研究課題/領域番号 |
19H01798
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宍倉 光広 京都大学, 理学研究科, 教授 (70192606)
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研究分担者 |
奥山 裕介 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (00334954)
稲生 啓行 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00362434)
石井 豊 九州大学, 数理学研究院, 教授 (20304727)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2019年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 力学系 / 分岐 / くりこみ / カオス / フラクタル / タイヒミュラー空間 |
研究開始時の研究の概要 |
シンプルで決定論的な力学系はしばしば複雑で予測不可能な挙動(カオス)を示す.カオス的力学系ののパラメータを変化させると,一つのタイプの分岐現象(力学系全体の挙動が変化)が別のタイプの分岐を引き起こし,パラメータ空間の中の分岐パラメータの集合は入り組んだ階層的構造(フラクタルなど)をもつ.この階層的構造は、くりこみと呼ばれる概念により説明されることが多い。 本研究では,カオス的挙動をもつ実および複素の低次元力学系に的を絞って,分岐現象(特に大域的な力学系の構造の分岐)を理解することを目指す.そのためには,トポロジー的方法,実解析的方法,複素解析的方法、数論的方法などを援用する.
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研究実績の概要 |
宍倉は、複素力学系の近放物型不動点のくりこみのアプリオリ評価の応用について研究した。この評価により、回転数が高いタイプの無理数的中率不動点をもつ力学系のジュリア集合などの構造の理解が可能になる。特に応用の一つとして、Fei Yangとの共同研究で、2次多項式を含む関数族について、回転数が高いタイプのSiegel円板の境界がJordan閉曲線になることを示した。また、有理関数族の退化極限を樹木上の区分線形写像と結びつけて研究し、それを用いて周期pの超吸引的周期点をもつ2次有理関数の族S_pの穴の特徴付けを行った。また、Berger, Dujardin, Crovisier, Gauthier, 石井らとともに、Lattes写像の摂動から得られる有理関数のの強正規性についての研究を行い、それを組み合わせ的情報で特徴付け、関数族内の強正規性をもつパラメータ集合が正のルベーグ測度をもつことを証明した。 稲生は、双二次多項式族の分岐測度の「穴」の存在証明に関し,Fatou座標のパラメータ依存性を数値的に評価するための枠組みを与えた.Kiwi, Roeschと,臨界点軌道の関係で定義される多項式の1-パラメータ族の特異点とその分岐について解析した. 石井は、東京工業大学の荒井迅氏と共に、複素へノン写像のマンデルブロー集合が非連結になることの証明に向けて研究を進めた。また九州大学のThomas Richards氏とは、2次多項式族における拡張された意味でのモノドロミー問題を適切に定式化し、それを証明した。 奥山は、無限遠点以外に例外点を持たない複素一変数多項式の反復合成の高階導関数の零点集合列に対する 漸近同等分布定理および、有理関数および超越整関数といった有理型関数の(超)吸引または 放物鉢上のそれらの反復合成の一般化プレシュワルツ微分列に対する収束定理を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複素力学系の近放物型不動点のくりこみのアプリオリ評価の応用については、Siegel円板の境界がJordan曲線になることの証明が、J. EMSにアクセプトされ、順調に推移している。有理関数族の退化極限については、Arfeuxの研究に基づき、Berkovich空間上の力学系と結びつけ、それを通して樹木上の区分線形写像により表現することができる。現在はその逆問題として、与えられた樹木上の区分線形写像を実現するような有理関数族の退化族を構成する研究を行っている。広中氏とともに、周期pの超吸引的周期点をもつ2次有理関数の族S_pの穴との対応付けについて研究した。Berger, Dujardin, Crovisier, Gauthier, 石井らとともに、Lattes写像の摂動から得られる有理関数のの強正規性についての研究を行っているが、それをより幅広い枠組みで実現するためには、必要とされる力学系の相空間での臨界点の再帰性が当初の想定より複雑であることがわかり、まずは記号的表現の枠組みを整備する必要が生じた。 稲生の双二次多項式族の分岐測度の「穴」の存在についての研究は順調に推移し、Kiwi, Roeschと,臨界点軌道の関係で定義される多項式の1-パラメータ族の研究も進展しつつある。 石井は、荒井と共に複素へノン写像のマンデルブロー集合が非連結になることを予想し、証明に向けて研究をしている。また、Richardsと共に、Henon写像のパパメータ空間への応用を念頭に2次多項式族における拡張されたモノドロミー問題を研究し成果を得た。 奥山は、値分布論との類似を念頭に有理関数および超越整関数の反復合成の高階導関数や一般化プレシュワルツ微分に関する零点などの分布について研究し、その漸近同等分布に関する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
Lattes写像の摂動などの有理関数族のパラメータ空間内でのカオス的パラメータ集合の測度評価をより普遍的な枠組みで定式化することを目標とする。Berger, Dujardin, Crovisier, Gauthier, 石井らとオンラインミーティングや研究集会での対面でのディスカッションにより、研究を進める。力学系の相空間での臨界点の再帰性は特により広いパラメータ集合をカバーしようとするとその定式化が複雑になることが分かってきた。そこで、まず臨界点の再帰性を記述するためにpuzzle分割を基にした記号的表現を行う。その際、臨界点を含むピースを何度も通る軌道に対する記号表現にあいまいさが残っているので、それを解消することを目標とする。その後に、強正規性を定義し、それに対する各レベルでのピースの個数と写像の拡大性の評価を行い、それを用いて強正規的パラメータ集合の測度の評価を行う。さらにそれがCollet-Eckmann条件などに拡張できるかどうかを研究していく。 有理関数族の退化極限を、ある条件をみたす樹木上の区分線形写像から出発して構成するという逆問題について、KiwiやArfeuxらと共同で研究する。オンラインと可能であれば研究集会等での対面のディスカッションを併用して研究を進める。また広中と共同でこの手法を周期pの超吸引的周期点をもつ2次有理関数の族S_pの穴との対応付けに応用する。一般のpに対するS_pの構造や種数、穴の個数などについての漸近的表示を探していく。 石井は、荒井と共に複素へノン写像のマンデルブロー集合について研究し、その非連結性や、補集合のループの記号表現やモノドロミー問題との関係を調べる。 奥山は数論的力学系に関する等分布問題について研究していく。
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