研究課題/領域番号 |
19H03113
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
昆 泰寛 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10178402)
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研究分担者 |
市居 修 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (60547769)
中村 鉄平 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (80786773)
エレワ ヤセル 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (30782221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2019年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | リンパ陰部輪 / 膣前庭 / 生殖器関連リンパ組織(GOALT) / 粘膜関連リンパ組織 / ウシ / 生殖器関連リンパ組織 / 膣前提 / GOALT / ブタ / 陰部 / 腟前庭 / 粘膜ワクチン / ヤギ / 尿生殖器 / リンパ組織 / 免疫 / 獣医学 / 生殖器 |
研究開始時の研究の概要 |
鼻咽頭、腸管、気管などの外界と接する部位には粘膜関連リンパ組織が存在し、病原体を含む異物に対し粘膜免疫を活性化させ、さらに全身の免疫反応制御に深く関わっている。我々は、ウシ外陰部・膣前庭粘膜領域をリング状に取り囲むリンパ組織を発見した。これを「ワルダイエルのリンパ咽頭輪」に因み「リンパ陰部輪」と呼ぶ。形態・分布、各種免疫細胞の特徴、被蓋上皮の性格、動物種差を明らかにし、リンパ咽頭輪との違い・類似性を明らかにする。また、加齢・妊娠・病態に伴う変化を観察する。最後にリンパ陰部輪への異物投与が、全身の免疫活性化に与える影響を明らかにし、粘膜ワクチン投与部位としての有効性を証明する。
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研究実績の概要 |
鼻咽頭、腸管、気管などの外界と接する部位には粘膜関連リンパ組織が存在し、病原体を含む異物に対し粘膜免疫を活性化させ、さらに全身の免疫反応制御に深く関わっている。昨年度までに、ウシの解析を中心とし、小動物(マウス、コットンラット)や中大動物(ヤギ、ミニブタ、イヌ)の生殖器を形態学的に解析し、ウシと同様、中大動物の腟前庭にリンパ球の散在性あるいは濾胞性集簇が認められることを明らかにし、「生殖器関連リンパ組織(GOALT)」と定義した。 2021年度はウシのモデルとしてヤギを用い、腟前庭にみられるGOALTの構造を中心に精査した。2022年度は、動物種差を理解するために、反芻獣とブタのGOALTを比較した。健康かつ非妊娠時成体のヤギとブタの膣前庭に焦点を当て、肉眼解剖学的および組織学的特徴を精査した。両動物の膣前庭は重層扁平上皮に覆われ、ホールマウント標本では様々な大きさのスポット状ヘマトキシリン陽性領域が観察され、粘膜表面全体に散在していた。これらのスポット領域は組織学的にリンパ組織であり、リンパ小節または散在性リンパ組織dで構成されていた。これらリンパ組織には、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、形質細胞、高内皮細静脈が観察された。ブタのGOALTでは、B細胞の組織学的定量値がヤギと比較して有意に高かった。さらに、GOALTを覆う膣前庭粘膜上皮表面には部分的欠損が認められ、多数のリンパ球と結合組織線維が管腔面に露出していた。これらの動物における膣前庭のGOALTは、ウシと同様、リンパ咽頭輪と形態学的類似性を示し、生殖器における免疫ゲートを担うと考えられた。また、GOALTが直接腟前庭の管腔内と交通する構造は各動物種間に共通する特徴であり、産業動物の感染症発生機序の解明や粘膜ワクチン接種部位の探索において興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本研究内容を学術論文として公表した。研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ウシ、ヤギ、ブタ等の生殖器関連リンパ組織を引き続き形態学的に解析する。また、海外との共同研究を実施し、日本とモンゴルの産業動物(ウシ、ウマ)におけるGOALTの形態機能学的差異を解析する。ニワトリに膣は無いが、総排泄腔やその付近(直腸、生殖器)に存在するリンパ組織を解析し、哺乳類GOALTと比較する。 具体的には下記項目を検討する。 ① 腟前庭の生殖器関連リンパ組織を構成する細胞:生殖器関連リンパ組織内のリンパ球や抗原提示細胞とそのサブタイプを明らかにする。手法として、細胞マーカーをターゲットとした免疫染色ならびに遺伝子発現解析を行う。特に、T細胞、B細胞、マクロファージや抗原提示細胞の局在を明らかにする。2022年度はIgA陽性細胞の局在解析も行った。これまで作製した組織切片を用い、画像解析ソフトによって3D構築も進める。 ② 腟前庭の生殖器関連リンパ組織の抗原取り込み機構:生殖器関連リンパ組織を将来のワクチン投与部位として用いる場合、当該部位における抗原取り込み機構の解明は重要となる。ウシあるいはヤギの腟前庭部に模倣抗原(蛍光標識蛋白、ビーズ、色素等)を投与し、採材後その模倣抗原の局在を解析する。特に組織学的解析では、抗原取り込みやその受け渡しに重要な細胞(M細胞、樹状細胞、マクロファージ)の局在も模倣抗原と同時に可視化する。昨年までの解析では、M細胞の同定には至っていない。ウシやヤギのM細胞マーカーを複数検討し、その局在解析を試みる。 ③ 腟前庭の生殖器関連リンパ組織と連絡する周囲リンパ節:②のように模倣抗原を投与後、周囲のリンパ節(特に、浅鼠径リンパ節、深鼠径リンパ節、内側腸骨リンパ節、仙骨リンパ節および腸骨下リンパ節)におけるその局在を経時間的に解析する。模倣抗原の種類(径、材質)あるいはアジュバンドの添加も視野に入れ、2023年度も引き続き検討を重ねる。
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