研究課題/領域番号 |
19H01582
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
古川 彰 関西学院大学, 特定プロジェクト研究センター, 客員研究員 (90199422)
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研究分担者 |
伊地知 紀子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
松田 素二 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任研究員 (50173852)
中野 康人 関西学院大学, 社会学部, 教授 (50319927)
土屋 雄一郎 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70434909)
阿部 利洋 大谷大学, 社会学部, 教授 (90410969)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2021年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2020年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2019年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 生活環境主義 / 環境保全力 / 災害文化 / 小さな共同体 / 村の日記 |
研究開始時の研究の概要 |
現代世界が直面している深刻な困難の一つに「環境問題」がある。環境に関わる複雑な「問題群」に対して、「普通の人々」はどのように対応し、改善することが可能なのだろうか? 研究代表者らは1980年代前半、琵琶湖周辺の環境社会学的調査の中で、「小さな共同体」が育み実践してきた「環境保全力」に着目し「生活環境主義」を提唱した。それに対しては21世紀のグローバル化する世界を捉えきれない、「農本主義の一国理論」に過ぎないと批判が生まれた。本研究は、国際比較調査を通してこれらの批判を実証的に乗り越え、生活環境主義を鍛え直し21世紀のグローバルな環境社会学の思考枠組として提示することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、研究目的の達成に向けて次の二点を課題としている。第一の課題は、生活環境主義の汎用性(応用力)を高めるという課題である。第二の課題は、共同体の境界を越えて生起する深刻で重大な危機(災害や紛争など、これまで生活環境主義では対処できないと批判されてきた破局的な危機)に対して、「小さな共同体」がいかにそれと向き合い、対処し、その苦難を乗り越えてきたかについて、日本、ネパール、カンボジア、韓国、ウクライナ、ケニアの小さな共同体の集約的調査から明らかにすることである。 2020年度はCOVID-19感染拡大のため海外出張ができず、国内での調査も大きく制限されたため、予定していた研究計画はほとんど進まなかった。制限下でオンラインでのデータ収集なども行ったが、フィールドワークはそれでは全く不十分であった。しかし、オンライン研究会、オンライン調査を頻繁に実施したことで、調査主体が相互転換可能であることの発見など新たな可能性を見いだすことができた。また、主にデスクワークで進めることが可能なこれまでに収集されたデータのデジタル化とその規格化、およびそれらを共有するための運用ツールの開発については主にオンラインでの研究会を通して検討を進めた。しかし、それについても小さな可能性の発見と同時に、不十分さを認識することになり、本研究にとってフィールドに出ることがいかに重要であるかを再認識した一年であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者・分担者は長期にわたって共同研究を行ってきており、研究目的・方法については十分に共有している。 2020年度はCOVID-19感染拡大のため海外出張ができず、国内での調査も大きく制限されたため、予定していた研究計画はほとんど進まなかった。制限下でオンラインでのデータ収集なども行ったが、フィールドワークはそれでは全く不十分であった。また、既存データの共有、検討については主にデスクワークとオンラインでの研究会を行ったがそれもまた十分な成果を得るに至らなかった。そのため2020年度計画の大半は、2021年度計画に繰り入れることとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、生活環境主義のバージョンアップにむけて、代表者らが1980年代に生活環境主義を提唱するきっかけとなった琵琶湖北西岸の「小さな共同体」において、集約的な共同調査を実施し、この共同体の270年におよぶ「村の日記」と関連史料を共通のプラットホームとして設定する。そのうえで、各メンバーがこれまでも調査を続けてきた各エリアでの調査を継続する。 1)日本:水害常習地の東紀州、矢作川地域、琵琶湖湖西地方の知内地区の災害対応知(古川、松田、土屋)。 2)ネパール:大規模地震で深刻な被害を受けたカトマンズ盆地コカナ地区のレジリエンス(古川)。 3)カンボジア:内戦で社会が分断され紐帯が切断されたカンボジア東部バイリン地区の試み(阿部)。 4)韓国:大規模資本によって分断された漁村共同体の抵抗知(伊地知)。 5)ウクライナ:原発事故汚染指定地区からの避難命令を新たに読み直す共同体の知恵(土屋)。 6)ケニア:貧しさから熱帯雨林の伐採を行う村人に対する共同体の支援(制裁ではなく)の思考(松田)。7)1)から6)のローカルな人々の意識や行動、小さな共同体に蓄積された「集合知」をデジタル化し、グローバルな社会問題の改善に資する。収集された質的データをデジタル化するだけでなく、調査データの規格とその運用ツールを整備する(中野)。 こうした「小さな共同体」が、上位の政治権力から受ける制度的政策的指示やグローバルNGOなど外部の組織からの金銭援助や「正義」の介入に対して、どのようにそれを受容変換しながら現実を作り直し、地域の生態環境を保全のために創意工夫を凝らした実践を組織してきたかについて明らかにする。
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