、補正された水銀汚染インデックスによりマップを修正する。その後、一部の個体について分析したアミノ酸別の窒素安定同位体比を使って、真の栄養段階を計算し、それとの関係を精査することで、精度の高い標準化の手法を探る。このように、汚染マップを完成させた上で、羽根の水銀濃度とストレスホルモン濃度及び巣立率の関係を解析し、ストレス度のマッピングをおこなう予定であるが、水銀濃度とストレス度や繁殖成績には関係がなさそうなことが分かってきたので、汚染度から説明できるマップにはならないと予想している。最終年度は、尾脂腺分泌油脂成分(ワックス)と皮下脂肪のPOPsについても、個体間の差から、複数の越冬海域間の汚染度の違いを推定し、粗い空間スケールでのマップを作成する。これらの成果を関連学会会議で発表するとともに、取りまとめのシンポジウム(PICES、海洋学会など)を開催する予定である。
|