研究課題/領域番号 |
19H03300
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
市野 隆雄 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (20176291)
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研究分担者 |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 教授 (60282315)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2019年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 標高種分化 / 草本植物 / 生態型 / 送粉昆虫 / 遺伝分化 / MIG-seq解析 / 適応進化 / 生物間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは最近、山地性植物サラシナショウマにおいて、標高上下間で遺伝的分化が起こっており、遺伝的に異なる3つの生態型の間で花形質や送粉者が異なっていることを見いだした。本研究ではこの知見をふまえ、広い標高域にまたがって分布する約50種の植物種について、まず標高上下間での遺伝的分化の有無を確認し、さらに分化の維持メカニズムを追究する。本研究によって、標高上下間での遺伝的な分化が広く示されれば、従来よりも細かい保全単位で山地性植物を保全すべきであるといった政策の見直しに発展させることが可能となり、また標高上下での側所的な種分化が明らかになれば「標高種分化」の初めての実証例となる。
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研究実績の概要 |
キツリフネについては、標高上下間で早咲き・遅咲き型の二型が分化している長野県飛騨山脈東麓で研究を行った。まず、葉形態、種子形態、茎上での花の位置などの形質が、二型間で異なっていることを明らかにした。次に、中間標高では早咲き型、遅咲き型の個体が同所的に存在していること、しかしその一方で、中間的な形質をもつ個体は見られないこと、をそれぞれ明らかにした。これらの事実は、何らかの生殖的隔離機構が二型間で働いていることを示している。 さらに、キツリフネの早咲き・遅咲きの二型分化がより広域でも確認されるか、また、二型間で中立遺伝子レベルの分化があるかを確かめるため、長野県4山域37地点のキツリフネについて、開花時期の確認を行うとともに、MIG-seq法による遺伝解析を行った。その結果、開花時期は早い地点と遅い地点があること、そして、遺伝構造は開花時期ごとではなく山域ごとにまとまること、がそれぞれ明らかになった。 最後に、キツリフネの開花時期の遺伝性を検証するため、早咲き型個体と遅咲き型個体を、元々の生育場所から他方の型の生育している場所へ移植する実験を行った。その結果、開花時期は生育場所に関わらず維持されることが判明した。また、二型間の交雑については、人工授粉によるF1個体の作成が可能であること、F1個体の開花時期は二型の中間であることを、それぞれ明らかにした。 ウツボグサについては、生態情報(花サイズや訪花者など)と、MIG-seqによる集団遺伝構造との対応を調べたところ、長野県の集団は他地域のものから遺伝的に区別され、花サイズが大きく、マルハナバチによる訪花が主であることが明らかになった。これは中部山岳域において優占するマルハナバチに適応した集団が、他地域の低標高域で小型のハナバチによる訪花に頼る小型の花の集団から、形態的、遺伝的に区別されることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キツリフネについては、飛騨山脈東麓で発見された早咲き・遅咲き型の形質二型について、二型間の葉形態、種子形態、茎上での花の位置などの形質分化などについて国際誌に発表した。次に、長野県全体で行ったキツリフネのMIG-seq法による遺伝解析の結果を国際誌へ投稿中である。 ウツボグサについては、MIG-seqによる全国レベルでの地理系統解析の結果を投稿中である。また、遺伝解析を行ったウツボグサ集団のうち、花サイズや訪花者の情報が欠けているものについて、集中的に調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
キツリフネについては、MIG-seqによる全国レベルでの地理系統解析の結果については投稿中であるが、狭域での遺伝構造と生態情報(開花期、分布標高、葉形態など)の対応関係については未解明である。2021年度に飛騨山脈東麓の標高約800m~1300mの9地点でMIG-seq法による遺伝解析を行った。その結果として、標高上下で二分する遺伝構造が明らかになったが、解析を行った各個体の生態情報が欠如しているため、形質二型と遺伝構造の相関関係は未だ不明である。 そこで、2023年度はキツリフネの形質二型と遺伝構造の相関関係を明らかにすべく、遺伝解析と同地点での生態観察をおこなう。また、各地点の生育環境(生物的および非生物的)の違いにも着目し、形質二型が山域内の環境勾配に対してどのように局所適応しているかを検証する。 ウツボグサについては、MIG-seqによる遺伝解析の結果と生態情報(花サイズや訪花者など)を統合した解析を行い、成果の公表を目指す。
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