研究課題/領域番号 |
19H01326
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
加藤 直人 日本大学, 文理学部, 教授 (90130468)
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研究分担者 |
松重 充浩 日本大学, 文理学部, 教授 (00275380)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2020年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2019年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 清朝 / 中国東北 / 満洲 / 旅蒙商 / 内モンゴル / 内陸アジア / チベット / モンゴル / 青海省 / 内陸華僑 / 交易ネットワーク / 吉林 / 韓辺外 / 東北アジア / 多言語 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、北アジア・東北アジアにおける個々の交易ネットワークが、如何にして一体的な広域ネットワークに発展したのかを、文書資料解析だけでなく現地調査により得られる様々な情報から検討することで、明らかにしようとするものである。それは、従来の広域ネットワーク論が、各地域の言わば単純総和的な枠組みで提示されてしまい、そもそも広域ネットワーク化した際に個々の地域の個別ネットワークが如何なる変容を被ったのか、あるいは個々のネットワークが広域ネットワーク全体に如何なる影響を与え、それが広域ネットワークに如何なる変容をもたらすものだったのかを十分明らかに出来ていなかったことの克服を試みるものでもある。
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研究実績の概要 |
本研究は「旅蒙商」などの所謂「内陸華僑」の活動を軸に形成・展開された、陸路・水路の「内陸アジア交易ネットワーク」と、そこにおける社会・文化変容の諸特徴を、現地における国際政治的な状況を踏まえて明らかにするものである。それは、文献研究を中心に構築された従前の研究成果に、現地調査により収集された様々な資料の分析結果を加えることで、当該領域における諸主体の歴史実態に対する新たな実証水準の提示と、その成果の検討を通じて、当該地域で生起しつつある21世紀の諸問題を考える上で必要となる歴史的知見の獲得も目指すものでもある。 以上の研究目的に照らして令和2年度は、現地調査を実施し、新たな歴史記録の獲得を目指す予定だったが、新型コロナウイルス感染症の蔓延により現地への入国ができず、研究費を2年間繰り越して感染症の鎮静化を待ったが、結局は現地調査を断念せざるを得なくなった。このため、その代替として当初旅費として設定していた予算を以下の研究を充当し、遂行した。 令和3年度は、本研究の研究協力者を中心に従前に行った現地調査の成果を持ち寄り、研究成果の再検討を行い、調査対象・内容の向上を図った。その成果に関しては、『「帝国」の秩序と再編:モンゴルの文書と史跡の探求』(日本大学文理学部史学科研究室、2022年)として刊行した通りであるが、地域間の人的・物的移動が、想定以上に活発に展開していることと、現地における政治的権威を含む文化的認識においても諸主体間における深い連関性が確認できた。また、令和4年度は、従前十分利用されたとは言い難いロシア語文献資料(Russian Military Intelligence on Asia Online:Secret Prints,1883-1914)を購入し、改めて現地社会におけるロシア側の各種活動の意図・内容の摘出・整理を図った。同作業は、現在も継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、前述した通り、北アジア、東北アジアに形成された「内陸アジア交易ネットワーク」と、そこにおける社会・文化変容の実態解明を目的に、現地調査で新たに収集された資料分析を軸に新たな実証水準の提示を図ろうとするものである。この点を踏まえれば、現地調査は本研究の成否をわける重要なポイントとなるが、これも前述した通り、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、その実施ができないまま今日に至っている。 現地調査ができない代替措置として、前述した通り、従来の現地調査成果の見直しと新たな文献資料購入・分析による新たな知見の「発見」を鋭意進めているが、やはり実際の現地調査(各種の聞き取り調査や、現地資料館における未調査資料の調査・収集など)において当初想定していた内容に比べれば、若干見劣りしていると言わざるを得ない(特に令和4年度購入のロシア語文献の調査・分析は緒に就いたばかり不十分な状況にある)。 以上の点から、本年度区分を「(3)やや遅れている。」とした次第である。
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今後の研究の推進方策 |
上述してきた研究到達点を踏まえて、今後の研究としては次の3点を重点的に進めて行く計画である。 1つ目は、新型コロナウイルス感染症の鎮静化しつつある現状を前提として、改めて、本研究の中核研究作業である、現地調査を実施し、新たな資料調査・収集を行うというものである。より具体的には、残された科研期間(実質1年間)をふまえて、令和元年に実施した中国東北地貴意との連関が深い中国内モンゴル自治区での調査を行う。これは、現地調査の時間的制限を前提とした時、調査済み地域との連関性が深い地域に調査地を絞り込むことの方が、調査成果をより有効に利用できると考えたからである。 2つ目は、国際公開ワークショップをはじめとした、本研究成果の対外発信と外部評価の取り込みにより、最終年度に予定している本研究成果全体の取り纏めに資する、有益な情報や知見の獲得を行う。 3つ目は、本研究の遂行にそって収集・整理した史料のデジタル化とデータベース構築を精力的に進めて、本研究領域における史料環境の利便性の向上を目指す。 なお、現地調査に関しては、もしも新型コロナウイルス感染症が再燃するような場合は、上述した海外現地調査や国際ワークショップが不可能となる場合もあり得るが、その場合は、やむを得ない処置として、上述調査に関する国内文献の再調査と現地協力者とのより密接な調整を前提とした現地史料の代理収集などの、代替的措置を適宜とりつつ、本研究目的の実現に向けての作業を精力的に進めて行く予定である。
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