研究課題/領域番号 |
19H03310
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
加藤 真悟 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 上級研究員 (40554548)
|
研究分担者 |
鈴木 庸平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00359168)
伊藤 隆 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別嘱託研究員 (80321727)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2019年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
|
キーワード | 鉄酸化菌 / 鉄バクテリア / 生物地球化学循環 / バイオミネラル / メタゲノム / 鉄還元菌 / 分離培養 / ナノ鉱物 / 鉄酸化微生物 / 鉄還元微生物 / バイオミネラリゼーション / 微生物ダークマター / 微生物 |
研究開始時の研究の概要 |
微生物による鉄の酸化還元及び酸化鉄ナノ鉱物の生成溶解、それに伴う様々な元素の吸着溶脱は、地球規模での物質循環や生態系の成り立ちを理解する上で、鍵となる反応である。本研究では、「多種多様な未培養微生物が、酸化鉄ナノ鉱物の生成と溶解を駆動し、地球表層環境における様々な元素の挙動・循環を支配している」という作業仮説を立て、分離培養を基軸として、最先端の分子生物学および鉱物学的手法を駆使して、その検証を行う。本研究は、地球規模での元素循環を理解する上でのパラダイムシフトとなる可能性を秘めている。
|
研究実績の概要 |
本研究では、「多種多様な未培養微生物が酸化鉄ナノ鉱物の生成・溶解を駆動し、地球表層環境における様々な元素の挙動・循環を支配している」という作業仮説の検証を通じて、それらの未培養微生物を分離培養により同定し、地球表層環境における「酸化鉄ナノ鉱物の生成・溶解プロセスの実態」と「微生物-酸化鉄ナノ鉱物-多元素の相互作用」を解明することを目的とした。本研究によって得られる成果は、自然界の元素循環に対する新たな視点を提示するものであり、さらには資源枯渇や環境汚染問題解決へ向けた応用バイオ技術の飛躍的な発展に貢献する可能性を秘めている。 2022年度は、本計画で得た中性pH付近で単独で鉄酸化および鉄還元によって増殖できる’Rhodoferax lithotrophicus’ MIZ03株について、詳細な性状実験を行い、新種記載論文として投稿準備中である。また、本計画で分離培養した酸化鉄ナノ鉱物を還元する分離株 MIZ13株およびMIZ14株について、全ゲノム決定および系統解析、さらには形態・性状解析を実施し、新種記載論文として投稿準備中である。新たなモデル地として選定した国内温泉地の堆積物試料を対象としたPacBioロングリードメタゲノム解析の成果をまとめ、新規の鉄酸化菌および鉄還元菌の存在を示唆し、同成果は誌上発表した(オープンアクセス)。さらに新たに鉄含有温泉地より、鉄還元菌SRK01株を分離することに成功し、同株の性状・ゲノム解析を進めた。SRK01株はMIZ14株同様に既知の鉄還元遺伝子を保有しておらず、新規の鉄還元メカニズムの存在が示唆された。同温泉地の試料のメタゲノム解析も進め、種レベル以上で新規の鉄酸化・鉄還元菌の存在を示唆した。以上、上記の仮説検証に必要な知見を着実に積み重ねている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画で得た中性pH付近で単独で鉄酸化および鉄還元によって増殖できる’Rhodoferax lithotrophicus’ MIZ03株について詳細な性状実験を行い、さらには近縁種もJCMから取り寄せて比較解析を行い、新種記載に十分なデータを得ることができたため、現在成果をまとめて論文投稿準備中である。また、本計画で分離培養した酸化鉄ナノ鉱物を還元する分離株 MIZ13株およびMIZ14株についても、全ゲノム決定および系統解析、さらには形態・性状解析を実施し、新種記載論文として投稿準備中である。新たなモデル地として選定した国内温泉地の堆積物試料を対象としたPacBioロングリードメタゲノム解析の成果においては、誌上発表(オープンアクセス)にまでこぎつけた。さらに今年度より、新たに国内の鉄含有温泉から試料採取し、新種レベル以上で新規の鉄還元菌SRK01株およびSR-01株を分離することに成功した。同株の性状・ゲノム解析を進めた結果、両株は既知の鉄還元遺伝子を保有しておらず、新規の鉄還元メカニズムの存在が示唆された。同温泉地の試料のメタゲノム解析も進め、新種から新属レベルで新規の鉄酸化・鉄還元菌と推測されるバクテリア・アーキアのゲノムを26個再構築することに成功した。以上より、研究計画は順調に進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度が最終年度となるため、得られた成果をまとめ、誌上発表を目指す。新種記載が可能な株については、JCMおよび他国のカルチャーコレクションに寄託し、新種発表に向けて準備を進める。鉄酸化菌株については、細胞外に産出される構造体の形態の電子顕微鏡観察、および化学組成分析を行う。鉄還元菌株については、還元作用による鉄鉱物の形態・組成変化を明らかにする。特に、培養に伴う酸化鉄ナノ鉱物の多元素吸着・溶脱反応に着目して化学分析を行う。新規の鉄還元メカニズムが示唆される3株(MIZ14株、SRK01株、SR-01株)においては、トランスクリプトーム解析により、鉄還元候補遺伝子を絞り込むことで、同遺伝子を標的にしてこれまで得られたメタゲノムデータから新規鉄還元菌の存在を探る。各分離株の性状に加えて、得られた環境メタゲノムデータの解析を進め、同環境中での鉄サイクルへの微生物の寄与を議論し、本研究における作業仮説「多種多様な未培養微生物が酸化鉄ナノ鉱物の生成・溶解を駆動し、地球表層環境における様々な元素の挙動・循環を支配している」の検証を行うと同時に、得られた成果の論文化を目指す。
|