研究課題/領域番号 |
19H01171
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 伸哉 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70261287)
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研究分担者 |
津田 真寿美 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30431307)
高阪 真路 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (00627119)
黒川 孝幸 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40451439)
前仲 勝実 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (10322752)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2020年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2019年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
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キーワード | バイオマテリアル / ポリマーハイドロゲル / がん幹細胞 / リプログラミング / ハイドロゲル / 多様性 / 高機能ゲル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、①高機能ゲルの開発は黒川孝幸博士が行い、がん細胞のリプログラミングゲルとして弾性率、荷電状態の異なるゲルを開発する。②メカノレセプターの同定、メカノメモリーの解明など生物学的な解析は研究代表者の研究室の津田博士が行い、その結果を黒川博士にフィードバックすることでより精度の高い高機能ゲルの開発を行う。③高阪真路博士は、国立がん研究センターでNGSによりシングルセルのゲノム解析を行う。④がん幹細胞特異的阻害剤スクリーニングは、北大創薬研究教育センターで前仲勝実センター長がオリジナル化合物ライブラリーを用いて行う。⑤臨床応用はの田中伸哉が北大病院の臨床各科との共同研究として進める。
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研究実績の概要 |
(研究の骨格)本研究は、研究代表者が高機能ポリマーハイドロゲルを用いることで、極めて短時間にがん細胞のリプログラミングを誘導して、がん幹細胞を創出する方法を見出したことにはじまる (Nat. Biomed. Eng, 5, 914-925, 2021)。これは従来のがん幹細胞分離同定法とは異なり、がんの種類を問わず24時間以内にがん幹細胞を創出することができる画期的な方法である。本研究では、高機能ゲルのどのような物理的因子ががん細胞の遺伝子発現変化を短時間で誘導するのかを検討し、高機能ゲルを基盤としたがん幹細胞診断法を開発し、さらにがん幹細胞標的治療薬を大規模スクリーニングにより創出するものである。 (今年度の実績)「ゲル開発」プロジェクトでは、ハイドロゲルの硬さとチャージ(荷電状態)を計画的に変化させることにより、様々な癌種において効率的にがん幹細胞を創出できるハイスペックゲルの条件を見出した。また、昨年度にDNゲルを凌駕するがん幹細胞誘導能力を証明したPNaSSゲルにおいて、創出したがん幹細胞を用いてシングルセルRNAシーケンスを実施し、がん幹細胞の性状と多様性を明らかにした。一方、「臨床応用」のプロジェクトでは、昨年度のヒト肝臓がん(肝細胞がん)に加えて、ヒト膵臓がん、中皮腫、脳腫瘍(髄膜腫)、骨肉腫においてハイドロゲルを用いてがん幹細胞を創出し、各々新規のがん幹細胞マーカーを同定した。さらに膵癌においては、特定のチャージゲルを用いることで、治療後に極少数のがん細胞が残存する腫瘍組織から、治療耐性の膵癌細胞を樹立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、これまで当該基盤研究(A)で見出した成果を発展させ、がん幹細胞を創出する能力が格段に高いハイスペックゲルを開発し、臨床検体を用いて医療応用への基盤を構築し、がん細胞治療薬のシーズを得ることを目的とする。具体的には以下の3項目を研究開発の目標としている。(1)「ゲル開発」がん幹細胞誘導ハイスペックゲルの開発、(2)「Biology」ハイドロゲルによるがん幹細胞誘導メカニズムの解明、(3)「臨床」ハイドロゲルによる患者手術検体由来がん幹細胞の診断法の開発、およびがん幹細胞治療薬シーズの創出。 当該年度の進捗の理由として、(1)「ゲル開発」プロジェクトでは、ゲルの物理的特性(硬さとチャージ(荷電状態))を変化させることにより、がん幹細胞を効率的に創出する条件を見出した。これは、生体内癌微小環境においてがん幹細胞が生成する条件を理解し、がん幹細胞を標的とした新規治療法を確立するための重要な情報となる。(2)「Biology」の解析では、昨年度にDNゲルを超えるがん幹細胞誘導能力を見出したPNaSSゲルに着目し、創出されたがん幹細胞のシングルセルRNAseqを実施し、PNaSSゲル誘導癌幹細胞において特異的に発現する遺伝子を明らかにした。この情報は、癌の浸潤・転移再発の原因となるinvasive front nicheに存在するがん幹細胞の性状を理解し、治療候補分子を提案するのに有用である。(3)「臨床」プロジェクトにおいては、ヒト膵臓がん、中皮腫、髄膜腫、骨肉腫などの希少がん、難治性のがんにおいてハイドロゲルを用いて癌幹細胞を創出し、それぞれ新規の癌幹細胞マーカーを同定した。これは、最終的にがんゲノムパネル検査と組み合わせて体外診断薬を同定するプロジェクトに向けて重要な技術である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は5年計画の最終年に該当するため、令和4年度までに得た新知見、新素材を活用して、臨床的な成果を得ることを目指す。高機能を有する新素材としてPNaSSハイドロゲル、さらにはがん幹細胞を生成するために硬さとチャージ(荷電状態)を最適化したハイドロゲルを用いてがん幹細胞の性質を解析する。具体的には希少がん、難治性のがんに焦点を当て、これまでの研究から明らかとなった新規がん幹細胞マーカーの多様性をシングルセルレベルで解析する。さらには、臨床検体(外科手術摘出検体)を用いて、がん幹細胞の遺伝子発現情報を空間情報と共にシングルセルレベルで取得する。以上より、ハイドロゲルを用いて同定したがん幹細胞マーカーおよび特性の信憑性を検証し、最も有効ながん幹細胞治療薬のシーズ探索を行う。現在、この前向き検討を北大病院の臨床各科と共同研究として進める準備を整えている。最終的には、HARP現象により患者のがん再発を予測するモデルの確立を目指す。
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