研究課題/領域番号 |
19H01386
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
百瀬 響 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (10271727)
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研究分担者 |
遠藤 匡俊 岩手大学, 教育学部, 嘱託教授 (20183022)
岩澤 孝子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40583282)
松永 康佑 札幌市立大学, デザイン学部, 講師 (40464391)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2019年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 北方交易圏 / 樺太アイヌ文化 / 東北-北海道交易 / 樺太-北海道交易 / 文化変容 / 北海道アイヌ / 樺太アイヌ / 北前船 / 北方交易 / アイヌ交易品・給与 / 応用人類学 / 文化の再現 / 文化教育教材 / 東北-北海道交易 / ピウスツキ コレクション / 北海道ー樺太交易 / 東北ー北海道交易 / サハリン州郷土博物館 / 樺太アイヌ婚姻圏 / 文化復興 / 北海道・東北・樺太 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、平成25~28年度科研費(挑戦的萌芽研究)「北海道・東北を中心とする北方交易圏の理論的枠組み構築のための総合的研究」(研究代表者 百瀬響、課題番号25580150)での成果を発展させ、東北・北海道の日本海沿岸地域(石狩・余市地方)・樺太における「北方交易圏」の交流の実像を通時的に明らかにする。近世から近代を通じ、東北-樺太-北海道日本海沿岸地域に存在した交易圏と婚姻圏に関して、各地域の博物館・アイヌ系住民らと連携し、物質文化・古文書・オーラルヒストリー等の史資料から、地理学・歴史学・文化人類学等諸分野の手法を用い、かつてこれらの地域に存在した交易・婚姻圏の実態を探る。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルス他の影響によって、2022年度においてもロシアで予定した調査を行うことはできなかった。そのため、国内のみでの調査・研究および発表に変更せざるを得なかった。 国内調査の成果としては、①一昨年度に予備調査を行った山形県鶴岡市郷土博物館所蔵の関連史料のうち、近代初期(一部幕末を含む)北海道への酒移出に関する文書について、悉皆調査と撮影を行った。 他に、②場所請負制度における、アイヌ給与および交易品についての研究では、研究代表者の百瀬により、北海道余市場所におけるアイヌ労働を通じて、アイヌに支払われた給与分およびやり取りされた交易品(和人への売買代金との比較を含む)研究論文や、研究分担者の遠藤による北蝦夷地ウショロ場所のアイヌの労働力に対する給与と入手品などに関する研究論文が複数発表された。 また、③研究分担者の岩澤は、百瀬・エンチウ(樺太アイヌ)協会員と共に、樺太アイヌ舞踊習得のためのワークショップを行った(モーションキャプチャによる動画教材化については、研究分担者の松永が、④で発表を行った)。 以上の成果を、④第56回日本文化人類学会研究大会において分科会「何を遺し、何を選ぶか――樺太アイヌ文化伝承・記録の試み」を開催し、応用人類学的観点から、近代に「途絶した」文化を、記録などから当時の実質的な形状・様相を再現し、それを樺太アイヌの子孫である文化の担い手達と協力して学ぶ、舞踊ワークショップや文化再現の試みについて発表したことに加え、⑤日本国内で文化教育教材とする試みを発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内調査の成果として、①鶴岡市郷土博物館所蔵の近代初期(一部幕末を含む)の関連史料である、北海道との交易に関する文書調査により、北前船によって東北と北海道でやり取りされた交易品の実態を明らかにするための史料分析の体制を整えることができた。 北海道におけるアイヌ―和人間の交易・文化変容に関しては、②場所請負制度における、アイヌ給与および交易品についての研究では、北海道余市場所および、北蝦夷地ウショロ場所におけるアイヌ労働・交易についての史料を分析し、研究成果を上げることができた。この点については、今後もさらなる研究成果を提出することが期待しうる。 また、現代の樺太アイヌ文化への寄与という観点においても、いまだ発表の段階ではあるが、③樺太アイヌ舞踊習得のためのワークショップを行うなど、④無形文化、物質文化を含め、近代に「途絶した」文化を、研究者が当時の形状・様相を研究し、それを樺太アイヌの子孫である文化の担い手達に還元する試みを達成できた。⑤教材化についても、順調に発表・論文作成が行われている。 以上のような観点から、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の継続研究課題として、鶴岡市郷土博物館所蔵史料の分析作業、場所請負制度における、アイヌ給与および交易品についての史料分析、無形文化・物質文化を含めた史資料分析を行う。この分析結果を利用して、樺太アイヌ文化をその子孫達に還元する試みを引続き行うと共に、アイヌ文化の教材化に関する研究を進める予定である。 また、これまで作成した科研報告書(『北海道・東北と樺太におけるアイヌ・和人間の北方交易圏に関する実態研究』vol.1、vol.2)2冊と2022年度の成果をもとに、研究代表者・分担者および研究協力者らが、これまでの成果を発表する。 まずシンポジウムを開催して発表する。これは、国内で多くの史資料の提供を受けた余市町教育委員会・よいち水産博物館共催で行い、余市町民および参加する一般市民らにも向けて、広く公開・還元する。 加えて本科研の成果を出版すべく、これら来年度の成果も合せ、出版助成金に応募する予定である。
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