研究課題/領域番号 |
19H03280
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
稲垣 祐司 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (50387958)
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研究分担者 |
平川 泰久 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40647319)
中野 賢太郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50302815)
石谷 佳之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 特任研究員 (60772043)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2019年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | ミトコンドリア / オルガネラDNA複製 / 真核生物大系統 / DNAポリメラーゼ / 細胞内共生 / DNA複製 / 真核生物系統 / オルガネラ進化 / 有孔虫 / ユーグレノゾア / DNAポリメラーゼI |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリア(mt)の細菌起源を鑑みると、そのゲノムはかつて細菌型DNA polにより複製されていたはずである。一部の真核系統ではミトコンドリアDNA pol(mtDNA pol)が同定されているが、既知のmtDNA polは細菌型DNA polとは異なる。従って、真核生物が多様化する過程で細菌型DNA polから進化的に異なるDNA polへの変換がおこったことを示唆するが、その詳細は未解明である。本研究では(1)多様な真核系統におけるmtDNA pol候補の探索と(2)その細胞内局在の確認を行い、真核生物の多様化に伴うmtDNA pol多様化と進化の全容解明を目指す。
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研究実績の概要 |
昨年度までに、ツクバモナス類Tsukubamonas globosa、アンキロモナス類Fabomonas sp.、マラウィモナス類Gefionella okellyiとその近縁系統において新奇ミトコンドリア局在DNAポリメラーゼ候補(これまでheMPと呼称)を発見した。さらにツクバモナスおよびマラウィモナスのheMPのN末端アミノ酸配列を緑色蛍光タンパク質(GFP)と融合させ、酵母細胞内で発現させた。その結果酵母細胞内でGFP蛍光がミトコンドリアに局在することが確認された。2021年度には、同様の実験を、マラウィモナス類とディスコバ類に含まれる2種のheMPに対して行った。アピコンプレクサ類とその近縁系統であるクロモポデリッズ類に特異的DNAポリメラーゼであるapiPolAについては、引き続きサルマラリア原虫細胞をもちいたGFPタンパク質発現ベクターの作成を行った(稲垣)。 稲垣はチェコ共和国オストラバ大学・Marek Elias博士と共同で、系統的に広範な真核生物を対象にミトコンドリアあるいは葉緑体局在と考えられるDNAポリメラーゼの探索を行った。その結果、これまで報告されていないDNAポリメラーゼをクロララクニオン藻、クリプト藻、ユーグレナ類から発見した。これらの新奇DNAポリメラーゼ配列は、互いに明らかな近縁性はなく、進化的に独立に獲得されたと考えられる。 平川(分担)と稲垣は、新たにクロララクニオン藻類で発見された新奇DNAポリメラーゼについて、その細胞内局在をクロララクニオン藻細胞内で確認するためのGFPタンパク質発現ベクターを作成した。また稲垣はクリプト藻特異的な新奇DNAポリメラーゼの細胞内局在を推測するため、GFPタンパク質を珪藻内で発現させるための発現ベクターを作成した。 石谷(分担)は有孔虫ミトコンドリアゲノムにおけるDNAポリメラーゼをふくむDNA複製関連タンパク質の探索を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵母細胞内でアンキロモナス類、マラウィモナス類、ディスコバ類に含まれる真核微生物3種のheMPのN末端アミノ酸配列とGFPの融合タンパク質を発現させたところ、そのGFP融合タンパク質が一貫してミトコンドリアに局在した。従ってheMPがミトコンドリア局在DNAポリメラーゼである可能性をさらに強く示唆することになった。また、ミトコンドリアあるいは葉緑体に局在する可能性がある、互いに異なる5種類のDNAポリメラーゼを発見することができた。そのうちクロララクニオン藻特異的DNAポリメラーゼとクリプト藻特異的DNAポリメラーゼについては、それぞれクロララクニオン藻細胞と珪藻細胞内で細胞内局在実験を行う準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度には、クロララクニオン藻類で発見された新奇DNAポリメラーゼとクリプト藻特異的DNAポリメラーゼの細胞内局在を、クロララクニオン藻とクリプト藻細胞内でGFPタンパク質を発現させることで実験的に検証する。クリプト藻類ではこれまでに2種類のDNAポリメラーゼ(POP1およびPOP2)が発見されており、これらのDNAポリメラーゼの細胞内の局在も実験的に検証されていない。そこでクリプト藻特異的新奇DNAポリメラーゼに加え、POP1、POP2の局在も実験的に確認する。また、アピコンプレクサ類・クロモポデリッズ類特異的DNAポリメラーゼapiPolAの細胞内局在を検証する実験については、GFPタンパク質をサルマラリア原虫細胞中で発現させる。 上記の細胞内局在実験と並行して、heMPをふくめ本研究で新たに発見されたDNAポリメラーゼの進化的起源を推測するため、広範な細菌とファージのDNAポリメラーゼとともに分子系統解析を行う。
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