研究課題
基盤研究(B)
ヒトらしさをつかさどるヒト特異的脳細胞はあるのか?この問いにヒトと類人猿の死後脳を用いたシングルセル比較トランスクリプトーム解析により解明することを目的とする.本研究課題では,ヒトをヒトたらしめている大きな特徴である脳の進化を「ヒトとは何か」という問いに迫る切り口とし,ヒトと類人猿の死後脳を用いたシングルセル脳トランスクリプトーム解析を行う.本研究を通して,ゲノムという設計図が脳という場においてどのように時空間的に制御され,種の特殊性となって現れるのか,シングルセルレベルで解明する.同時に,ヒト脳の特異性を担保するヒト特異的脳細胞を同定し,「ヒトとは何か」という問いを明らかにすることを目指す.
ヒトらしさをつかさどるヒト特異的脳細胞の存在を検証するために,ヒトと類人猿の死後脳を用いたシングルセル比較トランスクリプトーム解析を行った.ヒト2検体,チンパンジー1個体,ゴリラ1個体の前頭前野を用いて,それぞれの死後脳から約5000から9000細胞核からの遺伝子発現データを取得した.その結果,合計で28種類の細胞タイプを同定した.その中には,先行研究においてヒト特異的な細胞タイプとして報告された抑制性神経細胞が3種で共通して存在することも明らかになった.解析サンプル数,解析細胞核数が十分でないものの,細胞タイプの構成比が3種の間で異なる可能性を示唆した.
ヒトをヒトたらしめる分子基盤の解明に次世代シーケンサーを代表としたゲノム研究は大きな成果をあげてきたが,残された大きな課題のひとつは,真にヒトらしさをつかさどるヒト特異的脳細胞が存在するかという点にある.本研究では,ヒトとヒトに最も近縁な類人猿の死後脳を用いて1細胞レベルの遺伝子発現解析を行うことで,真にヒト固有の脳細胞が存在するかを明らかにする点において,ヒトの進化,特に脳の進化に寄与した質的な違いがヒトと類人猿の間にあるかどうかを検証する点において学術的意義に加えて社会的な意義も非常に高いと考えられる.
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