研究課題/領域番号 |
19H01341
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
笹田 朋孝 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (90508764)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2020年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2019年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 考古学 / 製鉄遺跡 / 匈奴 / モンゴル / アジア考古学 / 科学技術史 |
研究開始時の研究の概要 |
遊牧国家の勃興の地であるモンゴル高原では、鉄の存在が遊牧国家にも大きな影響を与えたことが想定されながらも鉄の伝播やその適応の実態は不明であった。そこで本研究ではモンゴルの共同研究者たちと発掘調査してきたホスティン・ボラグ遺跡(匈奴の製鉄遺跡)を研究の中心に据え、新たに発見されたモンゴル国内の匈奴の製鉄遺跡の調査を併行して実施することで、匈奴の製鉄システムの時期差や地域差を明らかにする。そして東アジア最初の遊牧帝国である匈奴がどのような戦略で鉄を獲得し、鉄生産を彼らの伝統的な遊牧システムの中に取り入れていったのか、そして鉄が匈奴にどのような社会的・文化的な変容を生じさせたのかを明らかにする。
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研究成果の概要 |
モンゴル国ホスティン・ボラグ遺跡の発掘調査を実施し、複数の製鉄炉・鉱石焙焼炉・廃棄土坑などを検出した。放射性炭素年代測定から製鉄遺跡の年代は紀元前2世紀~紀元後1世紀であることが明らかとなった。また、炉形・土製羽口の出土・鉄滓の金属学的分析から製鉄技術の特徴の一端を明らかとした。その結果、紀元前2世紀の匈奴が鉄器生産能力を既に有しており、技術的系譜が南シベリアに求められることが明らかとなった。これは中国の史書にも記載されておらず、これまでの匈奴のイメージを覆す大きな発見であった。この成果を契機に匈奴の製鉄遺跡が、ゴビを除いて草原地帯の各地で発見されるようになった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
これまで遊牧国家は農耕国家によって記載された歴史書によるネガティブなイメージ(野蛮な殺戮者、文明の破壊者)に支配されてきたため、匈奴の手工業生産は著しく低く見積もられてきた。ホスティン・ボラグ遺跡の発掘成果から匈奴による鉄の独自生産が解明されたことは、これまでの匈奴のイメージを変える大きな発見であった。継続した発掘調査により、匈奴の製鉄技術が西方から伝播した技術であることや複数の製鉄炉のタイプが存在していたことが明らかとなり、匈奴が製鉄という遊牧とは相反する要素を巧みに取り入れて鉄を入手していたことが明らかとなった。
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