研究課題/領域番号 |
19H03003
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
早坂 大亮 近畿大学, 農学部, 准教授 (20583420)
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研究分担者 |
川西 基博 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50551082)
奈良 一秀 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60270899)
澤畠 拓夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (80709006)
橋本 洸哉 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, JSPS特別研究員 (90832436)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2019年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 火山噴火 / 生態遷移 / 群集動態 / 生物間相互作用 / 攪乱生態学 / 火山撹乱 / 菌根菌 / 節足動物 / 植生遷移 / 島嶼生態系 / 生態リスク評価 / 撹乱生態学 / クロマツ / 火山攪乱 / 島嶼 |
研究開始時の研究の概要 |
鹿児島県口永良部島で2015年に発生した噴火による火砕流跡地では、直後から一次遷移の一般的な先駆植物とされる地衣類や草本類ではなく、クロマツを主体とした「樹木」が広域に侵入していた。これは一次遷移の一般理論では説明できない現象である。申請者らはこの謎の鍵が「地上と地下の生物群、特に菌根菌を介した生態ネットワークの強さ・つながり」にあると考えた。そこで本研究では、1)噴火跡地に成立しつつある植生、2)風及び動物により散布・運搬される種子、3)実生の根の生育を促進し定着を支える菌根菌の3つのアプローチから、火山噴火後の生態系再構築の決定メカニズムを解明し、「植生遷移区分の規定要因の再定義」に迫る。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、植物-動物―菌根菌の群集動態をモニタリングした。なお、コロナ禍で現地調査が進まなかったため、一部、代替調査を実施した。 1)植生:火山砕屑物上の植生は、2019-2021年の間で大きな変化はなかった。この理由のひとつに、噴火跡地では噴火後も継続的に土壌攪乱(土砂堆積、浸食)が発生し、植生回復が妨げられている可能性が示唆された。表層堆積物を採取して埋土種子の発芽試験を開始した。 2)菌根菌:コロナ禍で現地調査が進まず、代替措置として伊豆大島の火山遷移地で菌根菌調査を実施した。裸地に侵入するオオバヤシャブシの実生では、ハンノキ属に特異的な菌根菌(アルポバ属)が優占しており、攪乱跡地に侵入する樹木の定着に特異的な外生菌根菌種が貢献している可能性が示唆された。 3)種子・菌根菌散布者:噴火跡地とその周辺で土壌動物調査を行った。前年度と同様、火砕流跡地では土壌動物があまり認められず、これら未成熟土壌は土壌動物の生息環境としては不適、または侵入できても定着できにくい場である可能性が示唆された。他方、林縁付近では森林から供給されたリターの堆積が始まり、少ないながら土壌動物の定着が観察された。これは、土壌表層にリターが存在しなくなると、土壌動物の定着は困難になる可能性を示唆している。2015年噴火時には、早い段階から土壌動物の侵入・定着が確認されており(Iida et al. 2021 Ecol Evol)、火砕流で枯死した樹木からのリター供給に起因したと考えられる。 4)群集解析等:植生履歴と火山攪乱のタイプの双方が節足動物の群集組成に影響を与え、その効果は火砕流よりも火山泥流で顕在化しやすい傾向にあることが明らかとなった(Iida et al. 2021)。つまり、地上部と地下部を結ぶ機能を果たす地上徘徊性動物の攪乱応答について、植生履歴の観点から理解できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に続き、新型コロナウイルスの猛威が継続していることにともなう所属機関の研究・行動制限措置、ならびに調査地(口永良部島)の島外からの入島制限等により、調査・出張自体がままならず、当初計画を達成できたとは言い難い。以上より、季節性をともなうデータの欠損につながり、進捗は遅れていると判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスに対する行動規制が緩和されつつあるため、季節性データを含む植生、種子・菌根菌散布者(主に土壌動物)群集の動態や地形測量にかかる調査を進める。並行して、菌根菌群集の同定や特徴づけ作業も進める。これらデータを統合して、地上部―地下部生物群集の相互作用解析を進める。なお、事態が急変し(コロナ等の再拡大や再度の噴火等)、調査の制限等(出張許可、入島制限など)が生じる可能性も否定できない。その場合は、引き続き代替の調査地等で類似のデータを取得するほか、既存の火山研究データを用いて、噴火撹乱の島嶼生態系への影響に関する共通性や相違性の洗い出しを行うといった対応をとる。
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