研究課題
基盤研究(B)
申請者は、抗原取組み細胞である「M細胞」の分化を誘導できる天然物由来の中鎖脂肪酸を発見した。さらに、申請者はM細胞表面に発現するレセプターに親和性のあるTGDKと呼ばれるM細胞デリバリー分子を開発し、最近このTGDKそのものがアジュバント活性を有することも明らかにした。そこで、本申請では10-HDAAによる「M細胞」の分化誘導に関与するシグナル伝達機構を精査すると共に、実際にM細胞からTGDK標識された抗原を効率的に取込ませ、リンパ濾胞の樹状細胞(DC)に抗原を供給することを意図的に制御することにより、抗原特異的なIgAの産生を向上させる技術の開発につなげることを目的とする。
本申請では10-HDAAによる「M細胞」の分化誘導に関与するシグナル伝達機構を精査すると共に、実際にM細胞からTGDK標識された抗原を効率的に取込ませ、リンパ濾胞の樹状細胞に抗原を効率的に供給することにより、抗原特異的なIgAの産生を向上させる新規粘膜ワクチン技術の開発を目的としている。M細胞分化は通常、1)腸内環境の通常監視応答と、2)腸管緊急免疫応答の両方によって絶妙に制御されていると考えられている。通常監視応答のために、M細胞はRANKL-RANK-TRAF6-NF-kB経路を介して、約3日の時間を経て幹細胞から分化し供給されている。M細胞誘導細胞に発現したRANKLが、幹細胞由来の細胞に発現したRANKと相互作用し、その細胞をM細胞へ分化する。一方、緊急免疫応答のために、病原性細菌が腸管に侵入すると90分程度でM細胞分化が進行することも知られている。ネズミチフス菌によって分泌されたIII型エフェクタータンパク質SopBが、Wnt/β-カテニンシグナル経路を活性化する結果、幹細胞由来の細胞においてRANKLとRANKの両方が発現誘導され、その結果M細胞分化が急速に進行すると報告された。これらの結果は、恒常性と病原体媒介性のM細胞分化との間に明らかな相違があることを意味する。申請者は、本研究で働き蜂下咽頭腺より産生される10-HDAAによって、粘膜面に存在する抗原取組み細胞である「M細胞」の分化を誘導できるということを発見した(US11089805 (特許取得済); Biol Pharm Bull. (2020) 43(8): 1202-1209.)。これは、これまでにない第3のM細胞分化メカニズムを示しており、実際に抗原特異的なIgAの産生を向上させることが、in vivo証明でき、新規粘膜ワクチン技術の開発に寄与できたと考えている。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020
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Biol. Pharm. Bull.
巻: 43 号: 8 ページ: 1202-1202
10.1248/bpb.b20-00101
130007883833