研究課題/領域番号 |
19H02918
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
伊藤 菊一 岩手大学, 農学部, 教授 (50232434)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2019年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 発熱植物 / ザゼンソウ / 体温調節 / 温度センシング / 細胞呼吸 / メタボローム解析 / RNA-seq解析 |
研究開始時の研究の概要 |
一般に植物の体温は外気温の変動とともに変化すると考えられている。しかしながら、寒冷環境で積極的に発熱し、その体温をほぼ一定に調節できるザゼンソウは植物界では希な恒温植物である。このような発熱植物ザゼンソウを対象とした本研究は、「植物はどうやって体温を調節しているのか?」 という生物学上の大きな問題を解き明かそうとするものである。
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研究実績の概要 |
ザゼンソウは早春の寒冷環境で発熱し、外気温の変動にも関わらずその熱産生器官である肉穂花序と呼ばれる花器の温度を23°C程度に維持できる恒温性を有している。本年度の研究においてはザゼンソウの肉穂花序温度を人為的に変化させたサンプルを対象に、RNA-seqによる転写産物の網羅的な解析を行った。その結果、温度低下時の発熱組織において顕著に発現が増大する遺伝子としてホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼキナーゼ(PEPC kinase)を見出した。PEPC kinaseはホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)をリン酸化し、活性化させることが知られている酵素である。PEPCはミトコンドリアにおけるTCA回路に基質を供給する主要な酵素であり、PEPCのリン酸化による活性調節は本植物の呼吸制御に密接に関わることが予想された。そこで、PEPC kinaseをコードする遺伝子の転写産物の詳細な発現をqRT-PCRにより解析したところ、当該転写産物が発熱組織特異的に発現していることが判明した。さらに、ザゼンソウPEPC kinaseを組換えタンパク質として大腸菌で発現させ、ほぼ単一バンドとして精製することに成功した。一方、PEPC kinaseの基質であるPEPCについては、ザゼンソウ発熱組織抽出物から単一バンドまで精製し、nano LC-MS/MS解析により得られたタンパク質がPEPCのペプチド断片を含むことを確認した。さらに、精製により得られたPEPC標品を基質にPEPC kinaseを用いた試験管内リン酸化反応を行った結果、反応時間に応じたPEPCのリン酸化が観察され、精製したPEPC kinaseがリン酸化活性を有していることが判明した。また、発熱期のザゼンソウ肉穂花序から得られた抽出液に存在するPEPCのリン酸化の状態を解析したところ、その一部がリン酸化されていることを示す結果が得られた。これらの結果は、ザゼンソウ肉穂花序における恒温性メカニズムにPEPCのリン酸化が関与している可能性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、温度変化に鋭敏に反応する遺伝子群が見出され、特に本年度は解糖経路に関わる酵素が温度センシングモデュールの一端を担っている可能性が提示された。この知見は、ザゼンソウの発熱を支える呼吸反応が炭水化物を基質に行われていることとも合致するものである。研究は概ね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるR5年度においては、これまでに得られたトランスクリプトームとメタボロームを組み合わせた解析結果を原著論文として投稿・発表することが重要であると考えている。得られた成果の取りまとめを中心とした研究を推進して行きたい。研究自体の大きな計画変更はない。
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