研究課題/領域番号 |
19H02555
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田川 美穂 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (40512330)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2020年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2019年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | DNA / ナノ粒子 / コロイド結晶成長 / X線小角散乱 / 自己組織化 / 自己集合 / Self-assembly / 結晶成長 / 機能性ナノ材料 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では下記課題1-3に取り組み、DNA-NP超格子の単結晶成長法の確立とサイズ向上を目指す。 課題1:核生成頻度を下げるため、一旦作製したDNA-NP超格子結晶を種結晶として再度結晶化溶液に入れ、成長させる 課題2:結晶を吊り下げて成長させる 課題3:ポリエチレングリコール(PEG)による枯渇引力を利用した結晶成長 成長させるDNA-NP超格子結晶としては、二元系(互いに相補的なDNAペア)で粒子サイズが同じ場合にできるbcc構造、二元系で粒子サイズが異なる場合にできるCsCl構造、一元系(自己相補的なDNAペア)のfcc構造に取り組む。更に、DNA-NP超格子結晶のX線単結晶解析に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究は、DNA修飾ナノ粒子(DNA-NP)の結晶化を結晶成長学的に追求し、DNAの選択的結合性と自己集合の性質を利用したコロイド結晶化における高品質単結晶成長法を確立することを目的としている。具体的には、核生成頻度や過飽和度制御により、理想的な結晶成長条件を探っている。本年度の成果は下記の通りである: [1]ナノ粒子の粒径やDNAの鎖長を変化させることにより、様々な粒子体積率のDNA-NP結晶を作製し、それらの結晶性をX線小角散乱(SAXS)により解析した。結晶性の指標としては、結晶の歪を表す歪因子(gファクター)というパラメータで評価した。(gファクターの値が小さいほど、結晶性が良いことを表している。)水和状態及び脱水収縮後のDNA-NP結晶に対し、粒子体積率に対するgファクターの変化を明らかにしたことで、乾燥収縮時に結晶対称性が維持される条件を見出すことができた。また、水和状態から乾燥状態へ変化する時に、gファクターが殆ど変化しないDNA-NP結晶の粒子体積率条件があることを発見した。本成果により、これまで水和状態でしか結晶構造を保持できないと考えられていたDNA-NP結晶を、乾燥状態でも結晶性が保持できる条件があることがわかったため、応用が広がると期待できる。更に、10nm以下のナノ粒子を用いた系において、乾燥収縮によりナノ粒子間を4nm以下まで収縮させることに成功したため、ナノ粒子超格子の量子的な性質を利用した応用も拓ける。 [2]結晶化の際の溶媒の組成を工夫することにより、結晶の沈降を抑制し、従来法に比べ大きな結晶を作製することに成功した。また、沈降を抑制することで、結晶サイズの向上だけでなく、結晶性も向上することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
covid-19蔓延により他機関での実験中止、世界的なプラスチック不足及びDNA実験関連の消耗品等の欠品により、実験方法を余儀なくされた部分はあるが、様々な工夫により当初の目標以上に成果をあげることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も、COVID-19流行による自粛等の影響により学外大型実験施設・学内共通施設の利用が制限されることも想定した研究実施計画を立てる。
今年度も、DNA-NP結晶のデザイン最適化に加え、結晶化溶液組成を最適化することにより、DNA-NP結晶の核生成頻度の抑制と沈降抑制に取り組む。これにより、サイズの大きく高品質な結晶を得て、物性研究を加速させることを目的とする。また、X線小角散乱(SAXS)による結晶構造解析法の改良と、歪因子の解析をすることで、歪因子が小さい(結晶の歪が小さい)高品質結晶成長も目指す。結晶の歪が小さければ、より理想的な結晶成長を実現することができ、結果的に結晶サイズも大きくなると考えられる。数十マイクロメートルを越える結晶が作製できれば、SAXSと回転結晶法を組み合わせた単結晶構造解析により、単独の単結晶の回折パターンを取得することも可能になると考えられるため、今年度はこれに挑戦する。単独の結晶の内部構造を解析することで、より理想的な結晶成長条件を見出すことができると考えている。 SAXS実験はSPring-8を利用しているが、Covid-19流行により利用できない場合を想定し、超解像顕微鏡(学内共通施設)による結晶形状観察も行う。超解像顕微鏡で単結晶の大きさを測定し、結晶成長条件の最適化を行う予定である。SPring-8も学内共通施設も利用できなくなった際には、結晶成長シミュレーションにより、最適化条件の検討を行う。
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