研究課題/領域番号 |
19H01774
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山口 真美 中央大学, 文学部, 教授 (50282257)
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研究分担者 |
河原 純一郎 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30322241)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2019年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | 実験心理学 / 視覚的注意 / 意識 / 初期発達 / 実験系心理学 |
研究開始時の研究の概要 |
人の意識はいつ、どのように形成されるのだろうか?本申請では、成人で確立された視覚的注意パラダイムを乳児用に落とし込んだ実験を行う。すなわち成人で使用されている「視覚的注意」課題を乳児に用いることにより、「意識」の形成過程について行動実験と脳波計による脳計測から検討する。特に、乳児の注意研究で未開拓である「時間的負荷」を扱うことにより、成人と同様の作業記憶がいつ成立するかに焦点を当てる。
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研究実績の概要 |
乳児対象の高次な知覚発達の知見に基づき生後7-8ヶ月前後の注意処理の獲得を調べる実験的検討を行った。特に、乳児の注意研究で未開拓である「時間的負荷」を扱った。乳児を対象とした視覚的注意課題手続きの構築は、分担者の河原教授と行った。緊急事態宣言が発令され乳児実験は断続的に行った。接触の多い脳計測実験も難しく年度終了時に再開した。さらに国際学会参加も難しく国内学会中心にオンラインポスター発表を行った。またProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America に論文が掲載された(Nakashima, Y., Kanazawa, S., Yamaguchi, M. K.Perception of invisible masked objects in early infancy.)。本申請の一つの目標である、抑制機能の発達を解明した研究で生後7ヶ月までに乳児の抑制機能は成人と同じように発達すること、それ以前の乳児は抑制機能が働かないため成人とは異なる世界を知覚していることを明らかにした。さらに、認知系の一般紙Cognitionにも発表した。(Tsurumi, S., Kanazawa, S., Yamaguchi, M. K., & Kawahara, J. Attentional blink in preverbal infants.)。成人を対象としたAttentional blinkを乳児を対象に行った実験で、連続して高速提示した2つのターゲット間の干渉をターゲット間の提示間隔を操作した実験である。実験の結果、生後7-8ヶ月の乳児でも成人と同じ注意の瞬きが生じ、作業記憶が十分発達していないと考えられていた7-8ヶ月児でも作業記憶への書き込みと遅延が生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緊急事態宣言が断続的に発令されたため、乳児実験実施は断続的に推進するしかない状況であった。コロナの状況が落ち着いた夏ころより実験は再開し、緊急事態宣言を避けた実験を行ったが、引き続き接触の少ない実験が中心となった。EEGを使用する実験や、アイトラッカーを使用する実験は、実験参加者との適切な距離を保つことが難しいため、この年の実施は不可能で、年度終了に再開できるめどがつくような状況であった。コロナが収束した時点で、脳計測を駆使した実験やアイトラッカーを使用した実験を再開し研究を推進していきたいと考える。 脳波計(EEG)実験は、成人用と乳児用それぞれ計測できるように機器の調整を行い、乳児向けの実験手続きの確立を目指した準備実験を行ったままである。行動実験については、順次論文を投稿しつつ、さらなる実験を行うことができた。昨年度以前にデータを収集することに成功したAttentional blinkの実験は、認知心理学で権威のる専門誌であるCognitionに、抑制機能の実験は権威のあるProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America に発表することができた。EEGやアイトラッカー等の機器を使用しない、高速提示の時間を検討する実験や、乳児が自発的に選好する顔を題材として用いた実験など、実験のデータ取得が終了した実験が複数あり、論文作成を行っている。特に上下視野の異方性について、顔を対象とした実験を乳児で行う計画をたて、データ収集を行っている。顔と家を比較して実験を来ない、乳児でも顔の上視野優位性を獲得していることが示唆され、データ収集と並行して論文作成を行っているところである。今後も引き続き時間的側面を詳細に検討しつつ、コロナが収束した時点で脳計測を駆使した実験を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況にある通り、コロナ下により国際会議での発表は不可能となり、国内学会でのオンライン発表を行った。実験結果は順次論文としてまとめながら発表準備を行った。緊急事態宣言が断続的に発令されたため、乳児実験も断続的に推進する状況であった。昨年度のコロナの状況が落ち着いた夏ころより実験開始を準備し、緊急事態宣言を避けた実験を行ったが、引き続き乳児との接触の少ない実験が中心となり、EEGを使用する実験やアイトラッカーを使用する実験は実験参加者との適切な距離を保つことが難しいため、この年の実施は不可能であった。年度終わりにようやく実験再開のめどがたったので、本年度実施不可能であった、脳計測を駆使した実験やアイトラッカーを使用した実験を順次再開し、研究を推進していきたい。国際会議での発表は次年度以降に行いたい。 今年度不可能であった脳波計(EEG)の研究は、意識がどのように形成されていくかについて、その解明の一助となる研究成果をあげるために必須であり、成人用と乳児用それぞれの計測を行い、乳児向けの実験手続きの確立を行うことにより、意識の形成過程とその脳内過程を明らかにすることを最終的な目標としたい。アイトラッカーのデータも活用した実験のデータ収集についても、同様に順次再開する。乳児実験がすべて再開されたところで十分なデータが取れるよう、乳児実験の実験協力者のデータベースの確保と、実験計画の洗練、成人を対象とした実験準備などから準備を行う体制を整えている。研究協力者間の連絡も、スカイプなどを活用して行っている。
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