研究課題/領域番号 |
19H01443
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 利之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40214423)
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研究分担者 |
飯島 淳子 東北大学, 法学研究科, 教授 (00372285)
荒見 玲子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20610330)
内海 麻利 駒澤大学, 法学部, 教授 (60365533)
荒木田 岳 福島大学, 行政政策学類, 教授 (70313434)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2019年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 住民 / 貞操 / 全幅 / 比較 / 歴史 / 地域住民 / 公衆 / 消費者 / 担い手 / 組 / 市民 / 土地 / ムラ / 連携 / 冗長性 / 縮退 / 競争 / 排除 / 管理 / 代表 / 議員 / 二元代表制 / 「近代」化 / 村 / 合意形成 |
研究開始時の研究の概要 |
現代日本の住民基本台帳制度に具現化されている住民概念は、実際の自治体の現実の行政活動では必ずしもそのまま利用されておらず、制度の想定からの乖離がある。諸個人は多数の自治体と関係を持ち、自治体は住民概念以外の方法によっても諸個人を把握する。それゆえ、行政の実務に非効率・不公平などの問題を起こしている。 そこで、本研究は、現代日本の住民概念について、歴史的に構築されたこと(構築性)を踏まえて根本的に検討し、行政活動においてどのような形で諸個人と自治体が結びついているのか(諸個人-自治体間関係)の実態を解明する。
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研究実績の概要 |
住民概念に関連する様々な概念について、研究会で分担して研究を進めた。 第1に、各種の行政分野における住民関連概念を事例検討した。1つには、ソーシャルワークの観点から「地域住民」の「参加」に着目して分析を進めた。2つには、公衆衛生の観点から、「公衆」概念について住民概念と比較してしていった。特に、国の公衆衛生行政が地域住民を対象としながら、同時に「公衆」を対象とする点での機微を考究をした。3つには、消費者行政の観点から、「消費者」について焦点を据えて検討を行った。住民は一般的には消費者でも生産者・事業者でもあるので、住民との重複と乖離について、分析を進めた。第2に、都市計画・まちづくりのマネジメントの担い手に注目して、「公共貢献」という観点から検討を行った。これまでの成長社会では「整備・開発」が開発利益を生み出したのに対して、縮減社会では「マネジメント」は利益を生み出さず、逆に、事業者や住民、場合によっては国民に負担を強いる点で、従来の主体と発想なってきていることが明らかになった。第3に、歴史研究の一環として、浜松市立図書館の紹介で、第六国立銀行の考課状を発掘し、地域住民の金融に果たす役割について分析を進めた。具体的には、小野組という人的集団が県庁の為替方を担ったが、その結果、米価・物価を豪商がコントロールするようになったが、小野組が破綻したことによって、第六国立銀行設立に至ったことが明らかになった。 第4に、都市の自治の観点から、市民の析出について検討を加えるとともに、都市自治体が市民に対してサービス提供を具体的に実行できるかを、コロナ下におけるエッセンシャル・サービスを採り上げて研究を行った。第5に、投票者として現れる住民を分析した。 このように、コロナ下において現地調査が困難を極めるなかでも、研究メンバーがざまざまなアプローチで住民概念の深堀を進めることができた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ下において、現地調査が大幅に制約されるなかで、各人が可能なことを分散的に進める方針をとった。 具体的には、各研究メンバーが住民概念に関連する人間・民衆の諸側面について、主として文献調査をもとに、多角的にアプローチすることができている。その意味で、共同研究としての強みが発揮されている。研究代表者の当初の研究計画は、地方自治制度・住民基本台帳制度に焦点化されていたが、共同研究のなかで、当該制度に限定されない総合的な視野に広がりを持つことで、予想外の進捗が得られたいることは、コロナによって調査が制約されたことの怪我の功名であった。 また、限られた機会ではあったが、研究会を開催することで、各人の分散的な研究についての議論を進め、全体としての住民概念への多角的な接近を図ることができた。 他方で、コロナ下において、特に外国調査が困難になったため、諸外国の住民概念またはそれに類似した制度との比較分析に向けた調査研究はあまり進んでいない。そのなかでも、フランスの住民登録制度については、なんとか端緒は着きつつある。このため、繰越によって、遅れを挽回していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、各人がそれぞれの研究関心と研究経験を踏まえ、住民概念に関連付けながら研究を深めることが、住民概念に包括的にアプローチするためには、非常に有用であることが明らかになった。そこで、今後ともこのような分散的な研究を進める方策をとることとした。特に、被保険者・世帯・家族・受給者・国民など、社会保障関係での住民関連概念を掘り下げていくことが、大きな方向性となった。 第2に、コロナ下において遅れていた現地調査を再開することを試みることとする。もっとも、コロナによる往来の制約は、金銭的にも時間的にも様々な負担になるため、計画的に準備を進めることが検討されている。さらに、ウクライナ戦争や異常な物価高というその後の情勢変更も、海外調査の現実性を低めており、可能であれば、文献調査によって代替することも検討している。また、国内現地調査も、感染症法上の2類相当の位置づけが変わったとしてmお、人々や社会のあり方が大きく回復しない限り、調査対象者のリスク懸念などから円滑には進行しないため、位置づけの変更を見据えながら検討していきたい。 第3に、研究会全体として、住民概念について検討を深めるため、研究代表者を中心にして包括的な試論を展開して、共同の議論を進めていくことで、研究会としての成果を生み出すことを目指していきたい。
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