研究課題/領域番号 |
19H02468
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
木村 勇次 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究センター, 主席研究員 (80253483)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2020年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2019年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
|
キーワード | 構造・機能材料 / 材料加工・処理 / 鉄鋼材料 / 水素脆化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、引張強さが1800~2000MPa級の超高強度鋼およびボルトなどの超高強度部品の社会実装に向けての最重要課題である耐遅れ破壊特性を担保するための基盤研究を行う。 超微細繊維状結晶粒組織の制御によって「部材の一部が破壊・破損しても所定の荷重以下であれば部材そのものは完全に破断しない」というフェールセーフ機能を有する鋼(フェールセーフ鋼)の遅れ破壊挙動を水素侵入挙動と関連付けて調査し、実使用環境での遅れ破壊機構を解明する。その結果、超高強度部材の遅れ破壊を克服するための指針を得る。
|
研究実績の概要 |
本研究では、「部材の一部が破壊・破損しても所定の荷重以下であれば部材そのものは完全に破断しない」というフェールセーフ機能を有する鋼(フェールセーフ(FS)鋼)の遅れ破壊挙動の解明を目的とする。 今年度は、0.4%C-2%Si-1%Cr-1%Mo鋼材を用いて量産試作した1800 MPa級FS材および調質材のボルト型環状切欠試験片の締付け体について、昨年度末からつくば市の物質・材料研究機構内の暴露場で開始した大気暴露実験を2023年2月まで継続した。これら試験体の遅れ破壊挙動を観察するとともに、定期的に試験体を回収し、遅れ破壊と水素侵入挙動の関係を調査した。また、ラボで、同ボルト型環状切欠試験片の締付け体の浸漬実験も実施した。定期的に回収した試験体と浸漬実験した試験体については、引張試験を実施して試験体の損傷状態を調査した。これらすべての試験体は水素の侵入経路の調査のために、細かく分割して、その分割部位ごとで水素量を測定した。その結果、遅れ破壊には水素侵入が要因であるものの、ラボでの水素チャージ法による水素脆化試験法で想定される許容水素量(平均水素量)よりも少ない水素量で遅れ破壊が発生することが確認された。すなわち、これは、切欠部表層部から応力集中部に局所的に侵入する水素が遅れ破壊を引き起こすことを示唆するものであった。 さらに2020年3月から日本ウェザリングテストセンター宮古島試験場で開始した2000 MPa級FSボルト締付け体の大気暴露実験については、2021年6月にボルト1本の遅れ破壊が確認された後は破断が確認されておらず、継続中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の計画当初では、つくば市の物質・材料機構内のマイルドな大気腐食環境下では遅れ破壊が生じにくいと想定していたことから、厳しい腐食環境下である日本ウェザリングテストセンター宮古島試験場での大気暴露実験を主に想定していた。ところがボルト型環状切欠試験片の締付け条件を厳しくすることで、物質・材料機構内での大気暴露実験開始から約1年間の短期間で遅れ破壊挙動を包括的に観察できたのは予想以上の成果であった。とくに、機構内での試験体の早期回収によって、より正確な侵入水素量と遅れ破壊発生に関するデータを収集できた。本研究課題の前半は、コロナ禍にボルト型環状切欠試験片の宮古島試験場での大気暴露実験が実施できず、研究計画は遅れ気味であったが、今回の物質・材料機構内での大気暴露実験の成功により遅れを取り戻すことができた。したがって、本研究計画は概ね進行していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
ボルト型環状切欠試験片を用いた試験体について、物質・材料研究機構内での大気暴露実験を再度実施して、遅れ破壊挙動の再現性を確認する。同時に、切欠き部表面からの水素侵入を抑制した試験体を用いた大気暴露実験も実施して遅れ破壊挙動を調査し、水素侵入経路を明確にする。遅れ破壊した試験体の破面観察や水素量を評価する。以上により、遅れ破壊挙動を考察し、研究成果をまとめる。
|