研究課題
基盤研究(B)
長鎖ノンコーディングRNAであるXistによる染色体レベルでの転写抑制を理解するため、まずXistとSHARPとの複合体の立体構造を解析し、遺伝子量補正における鍵となる分子間相互作用の構造基盤を確立する。多次元NMR、SAXS(X線小角散乱)、X線結晶構造解析を用いて解析を行う。またリボプロテオミクス(免疫沈降と質量分析)による細胞内での結合部位の解析、他の因子との関連の解析を並行して行う。
lncRNAであるXistは、遺伝子量補正において、染色体レベルでのグローバルな転写抑制を行う。この転写抑制の仕組みを理解するため、鍵となる分子間相互作用の構造基盤の確立を目指した。特にXistとSHARPとの複合体の立体構造の解析にフォーカスし、多次元NMR、X線結晶構造解析、生化学的解析、リボプロテオミクスといった多面的な手法を用いて解析を行った。安定同位体標識タンパク質を調製し、RRM23部分の良好なNMRスペクトルを取得し信号の帰属を完了した。またXistのNMR測定では、 RNA-repeat間のダイナミクスにより信号が消失する等の困難さが生じたが、部分同位体標識しにより解決した。
遺伝子量補償は染色体全体まるごとの不活化というスケールの大きな発現抑制であり、それを担う複合体は、多くの因子を含み、転写抑制マシナリー全体の分子レベル、構造レベルでの理解が必要である。またxist遺伝子の他の染色体への移植によってトリソミー等の染色体異常による過剰な発現を抑制できることが、細胞レベルの研究では明らかになっており、Xistのもつ染色体全体を不活化する機能を、タンパク質との複合体形成に基づいた分子(構造)レベルまで落とし込んで理解することは、将来の医学的な展開を視野にいれた基礎研究としても、意義深い。本研究はその第1歩となる研究である。
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