研究課題/領域番号 |
19H03241
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉田 啓亮 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40632310)
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研究分担者 |
増田 建 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00242305)
川合 真紀 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10332595)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2020年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2019年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 植物生理科学 / 植物生化学 / 光合成 / レドックス / 葉緑体 / 植物生理学 / チオレドキシン / レドックス制御 |
研究開始時の研究の概要 |
移動能力を欠く植物が、絶えず変動する光環境で効率良く光合成を行うためには、光合成の場である葉緑体の機能を柔軟かつ精密に調節する必要がある。本申請課題では、酸化還元を基盤としたタンパク質の機能制御である“レドックス制御”に注目する。近年、葉緑体のレドックス制御は、多くのタンパク質(制御因子群と標的群)が関わるネットワーク状システムとして再認識されている。そこで、それらが形成しているシステム全体の分子基盤や生理意義を解明することが、次の重要な課題となる。本研究では、分子生物学・生化学から植物生理学までを貫徹する基礎研究を行い、葉緑体機能を統御するレドックス制御システムを包括的に理解する。
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研究実績の概要 |
移動能力を欠く植物が、絶えず変動する光環境で効率よく光合成を行うためには、光合成の場である葉緑体の機能を柔軟かつ精密に制御する必要がある。本研究では、酸化還元を基盤としたタンパク質の翻訳後制御であるレドックス制御に注目する。近年、葉緑体のレドックス制御系は、多くのタンパク質(制御因子群と標的群)が関わるネットワーク上システムとして再認識されており、そのシステム全体の分子基盤や生理意義の解明が重要な課題となっている。本研究課題では、分子生物学・生化学から生理生態学までを貫徹する基礎研究を行い、葉緑体機能を統御するレドックス制御系を包括的に理解する。 当該年度は、レドックス制御系の主要経路と考えられているフェレドキシン/チオレドキシン経路の生理機能の解析を重点的に実施した。前年度に、この経路の中心的ハブとして働くFTRの完全破壊株をCRISPR/Cas9によって作出していたので、この変異株を本年度の実験に用いた。タンパク質の酸化還元応答を調べたところ、野生株においては葉緑体ストロマ局在のタンパク質群が光に依存してダイナミックな還元応答を示した一方、FTR変異株においてはまったくそれが観測されなかった。FTR変異株では、著しい生育阻害、光合成速度の減少、葉緑体の形態異常が見られた。これらの結果から、フェレドキシン/チオレドキシンは光照射に応じてストロマタンパク質を活性化させるために必要な唯一の経路であり、光合成に決定的な役割を果たしていることが明らかになった。また本研究では、ATP合成酵素の還元・活性化に関わる未知の還元力伝達経路の存在が示唆された(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、レドックス制御系におけるフェレドキシン/チオレドキシン経路の重要性を実証することができた。国内外で論争が続くレドックス制御系の実体と作用機序に関して確実性が高い見解を提示するものであり、光合成制御メカニズムの理解にも大きく貢献するものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
レドックス制御系の全体像を明らかにするための研究を継続する。本年度の研究から存在が示唆されたATP合成酵素を選択的に還元・活性化するための還元力伝達経路について、その分子の同定を試みる。具体的には、ATP合成酵素が存在するチラコイド膜に焦点を当て、レドックス感受性タンパク質のプロテオミクスベースのスクリーニングを行う。チオレドキシンモチーフを持つタンパク質など、還元力伝達因子の候補が同定できた場合、in vitroでの生化学解析による還元力伝達活性の検証する。また、変異株を用いた解析によって、in vivoでの作用機序の解明を目指す。
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