研究課題/領域番号 |
19H01976
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安成 哲平 北海道大学, 北極域研究センター, 准教授 (70506782)
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研究分担者 |
松見 豊 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 名誉教授 (30209605)
内藤 大輔 京都大学, 農学研究科, 助教 (30616016)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2019年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 森林火災 / PM2.5 / 機械学習 / シベリア / 大気汚染 / ロシア / 極東 / 地域研究 / 北極 |
研究開始時の研究の概要 |
シベリア域及び周辺域の極東域における森林火災とそれに伴う大気汚染(PM2.5)の時空間変動を小型PM2.5センサーの複数設置により現地観測から初めて明らかにする.また,衛星と現地観測を組み合わせた高精度のPM2.5時空間変動解析データの取得や,環境・気候データに機械学習を適応して現地観測によるPM2.5変動の予測を初めて試みる.更には,現地の地域住民に対して,本研究による解析・観測データなどを利用して,現地住民の火災とPM2.5に対する意識や理解度調査を行い,森林火災とその大気汚染情報に関するリテラシーの向上まで目的とした日本・ロシア・アメリカ参画による文理融合学際的研究プロジェクトである.
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研究実績の概要 |
新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックにより、昨年度予定していたロシアでの現地観測・現地調査が延期になっており、コロナの状況を見て、これらの現地での研究を進める予定で準備を進めた(機器輸送準備など)。現地調査においては、コロナ禍の継続により渡航ができず、オンラインによる研究打ち合わせ、情報交換を継続し、ハバロフスクでの森林火災研究に関する出版にむけた英文校閲を実施した。しかしながら、コロナの状況悪化でさらなる遅延が見込まれる状況となったことに加えて、突如2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵攻により、コロナの状況の如何に関わらず、ロシアへの輸送がストップし、ロシアでの現地観測・現地調査が不可能な状況となった。
そこで、データ解析などで可能な研究を引き続き進めつつ、現地観測はシベリアの森林火災の代わりに北極圏森林火災(カナダに注目)のPM2.5影響評価を行えるであろう、かつ人々が居住する場所としてグリーンランド・カナックでPM2.5観測を2022年夏季に行った。グリーンランド現地観測の際に、飛行機のキャンセルが複数回相次ぎ、研究代表者の安成はカナックまで行くことはできなかったが、現地で一緒になった日本人大学院生の協力を得て、数週間のPM2.5の観測を行うことに成功した。初期的解析の結果、森林火災の影響以上に観測期間中に現地の屋外ゴミ焼却による大気汚染問題があることがわかった。粒子状物質PM2.5とCO、NO2、オゾンのガス状物質のセンサを組み合わせた小型でローコストな複合大気計測装置を開発を引き続き行い、札幌などの国内で実際の大気を長期に計測して、環境省大気汚染物質広域監視システム「そらまめ」などのデータと比較することにより、その精度の検証を行った。PM2.5測定装置は、シベリア森林火災の越境大気汚染を評価できるように、北陸以北(長岡、弘前、函館)に設置し、定常観測を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
継続している新型コロナウィルスの世界的パンデミックでのロシアでの現地観測と調査が延期になっている中で、ロシアによるウクライナ侵攻が起こり、ロシア現地での研究が不可能な状況となった。その結果、ロシア以外で観測機器設置の場所を急遽再考する必要が出てきた。ただし、データ解析やモデリングなどで引き続きシベリア極東域の森林火災の研究は続けられるため、現地観測・調査以外の手法で進められる研究は進められている状況であった。このようなコロナ蔓延状況やウクライナ侵攻の問題があったにもかかわらず、寒冷地用の小型計測器(PM2.5測定装置)の開発に成功しており、さらには急遽観測場所を変更したグリーンランド・カナックでのPM2.5測定を行い、北極圏の寒冷地での粒子状物質の計測の実証に成功し、論文化につながる現地カナックの大気汚染の新たな重要な知見まで得ることができた。機器開発においては、実際の大気を開発した大気計測器で測定して、大型の装置の計測結果と比較した。その結果、かなり精度よく大気質をこのPM2.5測定装置で測定できることを明らかにした。現地調査においては、ロシア現地へ渡航困難となったものの、これまで得た情報をもとに論文執筆作業を続けた。また、ロシアには行けなくなったが、シベリア森林火災の越境大気汚染の影響を評価できるように、その影響をより受けると考えられる日本の北陸以北(長岡、弘前、函館)に開発した寒冷地仕様のPM2.5測定装置を設置展開し、定常観測を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアによるウクライナ侵攻で、ロシアでの現地観測・調査が完全に不可能な状況となったため、PM2.5の現地観測は、カナダの森林火災の影響が評価できる場所を代替場所として、グリーンランド・カナックに変更を行った。その現地ローカルでの、屋外ゴミ焼却による新たな大気汚染問題があることがわかったため、カナダからの森林火災影響と現地ローカルの大気汚染の変動解明を行うことにした。これは、人間圏への影響評価という当初の課題目標とも合致する。また、カナックで得られた初期的観測結果の論文化を目指す。次年度(当初最終年度の繰越年度)、再度カナックでより詳細な大気汚染測定を行う。また、シベリア森林火災の予測やPM2.5の予測のための機械学習予測手法の開発も行う。既に解析を行った気候モデルの結果を論文として投稿するなどして、研究を進める。機器開発と計測に関しては、開発したPM2.5測定装置を、これまで大型装置の設置不可能な場所も含めて日本の北陸以北でさらに設置展開し、より広域の森林火災などの越境大気汚染による大気質影響の議論が行えるようにする。また、ハバロフスクでの森林火災研究に関する研究の出版に向けて作業を進める。
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