研究課題/領域番号 |
19H01430
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中出 哲 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40570049)
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研究分担者 |
野村 美明 大阪大学, 国際公共政策研究科, 特任教授 (20144420)
小塚 荘一郎 学習院大学, 法学部, 教授 (30242085)
土岐 孝宏 中京大学, 法学部, 教授 (70434561)
榊 素寛 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80313055)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2019年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 企業保険 / 保険法 / ヨーロッパ保険契約法原則 / 再保険契約原則 / 保険契約のグローバルスタンダード / 保険法契約原則 / 告知義務 / 免責条項 / リスクに基づく保険の区分 / 損害保険契約 / リステイトメント / ヨーロッパ保険契約法原則(PEICL) / 再保険契約原則(PRICL) / 保険契約における免責条項 / 保険約款 / 契約原則 / 保険契約 / 再保険契約 / PRICL(再保険契約原則) / 保険契約法 / グローバル・スタンダード / 英米の保険契約法 |
研究開始時の研究の概要 |
企業分野の損害保険契約(企業保険契約)は、大規模リスクに対処して円滑な企業活動を支える。その契約は、家計分野の保険とは異なる特徴を有し、かつ国際的な整合性が求められる。しかし、わが国の保険法は、企業保険契約に特有の法理を示しておらず、判例も限られ、研究も少ない。本研究は、わが国の保険契約実務及びグローバル・スタンダードとなっている英米の保険約款、契約法を調査・分析し、企業保険契約に特徴的な基礎法理を抽出してグローバルな契約法理と調和する形で叙述し、「企業保険契約法リステイトメント」として体系化し、国内外に発信し、国際的な議論をリードしていくことを目標としている。
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研究実績の概要 |
本研究は、企業損害保険契約の法理を明らかにするものである。研究は、国内外の実務、外国の学説の調査から進め、その成果は専門書『企業損害保険の理論と実務』(2021年発行)に反映させたほか、法理論の考察に利用している。 重要な論点については、比較法を用いた研究を進め、サイバーセキュリティ、大震災、D&Oなどの領域にも対象を広げた。2021年までの研究成果(2022年末までの公表)は、合計10本の論文執筆(再保険契約原則、告知義務、保険代位、D&O保険、サイバーセキュリティ、企業地震保険、免責条項の解釈、免責の法的意義、再保険判例研究、リスクを基にした保険区分)(内、英語論文1本)、学会報告や研究発表(日本、台湾、韓国)となっている。また、研究から得た知見を、分担者が執筆した保険法や国際私法の研究書等にも反映させた。新型コロナによって国際会議が中止・延期となって海外出張等ができない状況が続いたが、英語論文や国際学会へのオンライン参加などによってわが国からの発信にも努めた。 研究の重点である再保険契約については、国際的研究プロジェクト(PRICL)に起草メンバーとして参画している。PRICLの国際会議も新型コロナにより延期等となったが、再保険期間に関する原則の条文起草を担当し、外国研究者とオンラインでの意見交換等を進め、将来の発表を準備している。 2021年度の研究成果として特記すべき点は、企業損害保険契約の規律を洗い出して共通する特徴の考察を進めた結果、企業損害保険契約の法理は、契約者の属性(企業か個人か)ではなく対象リスクの特性から導くべきとの仮説を得たことである。これは、従来の保険法学研究には存在しない新しい視点となる。この仮説は2022年度に研究報告や論文として発表した。今後は、この新たな視点を基礎として法理を体系的に整理し、海外にも発信して国際的な議論に結び付けていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、企業損害保険契約の法理について、国内外の実務や学説を調査し、その契約に特徴的な法理を抽出するものである。 2019年度は、日本、英国、ドイツ、米国の状況の調査、保険法に関する国際会議への参加により、国内外の実務の把握や外国の学説の調査を進めた。また、再保険契約原則を明らかにする国際プロジェクト(PRICL)に起草委員として参画し、PRICLの意義や内容について日本と台湾で研究報告し、論文にまとめた(2020年公刊)。 2020年度は、新型コロナ問題による国際会議(世界保険法学会、PRICL起草委員会、ヨーロッパ保険契約法学会)の中止や延期によって国際活動は限られたが、これまでの調査結果をまとめるとともに、保険契約の重要論点や先端的技術の問題等の研究を進めた。論文として発表したテーマは、告知義務、保険代位、免責条項、D&O保険、企業地震リスク、サイバーセキュリティなどの多岐にわたり、日本語のほか、英語による学会報告や論文の公表も行った。また、研究の成果は、「保険法コンメンタール」「保険法1 論点解説」などの研究書や国際私法の教科書の執筆にも反映させた。ヨーロッパ保険契約法原則(PEICL)の解説書の翻訳にも着手した。 2021年度は、実務調査を踏まえた図書「企業損害保険の理論と実務」の刊行、保険契約の重要論点に関する論文等の公表を行い、それらをもとに更なる研究を進め、学会報告や研究論文の執筆を進めた。再保険契約に関する研究については、日本の判例に関する分析・考察やPRICL起草委員として再保険期間に関する研究を進め、成果の一部は、2022年度に公表できた。さらに、企業損害保険契約に特有の法理の抽出を進め、それらが他の保険契約の法理とは異なる理由等の考察を進めた。その本質に関する考察は、2022年度に研究報告と論文として発表することに結びついた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究・検討の結果、研究の目標をリステイトメントとすることについては、これまでの判例や実務を成文化したものではなく、PRICLやPEICLなどの最新の国際的研究をもとに考察を深め、それらを題材として、企業損害保険契約がいかなる点で他の損害保険契約と異なるか、その特徴を探究して、その法理や特徴を明らかにすることがより重要であり、その視点に立って研究をまとめていくことにした。 これまで、重要な論点に関する考察を論文や学会報告として公表してきた。本研究課題では、それらに加えて、企業損害保険契約に特有の規律の洗い出しを行い、それらを特徴づける特有の法理に関する研究にも着手した。特に、これまでの研究の成果として、保険契約の特徴は、保険契約における保険契約者の属性(個人か企業か)からではなく、保険契約が対象とするリスクの特徴に基づくべきとの視点が得られ、その考え方を問題提起として研究報告と論文として公表した。この考え方は、これまでの保険契約法の理論に存在しなかった新しい考え方といえる。今後は、この考え方を基礎において、企業損害保険契約における法理論を更に探求するとともに、論文や研究報告という形で、英語でも発信して、わが国からの問題提起として国際的な議論に結び付けていく考えである。 企業保険契約において重要な領域である再保険契約の研究については、PRICL起草委員として、再保険期間に関する条文の作成を担当し、その成果を国内外で発表することを計画している。さらに、ヨーロッパの保険法契約原則(PEICL)の翻訳についても、公表に向けて完成を目指す。
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