研究課題/領域番号 |
19H01173
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牛田 多加志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 名誉教授 (50323522)
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研究分担者 |
上田 太郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90356551)
古川 克子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90343144)
伊藤 弓弦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30500079)
佐藤 正人 東海大学, 医学部, 教授 (10056335)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2021年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2020年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2019年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
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キーワード | 静水圧 / 軟骨細胞 / シグナル / メカノシグナル / 再生軟骨 / シグナル伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
軟骨細胞がいかに静水圧を受容するか,そのメカニズムについては依然不明のままである.本研究においては,そのメカニズムの解明のために再構築系,細胞実験系およびトランスクリトーム解析系の3つの系を用いて,軟骨細胞の静水圧メカノシグナル制御機構を分子レベルで検証する.さらに,本研究においては,軟骨細胞の静水圧メカノシグナル制御機構に基づいた最適な静水圧負荷技術を開発し, in vitro実験,動物移植実験を通じて,静水圧負荷の有効性を評価することより,組織工学への応用を目指した軟骨細胞分化制御および軟骨組織再生の基盤技術の開発を行う.
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研究実績の概要 |
無細胞系においては,Rasの活性化をFRET強度の変化でモニターできるRaichuをもちいて、Ras活性化の静水圧感受性の検出とメカニズム解明を目指した研究を進めている。2020年度までにRaichuの単離精製とこれを用いたRas活性化の測定ができるようになっていたが、静水圧感受性のシグナルをより定量的に測定できるよう、実験測定系の改良が進んだ。またRasGEFおよびGAPを測定系に組み込むことにも成功した。 また、過大静水圧下においた軟骨細胞の網羅的遺伝子発現解析を行うことにより、静水圧下での培養によりホスホリパーゼの発現が変動していたことから、培養上清の遊離脂肪酸組成の解析を行った。 さらに、前年度までに開発した、軟骨細胞に静水圧だけでなく、同時に圧縮応力を負荷することのできるシステムに改良を加え、静水圧と圧縮応力負荷のタイミングを変化させながら、軟骨細胞の遺伝子発現変化について検証を行った。 そして、再生軟骨の評価系として、これまでに日本白色家兎並びにラットを用いた異種同所性移植モデルによるin vivo有効性評価法を確立し、両動物種での修復再生効果の同等性を確認した。本研究における動物実験系をラットに決定後、静水圧負荷技術により作製された再生軟骨組織を用いた場合の移植方法や手技について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度末の実験系では、静水圧を印加後、FRET強度がだらだらと変化し続ける現象が頻発し、これがRasの静水圧感受性の定量的測定の妨げとなっていたが、測定条件の改良でこれを大幅に低減することができた。またRasGEFとRasGAPの活性部位を大腸菌を用いて発現・精製し、これを添加することで活性型RasのFRETシグナルが増減することも確認するとともに、正常細胞やガン化細胞の細胞内のRas活性化状態を模すGEF/GAP条件を決定することができた。 また、過大静水圧下においた軟骨細胞から分泌される脂肪酸について解析したところ、培養上清に含まれる脂肪酸はほとんどが飽和または一価不飽和脂肪酸であることが分かった。一方、静水圧下で分泌される脂肪酸の量や種類に変化はみられなかった。 一方、静水圧と圧縮応力負荷のタイミングを変化させることの可能な細胞培養システムの開発を進めたが、さらに応力値を増加させるためのシステム開発にいても平行して進めている。 そして、動物実験におけるポジティブコントロールとなる多指症由来軟骨組織より作製した細胞シートを用いて、静水圧負荷技術により作製された再生軟骨組織を用いた場合の移植方法や手技について検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
Raichuでは、活性型RasとRafRBDの結合を、Rasに結合したYFPおよびRafRBDに結合したCFPの近接によって検出している。しかし最近の測定結果から、常圧下ではCFPとYFPが一定の親和性を持って結合(2量体化)しており、静水圧を加えるとこれが解離する可能性が示唆された。これは、Raichuを用いたRasの静水圧感受性測定系に残された可能性のある最後のアーティファクトであり、Ras活性化の測定において大きな擾乱要因となりうる。そこでまず、蛍光タンパク質の二量体化をCFPとYFPに点変異を加えることで低減する。この改良がすんだ後に、生理的に意味のある条件下での測定を体系的に行う予定である。 また,脂質代謝酵素の発現変動により、脂質組成の局所的な変化が生じている可能性を検討する必要がある。また、新たに静水圧によって発現制御を受けるlncRNA/miRNAの同定及びmRNA発現との相関性を解析する。また、静水圧下培養との関連が示唆される疾患特異的遺伝子との相関性に関しても考察する。 一方,軟骨細胞に静水圧だけでなく、同時に圧縮応力を負荷することのできるシステムを用い、静水圧および圧縮応力のそれぞれの遺伝子発現に及ぼす効果、さらにそれら2種類の物理的刺激が同時に負荷されることによる相乗効果について定量し、これら2種類の物理刺激が軟骨細胞さらには変形性関節症に及ぼす効果について検証を進める。 そして、研究課題4「細胞分化・組織再生のin vitro実証研究」により作製された再生軟骨組織をラットの軟骨損傷モデルに移植し、組織染色及びICRSスコアリングによる組織学的評価等を実施する。
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