研究課題
基盤研究(B)
ストリゴラクトン(SL)は、根寄生雑草の種子発芽刺激活性を指標にして植物の根分泌物から単離されてきた、一連の構造類縁体の総称である。様々な植物で枝分かれ過剰の表現型を示す変異体が解析され、原因物質としてSLが想定され、合成SL類縁体であるGR24がそれら変異体の表現型を回復したことから、SLは枝分かれ抑制活性を有すると考えられている。しかし、植物体内で機能している化合物は明らかになっていない。本研究は、SLの骨格形成の鍵となるBC環形成反応を司る酵素に関する知見を活用して、植物を形質転換することによりSL生合成を制御し、個体の形態とSLプロファイルの関係を調べる。
ストリゴラクトン(SL)のBC環形成反応に関わる酵素としてササゲ、トマト、ワタからCYP722Cを同定した。CYP722Cをノックアウトしたトマト個体(SlCYP722C ko)の根滲出物ではorobancholが検出されず、代わってカ―ラクトン酸(CLA)の蓄積が確認された。また、地上部の形態に顕著な変化は認められなかった。このことから、枝分かれ抑制活性にBC環は必須ではなく、活性本体はCLAから派生すると考えられた。SlCYP722C koに認められた、既知のSLとは異なる、ストライガ種子発芽活性を有する画分をさらに精製することで、枝分かれ抑制ホルモンの構造に迫ることが期待される。
ストリゴラクトンは、植物地上部の枝分かれを制御する活性を有するとともに、根圏情報物質としても知られている。本研究により、ストリゴラクトン生合成に関わる重要な酵素を見出し、それをノックアウトすることでトマトの形態は変化させることなく、根寄生雑草の種子発芽に対する根分泌物の刺激活性を低下させることに成功した。この成果は、新規な生合成酵素を分子レベルで解明し、生成物が枝分かれ抑制活性に必須ではないことを示した点で学術的意義がある。さらに、地球規模で農業に甚大な被害をもたらしている根寄生雑草の害を軽減する新規の方策を示したという点で社会的な意義も大きい。
すべて 2022 2021 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Planta
巻: 254 号: 5 ページ: 88-88
10.1007/s00425-021-03738-6
Tetrahedron Letters
巻: 85 ページ: 153469-153469
10.1016/j.tetlet.2021.153469
巻: 251 号: 5 ページ: 97-97
10.1007/s00425-020-03390-6
Science Advances
巻: 5 号: 12 ページ: 9067-9067
10.1126/sciadv.aax9067
120006778287
https://www.edu.kobe-u.ac.jp/ans-phytochem/lab2022/labtop2022
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2019_12_19_01.html