研究課題/領域番号 |
19H01362
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 武庫川女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
古濱 裕樹 武庫川女子大学短期大学部, 生活造形学科, 講師 (60449874)
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研究分担者 |
後藤 純子 共立女子大学, 家政学部, 教授 (20413057)
小林 政司 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (60225539)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2019年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | 染織品 / 染料鑑別 / 非破壊分析 |
研究開始時の研究の概要 |
古い染織物は人類の貴重な文化遺産である。しかしながら、有機化合物である繊維や色素は分解が早く、特に天然染料で染められたものは短期間で劣化が進み、当時の色彩は失われつつある。貴重な染織物を後世までできる限り長く維持するため、化学分析によって材料を正確に捉え、適切な管理の実施が必要である。しかし、従来の分析の主流は染織物の断片を剥ぎ取る破壊分析であった。博物館等は破壊検査を避けたがるため、分析は十分に行われていないままである。 本研究で完全な非破壊・非接触分析法を分析情報のデータベースをもとに確立して、実地活用を進める。染織物の適切な維持管理や同染料を用いた修復、色彩文化の解明などが期待される。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、ハイパースペクトルカメラによる適切な計測方法の確立に向けた検討を行った。計測時のハロゲン光源や、カメラの設置状態などの諸条件の検討ではかなりの部分が明らかになった。一方で、得られるデータの演算処理や、データに付随するノイズの処理において、幾らかの新たな課題が現れた。検討の結果、データの演算処理はバッチ方式において可能で、微分スペクトルの獲得から染料鑑別を試みることが可能であった。 蛍光X線元素分析による染織物の成分分析も精力的に進めた。媒染剤としての金属イオンが少なすぎて発色が正常に完結しないような微量の媒染金属を使用した事例や、ハンドヘルド型検出器では分析が容易ではないアルミニウムの検出のされ方についても明らかにした。日本の近代染織物の繊維内に含まれる染料や顔料の元素分析も行い、多種類の無機顔料や、臭素を含む特徴的な塩基性染料を検出した。可視および近赤外、紫外マイクロスコープによる顔料の検出についても検出事例を蓄積し、色材鑑別に有効な情報を得た。 データベースにおいてはクサギの情報を大きく拡充した。染色物におけるクサギと藍の鑑別が非破壊分析においても高精度で可能となった。また、ベレンスや鉄黄、マンガンブラウンなどの鉱物染料の情報も拡充した。データ解析においてはフーリエ変換によるデータ軽量化を試み、一定の成果を得た。データベースのデータ格納形態についても検討を加えた。HPLC分析においても、試料の候補を選定し、準備を整えた。 新型コロナウイルス感染症に伴う社会情勢により、博物館等外部機関の分析の実施の進捗は遅れているが、研究室内での検討は順調に進んだ。 これらの成果のうち、まとめられたものから順次、学会等での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症による社会情勢に伴い、外部機関における調査や交渉などの研究活動に支障が生じた。また、研究出張も自粛ムードの中、昨年度に続いて大幅に減少することとなり、体外的な交渉が滞りがちとなった。
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今後の研究の推進方策 |
4年間の研究の最終年度となる。これまでの研究成果を纏め、実地応用の可能性を明らかにし、完全非破壊手法による染料鑑別の実践を開始するところまでを研究期間内の目標に定める。この目標に到達することによって、研究期間終了後においても本研究課題の成果は社会で活用される価値の高いものとなる。 武庫川女子大学附属総合ミュージアム収蔵の資料は極めて数が多く、現在までに確立したバッチ方式のシステムでは本法による悉皆的な調査は時間的に困難である。そこで、染織物の撮影画像から、天然染料の可能性があるものを抽出して分析を試みる。新型コロナウイルス感染症による社会情勢に伴って遅れがちであった外部機関における実地研究は、外部機関担当者との交渉を経て、夏以降に実施する。 データ解析における研究も精力的に進める。ハイパースペクトルカメラで得たスペクトルの効率的な分析方法の検討を実施する。効率的な分析が可能になった場合は、機械学習による判別の可能性を検討する。データベースのUIの改良も検討する。引き続き、色彩解析とその応用も継続して行う。 近代染織品の成分分析も継続して実施し、染料の鑑別に必要な情報を収集する。二次微分スペクトルの鑑別の信頼性の確認も、HPLCデータとの照合によって、引き続き数多くの染料で実施する。 以上のことを精力的に進め、研究目標の到達に向けて邁進するが、研究の完成度を高い領域に持っていくためには研究期間の延長も視野に入れている。
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