研究課題/領域番号 |
19H01164
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米田 稔 京都大学, 工学研究科, 教授 (40182852)
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研究分担者 |
福谷 哲 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (00332734)
瀬戸口 浩彰 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70206647)
原田 浩二 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80452340)
高橋 知之 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (80314293)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2022年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2021年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2020年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2019年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | radiocesium / forest / decontamination / feasibility / model / 放射性Cs / 森林除染 / 実現可能性 / 天地返し / 線量削減モデル / 川内村 / 健康影響 / 生活パターン |
研究開始時の研究の概要 |
福島第一原発事故で放射能汚染された地域の復興では、森林活動の復活が欠かせない。本研究では、実際に被災した村が考える森林を活用した復興のあり方を実現するための知識の普及、技術の確立、村有林等を対象としてモデル事業を実施した場合の有効性の検証を行う。その研究内容は大まかには以下に分類される。 1.森林を活用した住民の生活時間パターンの把握とそのパターン毎の被曝量評価 2.現地での天地返し法を主たる除染法とした線量削減効果の評価 3.様々な健康リスクを考慮した森林活用健康生活モデルの提案 4.村有林を対象としたパイロット除染事業の可能性検討と効果の予測 これらの研究を実施し、帰還地域の復興加速化に貢献する。
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研究実績の概要 |
森林を中心とした生活時間パターンを把握し、合理的被ばく管理手法を構築するため、2019、2020年に実施した個別訪問による住民アンケート結果について、年齢別、職業別などのより詳細な解析を行った結果、追加外部被ばく線量の平均値は平常時の追加公衆被ばく限度である1mSv/yearを下回っているが、回答者個人の差は大きく、1mSv/yearを上回る個人も存在することを明らかにした。 昨年度からの継続で、天地返し法を主たる除染法として森林除染を実施した場合の線量低減効果を、点減衰核積分法による数値シミュレーションで解析する方法を改良した。樹木の吸い上げによるCsの循環も考慮したが、樹木の吸い上げが空間線量に及ぼす影響は微少であることなどを明らかにした。 文献レビューの結果、座位・安静時時間、睡眠時間と各死亡リスクとの関連を示した文献を得ることができたので、これを福島県民の行動データに当てはめ、健康リスクの変化を推計する準備を行った。また、国民健康・栄養調査の個別データを2001年度から2019年度まで厚生労働省より取得し、震災が起こった2011年を境としたコントロールあり分割時系列解析を実施した。福島県民における、循環器疾患に関連しうる、食塩摂取、BMI、高血圧症、糖尿病罹患の変化について検討した結果、糖尿病での罹患割合についてのみ、震災後のオッズ比1.57と有意な差が見られた。 森林土壌から植物体へのCs移動量について、新たにオニノヤガラという大型の腐生植物で解析を進めた結果、これまでの解析植物よりも移行量が有意に少なかった。DNA分析の結果、共生菌はArmillaria属と推測され、Cs移動量が少なかった理由としては、この植物の塊茎・根系がやや深い土中にあり、森林土壌表層から浅い深度に偏在するCsを吸収することが無かったためと考察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
住民アンケート結果の解析から、震災前後での森林の利用時間数や生活時間パターンの変化が明らかになりつつある。さらに森林内滞在時間が長く、特異的に大きな被ばく量を持つ人の健康リスクの定量的な評価を可能にすることによって、森林に関わる生活や仕事が事故によって変化したことによる健康影響を定量的に把握し、住民へ情報提供することが可能になりつつある。 森林利用に関係した地域住民の健康状態の変化については、解析を行うためのデータの収集が順調に進んでいる。生活習慣に伴う、リスク推定値の文献レビューから、被ばくリスクとの比較も可能となった。震災前後の健康状態の変化については、公的調査からも同様の傾向を示すことができ、解析の信頼性を示すことができた。 森林除染した場合の森林内空間線量の変化を点減衰核積分法を用いた数値シミュレーションによって明らかにすることについては、昨年度までよりもより詳細なモデル化が可能となった。また、これらの解析によって、空間線量を精度良く予測するための、クリティカルパラメーターが明らかとなりつつあり、これらのパラメータ値のより正確な値を現地で求めれば、実用に耐えるシミュレーションが可能となると考えられる。 森林域からの放射性Csの移動データの収集も順調に進んでおり、森林除染のために森林域において天地返しを行った場合の放射性Csの動植物への移行量を推定する準備ができたと言える。放射性Csの飛散から10年を超えた現在においても、森林の土壌におけるCsの分布は表層から浅い土中に留まっており、そこに生育する植物が蓄積するCsの量も根の深さに影響を受けていることが明らかになってきた。 これらのことから、研究全体として、おおむね順調に進展している。学会発表については、これまでの成果を最終年度である次年度に集中して発表することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集したアンケート結果の解析を継続し、川内村住民の標準的な行動様式と、そのばらつきの大きさの属性毎でのモデル化作業を継続する。そして 原発事故前後の被ばく線量の変化に基づき、森林利用を中心とした生活時間パターン毎での被ばくリスクを定量的に評価する。また、これまでに取得した国民健康・栄養調査のミクロデータを用いて分析した事故前後の食生活や身体活動状況の変化の生活習慣病への影響分析に加え、収集した原発事故前後の住民の生活時間のデータを用いて、睡眠や座位時間と健康リスクの関係を分析することにより、被ばく以外の健康リスクも計算する。そして、被ばくによる健康リスクと被ばく以外の健康リスクの比較により、生活パターンの変化がもたらす健康リスクを総合的に評価し、原発事故時の住民避難のあり方などについて提案する。 天地返しを主たる除染法として森林除染を実施した場合の線量削減効果を評価するため、昨年度までに開発した点減衰核積分法による空間線量評価モデルのさらなる精緻化を行う。さらに森林中での天地返しが森林生態系へ及ぼす影響を明らかにするため、森林中でのCsの動態、天地返しからの生態系の復元、天地返しが森林土壌の安定性に及ぼす影響の解析などのデータ収集を行う。Csの動態については、各種植物への移行速度の知見を収集整理する。また森林斜面の勾配が、Csの移動速度に及ぼす影響なども、実験および現地調査によって明らかにする。そしてこれらの結果を 空間線量評価モデルに組み込むことで、空間線量の天地返し後の経年変化予測の精度を向上させ、一般の自治体関係者らも利用できるように、ソフトウェアのパッケージ化を行う。 今後の川内村の復興計画を考慮しながら、より現実的な森林除染計画の策定を川内村との協議に基づき検討し、研究成果の現実への適用を考える。
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