研究課題/領域番号 |
19H02531
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 幸治 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (20444101)
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研究分担者 |
川野 竜司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90401702)
岩槻 健 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50332375)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2019年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 匂いセンサー / 嗅覚 / 生体機能利用 / 電気化学 / 味覚 / 嗅粘液 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、嗅覚などの化学感覚が物質を感じる仕組みとその関連遺伝子は、ほとんどが明らかにされている。しかしそれらを培養細胞で再構成してもいまだ、イヌの鼻のような優れた分子認識機能を実現するには至っていない。本研究では主に嗅覚器を対象に、細胞外物質と化学感覚器の相互作用の観点から、嗅覚の超感受性を実現する分子機構の解明を目指す。さらに微細加工技術との技術統合により、化学感覚を模倣して生体の高機能性を再現した化学センサーの応用展開を試みる。
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研究実績の概要 |
2021年度ではまず、哺乳類の嗅覚受容体の匂い応答をリアルタイム計測するための、応答可視化技術の開発を行った。哺乳類嗅覚受容体の匂い応答はcAMPを測定することで定量化できるがその測定には通常、細胞の可溶化が必要でありこれまで、cAMPを匂い応答の指標としてリアルタイム計測することはできていなかった。このことは哺乳類嗅覚受容体を用いた匂いセンサー開発の大きな妨げとなっていた。本年度では、cAMPセンサーを遺伝子に組み込んだ培養細胞を作製した。この細胞に哺乳類嗅覚受容体を発現させ匂い刺激を行い、cAMP濃度変化を蛍光顕微鏡を用いてリアルタイム計測した。その結果、匂い刺激に応じた蛍光変化を計測でき、世界で初めて、cAMPを指標として嗅覚受容体の匂い応答を測定することに成功した。 次にこの細胞を用い、機能解析の進んだ嗅覚受容体を発現、応答測定することで、開発した計測法の妥当性を検討した。その結果、本手法ではELISA法を用いた匂い応答測定法よりも感度良く、匂い応答を計測できることがわかった。特に従来の計測法で必要となる長時間の匂い暴露は必要とせず、生体とほぼ同様な、秒単位での匂い刺激でも応答測定が可能となり、匂いセンサーが要求する匂い濃度に対する追従性を備えていた。さらに様々な嗅覚受容体を発現させ応答解析を実施した結果、本細胞が多様な嗅覚受容体の、様々な匂い物質に対する応答を測定することに有用であることがわかった。 このように様々な匂い物質を細胞実験で応答解析する環境が整ったため、多様な匂い物質に対する電気化学計測法の確立を引き続き実施した。その結果、これまで解析していた細胞外物質による酸化電流の増大効果がより表れやすい、新規化合物を見出した。 さらに2020年度で検討した、哺乳類生体上皮のモデル細胞における粘液陽性細胞について、平面培養で大量に培養細胞を得ることに成功した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度では前年度同様、感染症拡大に伴う様々な研究資材の確保が困難な状況であった。特に物質精製に必要な各種高分子フィルターや、大規模応答測定に用いるマルチウェルプレートの確保が困難となり遅延が生じた。また引き続き本研究課題の着目点である細胞外物質の入手が滞り、予定した細胞外物質の精製および機能解析に遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題ではこれまで、昆虫嗅覚受容体を中心に匂いセンサー開発に関わる基盤技術開発に取り組んできたが、2021年度からの研究推進方策として、哺乳類の嗅覚受容体を利用する新規の匂い応答測定法の開発に積極的に取り組むこととした。哺乳類嗅覚受容体は昆虫嗅覚受容体と異なってこれまで、匂い応答をリアルタイム計測する技術が開発されていなかったため、匂いセンサーとして利用することが大変困難とされていた。しかし2021年度の研究実施によりこの課題が一気に解決され、哺乳類嗅覚受容体を用いた匂いセンサー開発が大きく開けることとなった。 哺乳類嗅覚受容体を用いた匂いセンサーには、社会生活や疾病の早期診断に関わる匂い物質に対するセンサーを開発しやすくなることや、イヌの鼻のような超高感度センサー開発につながる大きな利点がある。そこで今後の研究では引き続き、哺乳類嗅覚受容体とそれに対する匂い物質を中心に、技術開発、電気化学計測などを進めてゆく。また作製した細胞では、ヒトの嗅覚受容体も解析可能である。COVIDは感染や症状に嗅覚が大きく関わっているため、今後の研究では匂いセンサー開発だけでなく、ヒトにおける嗅覚と疾病、QOLなども考慮した包括的な研究に取り組んでゆく。 電気化学計測では新規に見出した化合物を指標に、細胞外物質との相互作用の解析を実施する。 粘液陽性細胞においても、ヒトを視野に入れた培養技術開発も実施し、匂いセンサーだけでなく粘液の関わる様々な分野を視野に入れた研究開発を実施する。
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