研究課題/領域番号 |
19H01808
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
押川 正毅 東京大学, 物性研究所, 教授 (50262043)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2020年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 電気分極 / 電気伝導 / 非線形応答 / 量子多体系 / 量子ダイナミクス / テンソルネットワーク / 繰り込み群 / 共形場理論 / ネットワーク / 非線形伝導 / 周波数和則 / Drude重み / Lieb-Schultz-Mattis定理 / 多体分極 / 分極演算子 / 電気伝導度 / 量子異常 / 量子臨界現象 / ゲージ不変性 |
研究開始時の研究の概要 |
電気分極は物性における最も基本的な概念の一つであり、トポロジカル絶縁体などの絶縁体を特徴づける上で重要な役割を果たしてきた。一方、金属などの導体では電子が自由に運動するため電気分極のゆらぎが発散し、電気分極(の平均値)を定義できないと考えられる。しかし、電気分極のゆらぎの強さ、より具体的には電気分極のゆらぎを定量化した分極振幅の有限サイズスケーリングが導体を特徴づけることが、研究代表者らによる最近の予備的な研究によって示された。解析的および数値的研究によって、この分極振幅の有限サイズスケーリングと系の電気伝導特性を結びつけ、量子多体系についての新たな普遍的知見を得る。
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研究実績の概要 |
量子ダイナミクスを研究する上でも、大きな系を扱える信頼性の高い数値計算法の開発は必須である。テンソルネットワークに基づく手法は、近年大きく発展を遂げ多くの応用がなされている。しかし、実際の計算においては必ず、ボンド次元が有限であることによる制約がつきまとう。テンソルネットワーク繰り込み群においては、形式的には無限系に対応する繰り込み群の「固定点」を議論できるが、ここにも有限ボンド次元にともなう制約ないし系統誤差が存在するはずである。 我々は、テンソルネットワーク繰り込み群を有限系に適用し、得られた転送行列のスペクトルを共形場理論と比較することにより、臨界点の同定や、固定点に対する摂動の有効的な大きさを見積もる手法を開発した。これを2次元古典XY模型に適用することにより、小さな計算資源でBerezinskii-Kosterlitz-Thouless(BKT)転移点を極めて高精度で決定することに成功した。BKT転移は対数補正を伴うため、通常の方法により転移点を正確に決定するのは困難だが、1次元量子系に対して開発されたレベルスペクトロスコピー法とテンソルネットワーク繰り込み群を組み合わせることで極めて高精度の決定が可能になった。さらに、繰り込み群のフローを数値的に構成することにも成功した。 また、非線形応答の実験的検出の一つの方法として、3次の光学応答の2次元コヒーレント分光法による分数化励起の検出を提案した。1次元S=1/2XXZ模型の素励起は、スピンが分数化した「スピノン」であることが知られている。通常の線形応答によるプローブではスピノンは連続スペクトルとしてあらわれ、同定が困難であるが、非線形応答には分数化したスピノンの「再収束」が反映され、これにより鋭い信号としてスピノンを検出することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テンソルネットワーク繰り込み群と共形場理論の組み合わせにより、一般的で非常に高精度な計算法の確立に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
テンソルネットワーク繰り込み群における有限ボンド次元の効果を系統的に解析する。
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