研究課題
基盤研究(B)
申請者は、抗原取組み細胞である「M細胞」の分化を誘導できる天然物由来の中鎖脂肪酸を発見した。さらに、申請者はM細胞表面に発現するレセプターに親和性のあるTGDKと呼ばれるM細胞デリバリー分子を開発し、最近このTGDKそのものがアジュバント活性を有することも明らかにした。そこで、本申請では10-HDAAによる「M細胞」の分化誘導に関与するシグナル伝達機構を精査すると共に、実際にM細胞からTGDK標識された抗原を効率的に取込ませ、リンパ濾胞の樹状細胞(DC)に抗原を供給することを意図的に制御することにより、抗原特異的なIgAの産生を向上させる技術の開発につなげることを目的とする。
本研究により働き蜂下咽頭腺より産生される10-HDAAによって、粘膜面に存在する抗原取組み細胞である「M細胞」の分化を誘導できるということを発見した。これは、これまでにない第3のM細胞分化メカニズムを示しており、実際に抗原特異的なIgAの産生を向上させることが、in vivoで証明でき、新規粘膜ワクチン技術の開発に寄与できたと考えている。また、M細胞標的分子TGDKを結合させたワクチン抗原をマウスに経鼻投与させて、実際に粘膜における抗原特異的IgAの産生が上昇していることが証明できたことから、より低容量の抗原曝露で十分な粘膜免疫を誘導できるプラットフォームを構築できると考えている。
学術的意義としては、長年M細胞分化モデルとして用いてこられたCaco-2細胞とRaji-B細胞の共培養モデルのM細胞分化メカニズムを明らかにした。その上で、10-HDAAによる腸管上皮細胞の処理はRANKの発現を上昇させるために、M細胞誘導が促されることが明らかとなった。社会的意義としては、今般の新型コロナウイルス感染症のように経気道感染する場合に、本研究で開発された技術を用いて、粘膜において病原体特異的な免疫応答を誘導させることができれば、より効率的に病原体を体内に侵入させることを阻止できるワクチンの提供に繋がる。
すべて 2020
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Biological & Pharmaceutical Bulletin
巻: 43 号: 8 ページ: 1202-1209
10.1248/bpb.b20-00101
130007883833