研究課題/領域番号 |
19H02736
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
張 浩徹 中央大学, 理工学部, 教授 (60335198)
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研究分担者 |
中田 明伸 中央大学, 理工学部, 助教 (20845531)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2019年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 水素 / 金属錯体 / 光駆動型ハイドライド / 励起状態水素脱離 / フェニレンジアミン / ハイドライド / 光反応 / 電気化学 / 光駆動 / 混合原子価 / プロトン共役電子移動 / レドックス活性配位子 / 光ハイドライド / 多座配位子 |
研究開始時の研究の概要 |
「水素(H2)」は永く人類を魅了して来たが、近年は特に燃料にも電気にも変換しうる二次エネルギーキャリア(EC)としてその社会実装が期待されている。しかし、既存のメチルシクロヘキサン(MCH)/トルエンに代表される有機ハイドライドにおいては、水素の吸脱着に貴金属触媒と“高温という本質的コスト”を必要とするジレンマを補完しうる、「革新的な水素の効率的貯蔵と放出技術」が求められている。 本研究では、申請者らが見出した非貴金属とH+及びe-を貯蔵できるπ系ジアミン配位子を含む錯体分子を用いた光駆動型水素吸蔵・放出システムの学理を確立し、室温で光により駆動する光駆動型ハイドライドの精密設計を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究では、申請者らが見出した非貴金属とH+及びe-を貯蔵できるπ系ジアミン配位子を含む錯体分子(Metal-binding π-diamine (MπA))を用いた光駆動型水素吸蔵・放出システムの学理を確立し、室温で光により駆動する光駆動型ハイドライドの確立を目指している。これまでの研究により本光駆動型ハイドライドの実現に向けた鍵反応である溶液中での励起状態水素脱離(ESHD)に基づいた光水素分子発生やアルコールの脱水素、また二酸化炭素の固定化や効率的な光ジスルフィド反応等の独創的な成果を見いだしてきた。一方これまでの反応系は溶液系であるために、溶媒との反応や副反応の抑制に課題を残している。さらに、水素重量密度を向上させる観点からも本材料の固体化が望まれる。そこで昨年度は、光水素貯蔵材料の固体化を目的とし、1,2,4,5-Benzenetetramine (BTA)を水素貯蔵部位及びESHD活性部位として用いた配位高分子において興味深い光電気化学挙動を見いだした。既報を参考に(Ni-BTA)nを修飾したITO電極は、モデル錯体であるNi(s-bqdi)2錯体と類似した890 nmに極大を有する吸収帯およびNH振動に特徴的なIR吸収を3300 cm-1に示した。また、この修飾電極は固体状態において配位子ベースの酸化及び還元に由来する電気化学応答を固体状態で示し、電気化学的に活性な物質であることが確認された。更に興味深い事に、-1 Vの定電位印加下において可視光を照射したところ、光カソード電流が増大し照射のON/OFFによりその応答が変調することも確認した。以上の結果は、電気化学的に電極上に形成した還元型高分子が光化学的に水素種・電子を放出することを期待させる。以上の知見は、高分子化した光水素脱離活性ユニットからの光水素脱離の可能性を示す興味深い結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、申請者らが見出した非貴金属とH+及びe-を貯蔵できるπ系ジアミン配位子を含むMπAを用いた光駆動型水素吸蔵・放出システムの学理を確立し、室温で光により駆動する光駆動型ハイドライドの精密設計を確立することを目指している。これまでの研究の成果により当初より計画した1)水素ラジカルの選択的反応場の構築の観点から光水素分子発生やアルコールの脱水素、また二酸化炭素の固定化や効率的な光ジスルフィド反応等の独創的な反応場の構築に成功してきた。これらは一般にその発生と制御が困難とされてきた水素ラジカルの光発生が駆動する全く新しい反応系である。またこの過程に二つ目の課題として挙げていた2)光脱水素化プロセスの解明と制御に関してもt-BuSHを水素ラジカルトラップ試薬としてESHDプロセスの発生を実証していることは特筆に値し、これは固体材料の研究においても有用な知見と考える。最後に、当研究が目指す3)効率的水素化プロセスの開発に関しては、昨年度から開始した固体材料化において想定外の光電気化学応答が見いだされたこと、また対象となる配位子及び金属に多様化及び最適化のチャンスを大いに期待できることから申請課題は概ね順調に進んでいると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでの成果を基盤に光駆動型ハイドライドの固体化、及びその最適化を中心課題に据え研究を遂行する。具体的には、分子内にキレート可能な二つ以上のNH2基を有する芳香族配位子(例:1,2,4,5-benzenetetramine (BTAH4)やhexaaminobenzene)を架橋配位子とした配位高分子をターゲットし、1,2,3次元高分子骨格を持つ既知及び新規錯体の合成法を確立する。これらの多座ポリアミン系配位子においては最大3分子の水素分子を配位子内に貯蔵でき、且つ高分子化により不溶化することが期待される。本研究では、平面四配位型コアを形成するNi,Pd,Pt系金属並びに、六配位八面体型コアの形成により、3次元構造を構築しうるアルカリ、アルカリ土類、3d金属とポリアミンの複合化を進める。また錯体の薄膜化や電極への修飾により光電気化学的に水素分子の貯蔵放出が可能となる新規材料の構築を目指す。更には、昨年度見いだした光電気化学応答の駆動機構を解明すべく、モデル単核錯体との物性、構造比較及び光照射により発生する化学種の同定及びその発生効率の最適化因子の探索を遂行する。これらの研究により、固体状態で光照射により駆動する光駆動型ハイドライドの学理と技術を確立することを目的とする。
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